企業活動においては、継続して存続していくことが至上命題であり、またそのうえで事業活動を行う中で必要となる運転資金を確保する必要があります。今回は、コーポレートファイナンスの概念について理解していただくとともに、その中でも調達方法に着目して解説していきます。
コーポレートファイナンスとは、企業における財務活動全般について呼ばれる名称です。具体的に説明すると、企業は企業価値を高めることを目的に投資活動の検討・実行をします。そのうえで投資活動に必要な資金や、事業活動に必要な資金を調達する活動の総称をコーポレートファイナンスといいます。コーポレートファイナンスは企業を存続するうえで、必ず理解しなければならないものです。
コーポレートファイナンスの目的は企業価値の最大化を財務面から検討することです。そのためここでは企業価値について解説していきます。企業価値とは、企業が今後将来にわたり獲得するキャッシュ・フローにたいして時間的価値を考慮して算定されるものです。企業価値の算定方法は様々なものがあり、具体的には正味現在価値法(NPV法)、DCF法、IRR法などがありますが、一般的な算出方法はNPV法やDCF法です。企業価値を高めるためには、この将来獲得するキャッシュ・フローをより多く獲得する必要があります。そのためには事業活動の拡大や新たに投資を行うことが必要であり、そのために必要な資金調達を行うことが必須となりますのでそこでコーポレートファイナンスにつながるわけです。
実際に企業価値を高めるためには資金が必要となりますので、ここでは資金調達方法についてみていきます。この資金調達方法には大きく分けて2つあります。一つ目はエクイティファイナンスと呼ばれる方法であり、もう一つはデットファイナンスと呼ばれる方法です。これらの方法が一般的に資金調達を行う際に実行されるものとなります。
エクイティ=資本であることからもわかる通り、株式を発行することまたは将来株式に転換するものを発行することによって資金を調達する方法をエクイティファイナンスといいます。いわゆる自己資本による資金の調達方法がエクイティファイナンスです。エクイティファイナンスには主に4つの方法があります。具体的には、
①増資
②株主割当増資
③第三者割当増資
④転換社債型新株予約権付社債
となります。この方法は、以下で説明するデットファイナンスのように、支払利息の支払いがないことや返済義務がない点が大きなメリットとなります。その他、資本が増加する調達方法であることから企業の財務体質が強化できる効果などもあります。一方でデメリットとしては特に増資や転換社債型新株予約権付社債を行った場合には、株主が増えるため一株当たりの価値が希薄化してしまい、エクイティファイナンスを実行する際には、既存の株主に対して説明責任が求められることや、経営権や配当方針に影響を及ぼす場合もある点がデメリットとして挙げられます。
一方で、デット=負債であることから、借り入れや社債の発行等により資金を調達する方法をデットファイナンスといいます。いわゆる他人資本による資金の調達方法がデットファイナンスです。具体的にデットファイナンスの方法は、金融機関等からの借入の実行または、自社の社債を発行することによる調達方法の2つがあります。この方法は、上記で説明したエクイティファイナンスに比べコストが低いため資金調達がしやすいことや、投資家の承認を得ないで実行できるといった事務的な面からのメリットがあります。一方でデメリットとしては、エクイティファイナンスとは異なり、返済義務があることや支払利息・社債利息がコストとして発生することが挙げられます。
両者の資金調達には、実務面で異なるほか、財務諸表とりわけ貸借対照表に影響を及ぼすものとなります。エクイティファイナンスを実行した場合、転換社債型新株予約権付社債以外においては、純資産の部の資本金が増加します。一方で転換社債型新株予約権付社債は一旦社債として発行されるため負債の部が増加する点に留意してください。当該社債が新株予約権の権利が行使された際に、負債の部が減少し純資産の部に新株予約権として計上されるため純資産の部が増加します。これに対して、デットファイナンスを実行した場合には、負債の部が増加します。
コーポレートファイナンスの考え方については、企業経営を存続するためには必要な考え方であることを理解してほしいです。そのうえで、企業価値を高めるためには事業拡大の拡大や新たな投資を実施することが必須なので、運転資金を調達する必要があります。そこで資金調達方法には大きく分けて2種類が存在するので、どちらを実行するのかは企業の置かれている状況や、経済状況を鑑みて慎重に検討する必要あります。そのうえで適切な方法によって資金を調達していきましょう。