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過年度遡及会計基準における減価償却方法の変更の取扱い

税理士 井上幹康
過年度遡及会計基準における減価償却方法の変更の取扱い

2009年に公表された過年度遡及会計基準(正式名称「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」)導入により、減価償却方法の変更の会計上の取扱いが明確にされています。そこで今回は、過年度遡及会計基準における減価償却方法の変更の考え方とその取扱いについて解説していきます。

固定資産の減価償却方法とは

まず、減価償却方法の変更の取扱いの解説の前に、そもそも企業会計上、減価償却方法として具体的にどんなものがあるのかについて解説します。

固定資産の減価償却方法としては、企業会計原則注解に以下の通り4つの方法が規定されています。

(1)定額法
固定資産の耐用期間中、毎期均等額の減価償却費を計上する方法
(2)定率法
固定資産の耐用期間中、毎期期首未償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法
(3)級数法
固定資産の耐用期間中、毎期一定の額を算術級数的に逓減した減価償却費を計上する方法
(4)生産高比例法
固定資産の耐用期間中、毎期当該資産による生産又は用役の提供の度合いに比例した減価償却費を計上する方法

この方法は、当該固定資産の総利用可能量が物理的に確定でき、かつ、減価が主として固定資産の利用に比例して発生するもの、例えば、鉱業用設備、航空機、自動車等について適用することが認められる。

実務上は、鉱業等を営む法人でなければ、多くの企業が税務上の減価償却方法とあわせて資産区分に応じて定額法、又は、定率法を適用しています。私自身の経験上では級数法を適用している企業は見たことがありません。

なお、固定資産の減価償却方法は、重要な会計方針の1つですので、企業としては各資産の区分ごとに選択した減価償却方法について財務諸表に注記することが求められています。

過年度遡及会計基準における減価償却方法の変更の考え方とその取扱い

上記で解説したように、固定資産の減価償却方法は重要な会計方針の1つですので、減価償却方法の変更とはすなわち、会計方針の変更にあたるのではないかと考えられます。

過年度遡及会計基準では、会計方針の変更については、まず変更にあたって正当な理由(※)が必要であるとしたうえで、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することとされています。
(※)正当な理由について、過年度遡及会計基準では以下の2つのパターンが示されています。

(1)会計基準等の改正に伴う会計方針の変更
(2)(1)以外の正当な理由による会計方針の変更(正当な理由に基づき自発的に会計方針の変更を行うことをいう。)

なお、余談ですが、私自身の経験上、(1)による減価償却方法の変更があるくらいで、よほどの理由がない限り(2)による減価償却方法の変更は行われないイメージです。

以上より、減価償却方法の変更は会計方針の変更にあたり、上記のような正当な理由がある場合にはその変更が認められ、変更後の新たな減価償却方法を過去の期間のすべてに遡及適用することになるのかというと、実はそうではありません。

過年度遡及会計基準における減価償却方法の変更の考え方とその取扱い

減価償却方法の変更は、会計方針の変更ではあるものの、過年度遡及会計基準では、その変更の場面においては、固定資産に関する経済的便益の消費パターンに関する見積りの変更を伴うものと考え、減価償却方法の変更は、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合に該当するものとして、会計上の見積りの変更と同様に過去の期間への遡及適用は求めないこととしています。

したがって、減価償却方法の変更の影響は、当期以降の将来にわたって反映されることとなります。

なお、国際的な会計基準においても、減価償却方法の変更は、会計上の見積りの変更と同様に取扱うこととされており、遡及適用の対象にはなっていません。

また、実際に減価償却方法を変更した場合には、以下のような注記が必要とされています(過年度遡及会計基準11項、18項、19項)。

会計方針の変更に必要な注記(会計基準等の改正に伴う会計方針の変更以外の場合に必要となります。)

会計方針の変更の内容
会計方針の変更を行った正当な理由

会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合に必要な注記
会計上の見積りの変更が、当期に影響を及ぼす場合は当期への影響額。当期への影響がない場合でも将来の期間に影響を及ぼす可能性があり、かつ、その影響額を合理的に見積ることができるときには、当該影響額。ただし、将来への影響額を合理的に見積ることが困難な場合には、その旨

まとめ

過年度遡及会計基準における減価償却方法の変更の考え方とその取扱いについて解説しましたが、まだ実際に減価償却方法の変更をした場合の具体的な会計処理や注記イメージがわかないという方もいるかと思います。

この点、減価償却方法の変更の注記イメージに関しては、会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針|企業会計基準委員会の設例4に具体例(定額法→定率法)が掲載されていますので、気になる方は是非確認してみてください。

この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:コラム・学び

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