人事の等級制度には大きく「能力」「職務」「役割」の3つに分けることができますが、その中でも役割等級制度は役割に重点を置いています。この記事では、役割等級制度の概要や日本の多くの企業で導入されている職務等級制度導入との違い、メリット・デメリットについて紹介します。
役割等級制度は個人の能力を元に考えられた等級制度です。
達成すべき成果や、果たすべき職責などの役割が基準になっているのが特徴的です。
加えて年功序列の傾向が強く、勤続年数や経験年数、業務能力によって評価されます。
そしてミッションの定義を重視した制度で、役割によって待遇が決まります。
企業ごとによって役割の定義は変わるため、統一した定義はまだありません。
日本に浸透しやすい制度ではありますが、 定義が曖昧なことも多く、 役割等級制度に関してはまだ模索段階の企業も多いです。
日系企業の多くは職務等級制度を導入しています。
職務等級制度は従業員個人の事情は考慮せず、個別の職種ごとに給料を決まっています。
そのため、同じ仕事をすれば、同じ給料がもらえる仕組みになっています。
一方で、役割等級制度は職務等級制度と全く逆の性質を持っており、1980年代にアメリカで始まりました。
現在ではアメリカだけでなく、多くの海外の企業でも導入されています。
外資系企業や海外支社、ベンチャー企業などに多い成果主義を前提としており、平等な適正な評価をできるようにするために、導入している企業が多いです。
まず役割等級制度には、どのようなメリットがあるのか詳しく見ていきます。
役割等級制度を導入することで、社員に対して会社が求めているものを明文化できるのがメリットの一つです。
評価基準となる項目に基づいて、会社が期待する従業員の理想の姿を伝えられます。
これは企業理念を浸透させて、従業員の意思を統一させる際に役立ちます。
また、従業員の目標が明確になり、期待成果や役割行動、業績目標などを具体的に決められます。
これによって、従業員も自分の目標管理がしやすくなり、円滑に業務を行えます。
等級役割制度では、求められる役割の難易度や会社の貢献度、成果に応じて報酬が決まります。職務等級制度とは異なり、勤続年数や年齢は関係ありません。
そのため、会社から求められた成果が残せなかったり、役割を全うできなかった場合は減給や降級になるため、結果的に人件費の削減に繋がります。
職務等級制度の場合、やるべきことが明確に定められています。
そのため、少しでも業務内容が変わった職務に異動することになったらそれに伴って等級も変わり、簡単に人事異動ができません。
しかし、役割等級制度では職務等級制度と違って業務上の役割が大きく括られているため、人事異動が簡単に行なえます。
役割等級制度はしっかり機能すれば素晴らしい人事制度ですが、もちろんメリットだけでなく、デメリットもあります。
ここでは、具体的にどのようなデメリットがあるのか見ていきます。
デメリットの一つに、企業風土や文化が醸成されていないと運用が難しいことが挙げられます。役割は従業員自身に任せられていることがあるため、受け身で指示待ち社員だとうまく機能しません。
そのため、自ら考えて主体的に動かない社員が多い場合には、難しい人事制度です。
実際に役割等級制度を導入する前に、自社独自の評価基準と等級分けを考える必要があるため、労力がかかります。
役割等級制度では、統一規格や設定がないので、各社が独自に評価基準を定めて、制度を整えていかなければなりません。
当然ですが、企業によって事業内容や社会的立場が違うため、他社の模倣では意味がありません。そのため、初めは今の状況を精査して自社独自のルール作りをしていくことになるので、時間がかかります。
導入を検討している場合は、こちらを念頭に入れておきましょう。
役割等級制度では、それぞれの社員に対して役割を設定します。
管理職のような上位職には、複数の難易度や期待度が高い業務が課せられるため、役割が増えます。
その結果、負担が大きいと感じる社員も出てくるので、社員のモチベーションを保つのが難しくなるかもしれません。
また、年配社員の多くは年功序列に慣れ親しんでいることが多いので、今までの等級が見直されて降格や減給になった場合、社員から不満の声が上がるリスクがあります。
今回は、役割等級制度について紹介してきました。
魅力的な人事制度ですが、日本人に馴染みのある職務等級制度とは大きな違いもあります。
メリットもある人事制度の一つですが、デメリットもあるので、その点を踏まえて導入を検討されることをおすすめします。