社内のどこのデスクで仕事が可能になるフリーアドレス。働く場所(アドレス)を自由(フリー)にする施策として、組織活性化のために取り入れる企業が続々と増えています。しかし、やみくもにフリーアドレスにすることで、かえって仕事の効率を妨げてしまいます。今回はフリーアドレスの失敗事例について解説します。
フリーアドレスのメリットともいえる「コミュニケーションの活発化」ですが、これは人によって善し悪しがあります。
例えば、固定席の場合、部署が移動して隣の席になった人同士は、これから少なくない期間、隣合って過ごすわけですから、それなりに関係構築を図ろうとしますが、フリーアドレスの場合は、今日は隣同士でも明日はわかりません。
このような状況の場合、仕事の内容にもよりますが、積極的に毎日違う人と隣り合って交流を深めようとするかというと、その人がよほど社交的な性格でない限りはしないのではないでしょうか。
また、相性の良くない人同士が隣になってしまうことで、生産性を下げてしまうという負の効果も生じてしまいます。
結果的に、活発化したのは一部の人のみで、逆に社内交流の溝が深まるということになりかねません。
■注意点■
パイロット運用をおこなってみて、導入した方が良いかどうかを判断してみましょう。
フリーアドレスは、決まったデスクを持たずに、どこで働いても良い仕組みです。しかし、今までの仕事のやり方のままで、座席を完全自由化のみを先行して進めると、メールやチャットを打つまでもない、ちょっと聞きたいことを確認するだけでも一苦労です。
誰がどこにいるかわからなくなり、結局はオフィスを歩き回って探すことに・・・
メールやチャットでの確認も、口頭でなら数秒で済むことを全て文書化する手間も、確認して返信を打つ手間もありますのでかえって非効率になります。
仕事の工程をそのままにしたままフリーアドレスにしてしまったことで、効率性が奪われてしまいました。
■注意点■
いきなり完全フリーアドレスにするのではなく、部署ごとやフロアごとでおこない、問題点をくみ上げるべし
部署によっては、フリーアドレス移行しない方が良いこともあります。
フリーアドレスは、基本的に毎日座席を変更するものですが、誰しも「自分の好みの席」や「好きなメンバー」で固まってしまうことを避けられません。
「あそこは◯さんの席」「あそこは◯グループ」といったような、固定化がおこなわれてしまい、社内の仲良しメンバーが固まって座ってしまうことに・・・・・・せっかくフリーアドレスにしたはずが、自分が座ってみたいと思う席にも座れない。座ったとしても周りから「空気が読めないやつ」という視線を向けられたりして、フリーアドレスのメリットがまったくない状況になってしまいました。
■注意点■
マネジメント層や管理職が、席を固定化させないように積極的に違う席に座るなどして、フリーアドレスの意味を社員に浸透させる。
フリーアドレスの狙いの一つは業務効率のアップですが、それは業務の性質にもよるかもしれません。
集中してチェックしなければいけない業務だったりすると、周りの動きが常にあって、会話や電話がおこなわれていると気が散ってしまって作業効率が落ちてしまうことは避けられないでしょう。
また、フリーアドレスの場合は、社員がそれぞれノートパソコンを持って移動することが多いですが、デスクトップのキーボードや大きなディスプレイなどの方が使いやすい人は少なくありません。
■注意点■
集中して業務をおこないたい人向けのエリアや、会話がOKなコミュニケーションエリアなど、用途ごとにエリアを儲ける。
デスクトップのディスプレイやキーボードなどの設備を備えたスペースを作る。
業務にもよりますが、フリーアドレスの場合は、自分の資料やPCなどを常に持って移動する必要があり、業務終了後は全て片付けなくてはなりません。
デスクに収納スペースなどがないので、紙の資料をチェックするような業務の人は、業務に取りかかるまで、終わってからしまうまでが一苦労。
確かにオフィスはきれいになりますが、毎回の作業にかかる時間が無駄になってしまいます。
■注意点■
個人用ロッカーとは別に、オフィスにも個人用キャビネなど資料やマニュアルなどを格納するスペースを設ける。
数年前から注目されてきた「フリーアドレス」ですが、昨今のコロナ禍の中で、「いずれは検討」から「緊急の課題」へと変化しています。
ここ数ヶ月の間で「フリーアドレス化のために、出社して荷物を片付ける」といった方は多かったのではないでしょうか。
しかし、オフィスのスペースにかかるコストを削減したいということから、とりあえずでフリーアドレスをはじめてしまうと、タダでさえ能率が落ちがちな在宅勤務に加えて、オフィスでの生産性も低下してしまい、今までと同じ成果を出すのにより多くの時間がかかってしまうことになりかねません。
フリーアドレスについては、いっぺんに導入するのではなく、反応を見ながら段階的な導入をおすすめします。