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簿記2級の出題範囲!2021年度から変更された論点やネット試験での変更点も含めて解説!

HUPRO 編集部
簿記2級の出題範囲!2021年度から変更された論点やネット試験での変更点も含めて解説!

日商簿記検定試験の2級の商業簿記科目には、3級の出題範囲から工業簿記や連結会計等が加わります。今回は簿記2級の出題範囲の中で、近年の試験で毎回のように物議をかもす「連結会計」について取り上げるとともに、2020年から始まったネット受験、2021年度から変更になった出題範囲について解説します。

【TOPIC】簿記2級の2021年度からの変更点まとめ!

2021年4月から日商簿記の試験範囲や試験の概要が変更になりました。

以下変更点のまとめになります。

☆2021年度より変更になった箇所まとめ☆
①試験時間が120分⇨90分へ変更
②2021年度は収益認識基準に関する問題がでない。
③問題用紙と答案用紙と計算用紙が冊子になり回収されるため自己採点不可能に。

①試験時間が120分⇨90分へ変更

簿記2級は3つの受験方法が用意されています。
そして統一試験・団体試験・ネット試験(CBT)全て試験時間は90分になります。

商工会議所の検定試験

②2021年度は収益認識基準に関する問題がでない。

収益認識に関する取引は簿記の中でも最も基本的な論点の1つではあるものの、2021年4月1日-2022年3月31日までは出題せず、2022年度より出題となります。

具体的には、商品保証引当金・製品保証引当金などに関しての出題が変更になります。商品の保証には、無料保証と有償保証がありますが2020年まで全て、商品保証引当金として処理しました。有償保証は収益に関わるため出題されず、無償保証だけ2021年度も出題となります。

出典: 企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」等の適用にともなう 商工会議所簿記検定試験出題区分表などの改定について

③問題用紙と答案用紙と計算用紙が冊子になり回収されるため自己採点不可能に。

簿記試験において全ての級で、試験の問題用紙と計算用紙が回収されるようになりました。万が一いづれかを持ち帰るなどの不正があった場合は、不合格になります。

商工会議所の検定試験

【TOPIC】簿記2級ネット試験開始!範囲に変更はある?

本題に入る前に、2020年12月から始まった簿記2級と3級のネット試験について少し触れておきましょう。

1.ネット試験は毎日受験が可能

これまでは年3回決まった日にしか受験できませんでしたが、ネット試験は指定会場で毎日実施されるようになりました。

さらにその場で合格判定が出ます。もし不合格だったとしても、最短で3日後に再受験が可能なのです。簿記検定もIT化が進みましたね。

ネット試験の場合は、これまでの試験とは異なり時間は120分から90分に変更。統一日程で行われるペーパーテストは今後は並行して実施されますが、2021年6月試験からは同じく90分に変更になります。

2.ネット試験の試験範囲はペーパーテストと一緒だが対策が立てづらい

2021年2月28日(日)施行の第157回試験までに適用する試験範囲区分は、ネット試験も紙の試験も変わりません。

ただし、ネット試験の場合は試験範囲に沿った問題をあらかじめたくさん作っておき、会場で隣の人と同じ問題にならないようにバラバラに配布されます。

よって、ペーパーテスト以上に傾向と対策が立てづらい試験になっているのが特徴です。
もしかすると、試験範囲にはあるものの、これまで一度も出題されたことのないようなマイナーな問題が出るかもしれません。

つまり、これまで以上に試験範囲をまんべんなく学習しないといけないようになっているのです。

簿記2級商業科目-連結会計-が頻出に

簿記2級ではネット試験が導入されてから、本支店会計と連結会計の出題頻度が高くなりました。

これまでの諸取引の処理の範囲内でも、3級では回答が求められなかった有価証券、外貨建取引、リース取引等、各範囲において更に難易度の高い回答が求められます

簿記2級の範囲の決まり方

「簿記2級は難しくなった」と言いますが、決算の複雑化により、そもそも経理に求められる知識自体がアップしているのが実情に近いといえるでしょう。

簿記検定の範囲の決め方は「実務に即して」というのがポイントです。例えばクレジットカードの掛取引や電子記録債権などについても、普及したことから出題範囲に入っています。

商工会議所は意図として、知識の単なる暗記ではなく、実務に即した理解を受験者に求めています。

「経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つ。高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。」

出典:日本商工会議所 簿記2級のレベル

【簿記2級対策】連結会計について

簿記2級で注目されている「連結会計」について解説しましょう。

連結会計とは?

連結会計とは「親会社と子会社の関係にあるグループ会社において、それぞれの財務諸表を合算して一つの財務諸表にまとめる会計」です。

グループ企業を1つの組織と見なして作成します。

もともと連結会計は1級の出題範囲でしたが、連結会計のディスクロージャーが定着したことから、実務として連結会計に取り組む人も増えたという前提で2級の範囲に加わりました。

簿記2級の出題範囲では
「連結損益計算書」
「連結貸借対照表」
「連結株主資本等変動計算書」
を作成することが求められます。

それぞれの会社単体の財務諸表だけで判断しようとすると、その財務諸表にはグループ間で生じた損益つまり、対外的な情報以外の取引情報が含まれていることによって、本来の状況の判断をつけづらくなります。

そのため、グループ会社間で生じた損益等を除外した連結会計による財務諸表が必要となるのです。

グループ会社とは

よく会社の組織図などで「P社グループ」といったものが見られますが、連結会計の場合は実際に支配関係があるかどうかで判断します。
グループ会社とは資本関係のある親会社、子会社、関連会社等の一連の群をいいます。親会社は出資をしている会社、子会社や関連会社は出資を受けている会社です。

仮に、株式を一切もっていなくても「実質的に支配」していると判断されればその会社は子会社と見なされます。
法人税における役員報酬の算定で「みなし役員」という考え方(実際に役員として登記されていなくても会社の経営にタッチしていれば役員と見なす)がありますが、税金にまつわる考え方は常に実態に基づくというのがポイントです。

【参考】子会社・関連会社の定義

子会社は親会社から概ね50%以上の出資を受けている会社をいい、100%の出資を受けている場合は完全子会社といいます。

関連会社は親会社から20%以上50%未満の出資を受けている会社をいいます。
 

簿記2級における連結会計の出題範囲

連結会計における会計処理、つまり「連結損益計算書」、「連結貸借対照表」、「連結株主資本等変動計算書」を作成するためには、本来であれば様々な会計処理方法の習得が必要です。

しかし簿記2級の出題範囲は、2021年2月実施予定試験まで、連結会計の中では

・資本連結
・非支配株主持分
・のれん
・連結会社間取引の処理
・未実現損益の消去
・連結精算表と連結財務諸表の作成

に限られています。

例えばこれまで日商簿記検定2級における連結会計の出題については、以下のような意図で出題されています。

出題区分表の改定によって追加 された項目のうち、これまで出題のなかった棚卸資産に係るアップストリーム の場合の未実現損益の消去と、製造業を営む会社の決算処理とを出題したこと が目新しい論点です。もっとも、本問で示したようなビジネスの形態は、連結 の実務では一般的なものです。
引用:日商簿記検定2級 第153回 出題の意図・講評
今回は 2 級レベルの連結会計の問題として、連結精算表の作成を出題しました。簡易な連結の実務でも、子会社が 1 つだけという企業はまずなく、複数の子会社を有していることが通常です。(中略)実務に寄り添った連結作業のための基本的な知識を問うています。
引用:日商簿記検定2級 第151回 出題の意図・講評

つまり「別に意地悪をしているわけではなく、出題範囲にも明記しているし『簿記2級ならこのくらいのことは知っておいてほしい』という意図から出題した」と言っているのです。

講評からも出題範囲についてはまんべんなく勉強してほしいという意図が読み取れます。あくまで実務前提だからというわけです。

まとめ

簿記2級2021年度の変更点やネット試験に関する解説をしてきました。

ネット試験の普及により「あの論点はマイナーだから」「前回出たから今回は出ないかな」といった予想がつけづらくなっています。

2022年4月以降には、また新しく出題範囲が改定される可能性が高いことから、常に情報をキャッチしておきましょう。また対策を練る際は、最新の参考書での対策をお勧めします。日本商工会議所としては、知識の理解よりも、実務ベースでアウトプットできるかを重要視しています。

しかしこれまでのように一度不合格になったら4ヶ月待ちというような状況ではなく、気持ちが盛り上がっているときに再び挑戦できるという点はネット試験のメリットです。範囲についてはまんべんなく学習して、納得感のある簿記2級を取得しましょう!

この記事を書いたライター

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