M&Aは事業の拡大や経営基盤の強化など、当事者双方の企業にメリットがあるため、検討する企業が増えています。そんなM&A業務は専門知識を使わなければならないため、資格が必要なイメージが強いようですが、果たして必須の資格はあるのでしょうか。
今回はM&A業務に資格が必要なのかについて解説していきます。
近年、中小企業における後継者不足の問題や事業の選択と集中などが進むことにより、M&Aの需要が高まっています。これに伴って、M&Aの案件数が右肩上がりに増加しています。そんな中でコンサルタントの立場でM&Aをサポートする、M&AアドバイザーおよびM&A仲介や、企業のM&A担当者の役割は非常に大きいものになっています。
そんなM&A業務を行うにあたって、必須の資格はありません。無資格でM&A業務を行うことは、一向に問題が無いのです。
その一方で資格を持っていれば信頼度が増すのはもちろん、資格取得のために習得した知識やスキルが活かせるため、スムーズに業務にあたることが可能になります。ただし、どんな資格でもM&A業務に活かせるというわけではありません。実際にどんな資格が役立つのか、次の章で紹介していきます。
M&Aを進めるにあたっては、法務、税務、会計、労務など専門的な知識が必要となります。これらの専門家はいわゆる税理士や公認会計士などと言った国家資格の保有者が該当します。また、M&Aに関連する総合的な資格として、民間資格もいくつかあります。
M&AのサポートをM&AアドバイザーやM&A仲介に依頼する企業にとっては、これまでの実績に加えて官民関わらずどんな資格を持っているのかというのは、依頼するかどうかの決断をする重要な要素になり得ます。なので、M&A業務に興味がある方はどんな資格が活きるのかを把握しておく必要があります。
今回は民間資格と国家資格に分けてご紹介していきます。
それではM&A業務に役立つ民間資格からみていきましょう。
①**M&Aエキスパート認定資格**(一般社団法人金融財政事情研究会)
②**M&Aスペシャリスト資格**(一般社団法人日本経営管理協会)
③**JMMA認定アドバイザー**(一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会)
M&Aエキスパート認定資格は、一般社団法人金融財政事情研究会と日本M&Aセンターが共同で、企画・運営・認定をしています。基本的な知識を身につける「事業承継・M&Aエキスパート試験」や、その上位資格である「事業承継シニアエキスパート」、さらに上位の「M&Aシニアエキスパート」というものがあります。
上位クラスにおいては25年以上のM&Aノウハウをもつ日本M&Aセンターが講師を努めており、実践的な講義を行なっています。
M&Aスペシャリスト資格は日本経営管理協会が運営・認定しています。M&Aの知識だけではなく、現場で使える知識を取得でき、実務のスペシャリストであることを証明できる資格となっています。この資格は実務に特化しており、M&Aの第一線で活躍している方が講師となっており、資格取得後も役に立つ内容を学ぶことができます。
JMMA認定アドバイザーは、一般社団法人日本M&Aアドバイザー協会が運営・認定しています。JMMAが定める基準をクリアした上で、入会を認められた者しか取得することができません。資格取得・入会により手厚いサポートを受けることができ、人脈などが作れる会員の集まりが年に2回あります。
次はM&Aに関連する専門資格です。こちらは、どちらかというとデューデリジェンスや契約書作成、登記など国家資格の各専門家が得意とする業務が数多く存在します。それぞれの専門家が各得意分野で力を発揮しますのでそれぞれの専門家とどのような役割をするのかみていきましょう。
①弁護士
②公認会計士
③税理士
④社会保険労務士
弁護士は法務の専門家として、法務デューデリジェンス、契約書の作成・締結、そのほかトラブル時の法的対応などの助言などを実施します。法務デューデリジェンスにおいては、顧客との契約や負債の有無、労働環境などにおける調査を行い、契約して問題ないかをチェックします。リスク管理の観点において、弁護士は重要な役割を果たします。
次に公認会計士ですが、会計や監査の専門家として会計デューデリジェンス、株式価値の算定、事業計画の策定など、M&A戦略の立案からPMIまでの幅広く支援することが可能です。M&A業務を総合的に管理する役割を果たします。公認会計士のM&A業務における役割について、下記の記事でも詳しく紹介しております。
税理士は税務の専門家ですが、税務デューデリジェンスを中心にデューデリジェンスの実施、M&Aにおいてはスキームにより税金の発生が異なるため、税務に関する助言などを実施します。税理士のM&A業務における役割については、下記の記事でも詳しく紹介しております。
社会保険労務士は通称社労士とも呼ばれ、労務デューデリジェンスやM&A後の人事政策や雇用条件の調整、労務的なアドバイスなどを行います。労務デューデリジェンスでは従業員の働き方や雇用契約などに問題が無いかを確認します。
ご存じの方も多いとは思いますが、今回ご紹介した中でも税理士や公認会計士、弁護士は難関国家資格と呼ばれており、社労士含めて難易度はかなり高いです。昨年のそれぞれの資格試験の合格率は以下の通りです。
一見すると、この中では弁護士の難易度が低いように見えますが、弁護士は法科大学院の卒業もしくは予備試験の合格をしていないと、受験資格が与えられないので、その中で45.5%の合格率というのはかなり狭き門といえます。
一方で、M&Aの知識に直結するM&Aエキスパート認定資格、M&Aスペシャリスト資格、JMAA認定M&Aアドバイザーは国家資格と比べると比較的難易度は低いです。資格を取得するために講座を受講する必要があるなど、資格取得のためのサポートを受けられます。
難易度の観点で言うと民間資格の方が取得しやすいといえますが、国家資格は資格を活かせる業務の幅や専門性が高いので、ニーズも高くなります。
ご自身の状況に合った資格を取得するのが良いですが、勉強に時間をかけられるのであれば、税理士や公認会計士、弁護士といった国家資格がオススメです。
ご紹介したような資格があると、ある程度転職活動では有利に活動することができます。ただし、初めてM&A業務に挑戦する、という未経験者への採用は経験者に比べると限られているので、しっかりと対策や準備をしておく必要があります。
ただ、それを一人ですべて行うのはかなり時間がかかってしまうでしょう。特に働きながら転職活動をする方が多い中で、そのような時間を十分に取るというのは、あまり現実的ではありません。
ですので、転職エージェントを利用して効率的に転職活動を進めるのがオススメです。転職エージェントは求人のご案内や書類添削、面接対策などをサポートしてくれます。
当社の転職エージェント「ヒュープロ」はM&A業界などに特化したエージェントですので、ここでしか出会えない非公開求人のご案内や、企業のリアルな情報をお伝えすることが可能です。もしM&A業界への転職をご検討中でしたら、是非専門のエージェントよりサポートさせて頂ければと存じます。
M&A業界で活かせる難関国家資格は、もちろん他の業界でも活かせます。今回はM&A業界以外の税理士と公認会計士の代表的な職場を簡単にご紹介していきます。
税理士と聞いて一番イメージされる職場は、やはり税理士事務所や税理士法人といった会計事務所でしょう。実際に、およそ90%の税理士が会計事務所で働いていると言われています。
税理士が専門としている税務業務はどの企業でも必要とされているので、企業の管理部門のポジションへのニーズも高いです。会計事務所で働いている税理士のキャリアチェンジ先としての人気もあります。
監査法人は公認会計士の就業先として最もポピュラーなものであり、こちらもおよそ90%程度の公認会計士が働いています。監査法人がどんなことをしているのかは、あまり知られていない傾向にあります。詳しくご紹介した記事がございますので、あまり馴染みのない方はぜひ下記の記事をご参照ください。
公認会計士は税理士試験の全科目が免除されるため、税理士として登録できます。それを活用して会計事務所で働く税理士もいます。税理士と会計士の違いがいまいち分からないという方は、こちらの記事をご確認ください。
M&Aにおいて必須な資格はございませんが、あると信頼度が増し、リスクを回避できるというメリットがあります。M&Aにおいては紹介したような民間資格や国家資格があり、何をもっているかによってM&A業界での活躍の仕方も変わってきます。
将来どんな形でM&Aに関わっていきたいのか、自分自身の方向性を定めてから資格取得を目指していきましょう。