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70歳定年制はいつから?知っておきたい法改正

HUPRO 編集部
70歳定年制はいつから?知っておきたい法改正

2021年4月から「70歳定年制」がくるといわれています。少子高齢化が急速に進展し、日本の人口がどんどん減少する中で、今まで65歳までの雇用を義務づけていた「高年齢者雇用安定法」などが改正され、さらに70歳までの就業機会の確保を企業の努力義務とすることになったからです。
今回は、これからの世代に大きく立ちはだかる「70歳定年制」について、詳しく解説します。

急速に進む高齢化

急速に進む高齢化

出典:内閣府Webサイト 令和元年版高齢社会白書(概要版)

日本の高齢化は、急激に進み、2018年10月現在で、65歳以上人口は、3,558万人、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.1%となっています。
棒グラフは上の方は年齢が若いのですが、その幅が急激に縮み、下2つの層である65歳以上の幅が広がっているのが見て取れるでしょう。

下の層が広がるとともに、上の層も広がれば良かったのですが、団塊ジュニア以降が成人したあたりにバブルの崩壊、さらにリーマンショックが続き、不景気の中、少子化が進行しました。

このような状況で、年金の受給開始年齢の引き上げもあるため、早期のリタイアは難しい状況となっています。

「70歳定年制」を求める法改正について

「70歳定年制」を求める法改正について

出典:「70歳までの就業機会確保(改正高年齢者雇用安定法)」|厚生労働省Webサイト

厚生労働省Webサイトに、現行の制度と、これから新設される制度の対比表が掲載されています。
現在は65歳までの雇用機会を確保するため、高年齢者雇用確保措置として

①65歳まで定年引上げ
②65歳までの継続雇用制度の導入
③定年廃止

のいずれかを講ずることを義務付けていますが、それが2021年4月より、70歳までの延長を求めるにあたり、図の右のように変わります。

新しい制度は努力義務となっており、義務付けられてはいません。しかし、65歳までの義務は改正前と同様ですので、実際は65歳から70歳までの就業機会の確保を求める法が定められたということになります。

年金の受給開始とセットになっている定年延長

ついこの前に「65歳定年」がいわれたのに、もう「70歳定年」とは、これから定年はどんどん延長されるのでは・・・・・・と思われるかもしれません。

しかし、この定年延長については、高齢者向けの老齢年金の受給開始年齢の引き上げとセットになっておこなわれています

現在、厚生年金の加入期間が1年以上あり、老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていれば、60歳から64歳までの間は、特別支給の老齢厚生年金が受けられます

この特別支給の老齢厚生年金は、以下のように段階的に65歳に引き上げられている最中です。

・定額部分の支給は、2001年度から2013年度にかけて、
・報酬比例部分の支給は、2013年度から2025年度にかけて、
※女性は5年遅れのスケジュール

つまり、65歳への定年延長も2025年度にまで完了するというのが現在の流れで、まだ65歳定年も完了してはいません。

そこにすぐ「70歳まで努力義務」と来ているので、「年金の受給開始も70歳に?」と思うかもしれませんが、2020年7月現在、年金の給付開始年齢の変更は審議中です。今後の流れに注目しておいた方が良いでしょう。

65歳から70歳までの働き方はどうなる?

現在、企業は60歳定年から65歳定年への移行期ですが、今までの定年であった60歳以降もそのままの役職でいられる人はほんの少数です。

というのも、企業では人件費の計算を60歳定年でおこなっており、それまでの役職と給与で手稲年長すると、人件費が相当に膨らんでしまいます。

そこで、元々の定年である60歳を迎えた社員を子会社へ出向させたり(もっと早い段階でおこなっている場合も)、短時間勤務に移行させたり、管理職の定年は60歳までとするなどして、給与を低く押さえるようにしているのです。

そして今回の法改正で新たに加わった65~70歳までの働き方ですが、65歳までの自社の定年引き上げ子会社や関連会社での継続雇用・定年廃止に加え、以下の働き方も加わっています。

他事業主への雇用
フリーランスになる、起業するなどし、希望に応じて業務委託契約を締結
・会社が実施もしくは委託・出資する社会貢献事業への参加

会社に残る(子会社や関連会社含む)以外に、他の事業主に雇用・フリーランス、業務委託などの道が示されました。

多様な働き方が用意されたと言えばそうですが、フリーランスや起業での業務委託については、それまでの雇用形態とは異なりますので、定期的な収入ではなくなります。

本人の希望が尊重されれば良いのですが、65歳までの定年引き上げでも給与はかなり下がるところが多いため、収入についてはそれなりを得ることが難しくなるのは必至です。

今後は、70歳定年制とはいえ、60歳、65歳と段階的に訪れる給与の引き下げと老後に備えて自分の資産を築く、つまり若いうちに貯蓄や投資でそれなりに貯めておくことはよく言われていますが、そもそも70歳まで元気に働けるように健康を大事にする働き方を目指すべきでしょう。

貯金がなくても体が健康であれば、ある程度何とかなりますが、病気になってしまったり介護が必要になったりしてしまっては、貯金がいくらあっても足りませんし、人生の質も大きく変わってきます。

いまハードな働き方をしていると感じている人は、これからの人生での勤労年数を考え、自分にとって無理なく働くことができる働き方を選択することも、これからの高齢化社会に備える方法といえるのではないでしょうか。

この記事を書いたライター

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