最近、ニュースで「ESG」という言葉を聞くことが多くなりました。
ESGとは「環境・社会・ガバナンス(企業統治)」を示す言葉で、これからの世界経済や企業経営に大きな影響を及ぼす重要なキーワードの1つです。今回はこの「ESG」について、言葉の意味と、なぜ注目されているのかということについて説明します。
ESGとは「環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(ガバナンス Governance)」の英単語の頭文字を取った言葉です。
いま、企業が長期的に成長するためには、経営においてESGの3つの観点が必要だという考え方が世界中で広まっています。
具体的には、以下のような要素です。
確かに、世界的に注目されている先進的な企業は、上記のESGを押さえた経営をしているのがわかりますね。
例えば、ガソリンを使わずに走る電気自動車や水素自動車の開発、オフィスや店舗での節電やペーパレス化、女性管理職を多く登用し、多様な人材を活用するなどといったことです。
利益や売上高、資産というような数字でわかる財務情報だけでは、その企業が今後も持続するかどうかを予測することはできません。そこで、ESGが新たな企業評価の軸として注目されつつあり、ESGを重要視する企業に積極的に投資する「ESG投資」が、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に広まっているのです。
これは絵に描いたきれい事ではなく、ESGの概念ができる前から、日本でも公害問題を引き起こした企業は、それまでと同じようには規模を維持できていないということからもわかります。
長期的に持続する企業は、自身の利益だけを追求するのではなく、環境や従業員、ステークホルダーたちに対して誠実である経営をおこなう必要があるのです。結果的に、経営におけるリスクを排除し、成長にもつながります。
ESGとよく似た概念に「CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)」があります。
CSRとは、企業が顧客をはじめ、株主や従業員、取引先、地域社会など、のさまざまなステークホルダーたちからの信頼を得るための活動です。
具体的には、社会性や企業倫理を保った経営や、環境への配慮などを差します。例えば、「森林を守ろう」と植樹などをしている企業がありますが、あれはCSR活動の一環であり「私たちは環境に配慮する企業です」とアピールしているわけです。
両方同じような概念に思えますが、
CSR は企業側が自発的に定め「自分たちはこういうモラルのある企業ですよ」という方針を打ち出すのみで、ブランディングには役立ちますが、業績にはあまり貢献していません。
そのため、投資家からはCSRはいわばボランティアであり、コストとして見なす向きもあります。
ESG は、企業が自身の評価を高めるだけでなく、長期的に成長を持続させるために戦略的におこなう経営活動の一つです。
ESGの概念が盛り上がってきたことから、CSR活動についても見直しがおこなわれ、これまでのスポット的な社会貢献ではなく、社会問題を解決するための企業活動をどのようにおこなうかを考える時期に来ています。
次に、ESGとよくペアで出てくるSDGsについて解説します。
SDGsとは 「Sustainable Development Goals」の略で、2015年9月の国連総会で採択された『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』の中で示された、2030年に向けた国際的な開発目標です。
SDGsは様々な取り組みの「ゴール」となる概念ですが、この道筋にあたるものとして考えられているのがESGという事になります。
例えば、「7.エネルギーをみんなにクリーンに」というSDGsのテーマは、ESGの「環境(Environment)」に取り組むことで、新たなエネルギー源が発見されることで達成されるかもしれません。ESGを意識した企業活動をおこなうことが、その企業の持続的な成長を促し、ひいてはSDGsの実現にも寄与するという関係です。
SDGsの実現には途方もない資金が必要となりますが、最近ではESGに取り組んでいる企業に投資する「ESG投資」がその後押しをしています。ESGとともによく聞かれる言葉は、それぞれが全く別のものではなく、関連し合っています。これらをかみ砕いて理解することで、企業分析にも役立てることができるでしょう。