税理士は専門的で独自性の高い仕事をしているため、どんな人に向いているのかが分かりにくいでしょう。税理士試験は難易度が高いため、これから税理士を目指すのであれば、その仕事に適性があるかどうかを理解してから目指すべきです。そこで今回は、税理士に向いている人と向いていない人の特徴について解説します。
税理士は試験の難易度が高く、その仕事についても専門的で多岐にわたるため、どうしても向き不向きが存在します。ここではまず、税理士に向いている人の特徴について紹介していきます。
税理士業務は日々の膨大な仕訳や確定申告など、細かく緻密な作業が求められるため、コツコツと繰り返し定型業務をこなせることは非常に重要です。
また、税理士は内勤だけではなく、クライアント先を訪問して経営者と直接コミュニケーションを取る機会も多いです。その際に、税務以外の相談も受けながら関係構築を図っていくことで信頼され、本質的な課題を話してくれるというケースもあります。そのため、小さな機微に気づきながら、長きにわたって顧客と関係性を構築する愚直さも求められます。
上述した通り、税理士は単なる数字の処理だけではなく、お客様とのコミュニケーションが必要不可欠な職業です。
コミュニケーション能力が高い人が税理士に向いていると言われるのは、顧問となるお客様と円滑なコミュニケーションを取り、彼らのニーズを理解し、適切なアドバイスを提供する必要があるためです。単に「友達を作るのが上手い」というような特性というよりは、人と接することが好きで、傾聴力があり、意見を表明するのが得意であれば比較的早いタイミングでお客様との信頼関係を築くことができます。
税理士事務所などではクライアントとの長期的な関係構築が売上に直結することから、採用においてもコミュニケーション能力は重要視されるポータブルスキルの1つなのです。
税理士の役割として、クライアントの納税にまつわる業務をサポートして税金が国に確実に納められるようにすることがありますが、多くのクライアントの税額を可能な限り節税することも求められています。
法律の枠内で節税するのは問題ありませんが、クライアントを優先し過ぎた結果、脱税容疑で税理士自身も逮捕されたことも過去にはあります。
そのため税理士は、納税という社会的に責任重大な役目があるという自覚を持って、正義感が強くて法律を遵守できる(倫理観のある)人が適しているでしょう。自分自身で独立・開業する場合はなおのことです。
税理士は常に最新の法律や制度、経済情勢をキャッチアップしていることが求められます。また、複雑な問題を解決するためには幅広い視野や知識が必要です。そのため、知的好奇心が旺盛な人は税理士に向いていると言えます。
さらに税理士業務は多岐に渡り、クライアントの業種や業態によって異なるため、学ぶことが多い職種でもあります。そのため新しいことを学ぶ好奇心がある人は、業務に対するモチベーションを保ちながらスキルアップしていくことができるでしょう。知的好奇心が旺盛な人は、税理士業務においても資格取得の勉強に合わせて中長期にわたって知識を蓄え、経験を積んで顧客にそれらを還元する能力が高いようです。
税理士は、企業の財務諸表を作成し、税務申告や監査対応、決算などの経理業務などを行います。そのため、企業経営に興味を持ち、経営判断の裏付けとなる財務データに関心を持っている人は、税理士としての仕事に適性があると言えます。
また、企業経営に関する知識や情報を習得することで、より良いアドバイスを提供することができ、税理士としての信頼性も高まることにつながります。企業経営に興味がある人は、税理士として能力を発揮することができるでしょう。
税理士は、その資格を活用して税理士事務所などを独立開業することができます。その場合、経営者として事業所を運営することになります。経営者になるにあたって活かせる資格は決して多くないため、経営者志向のある方にも税理士を取得はおすすめできます。
税理士はその難易度の高さから希少性が高く、有資格者の年収は高い傾向にあります。税理士の8~9割ほどが税理士事務所や税理士法人で働いているとされていますが、大手の税理士法人だと年収が2,000万円を超えるケースも珍しくありません。
また独立開業した場合には、会社から給料をもらう形ではありませんので、自分の力量次第で更なる高年収を狙える可能性もあります。具体的な税理士の年収については、以下の記事をご参照ください。
続いて、税理士に向いていない人の特徴も見ていきましょう。
税理士業務では、細かい数字の取り扱いや複雑な計算が必要になりますが、苦手意識がある人にとってはストレスがかかることもあります。また数字に対する興味がない場合、専門的な知識の習得にもつながりにくく、業務を進めるうえでにおいて不利になることがあります。
税理士に向いている人は、数字や計算に対して前向きな姿勢を持っており、それらの事実情報から考えうる選択肢のなかで最善な打ち手を自ら試行し、応用できる能力があると言えます。
税理士には細かい作業やルーティンワークが多く、それらに対して高い精度と正確さが求められます。そのため、緻密な仕事を求められることが苦手な人にとっては、業務内容自体がストレスになることがあります。また、業務を完了する上で効率を重視する風土があり、スケジュール管理に苦労することがあるかもしれません。
税務申告書の作成や会計帳簿のチェック、税務相談など、税理士の仕事はデータや情報を分析し、適切な判断を下すことが求められます。分析に関心がないと業務に対するモチベーションが下がり、正確性に欠ける業務を遂行することに繋がります。
また、経営者との打ち合わせでディスカッションする上でも、経営上の課題を見つけ、示唆をすることも仕事になりますので、プレゼンの準備に時間をかける意欲も求められていると言えるでしょう。
コミュニケーション能力が乏しい人は、クライアントからの要望や相談事に適切に応じることができず、クライアントとの信頼関係が損なわれることもあります。さらに、信頼関係が損なわれたことにより、外部の顧問先との折衝に不安を持たれてしまうと、顧客の担当を続けることができなくなり、結果、税理士というよりは書類作成の担当として実務を遂行するのみになる可能性も出てきてしまいます。
税理士は、細かい作業や長時間にわたる集中力が必要な職業です。顧客の財務情報を詳細に分析し、正確な数字を求めることが必要とされ、税務申告や決算書作成などの作業には時間がかかることもあります。
特に2月~3月にかけての確定申告期間にはほとんど多くの会計事務所で夜遅くまで細かいデータ集計を行うこととなり、納期が厳格な案件も多いため、間違うことができない集中力を求められる仕事といえるでしょう。
税理士の仕事に必要なスキルや能力を考えると、文系の方が向いていると言われることがあります。
その理由として、税理士の業務には法律や経済に関する知識が必要であり、主に文系の分野であるためです。また、知識面以外でも、税理士は顧客とコミュニケーションをとりながら、顧客のニーズを理解し、適切なアドバイスを提供する必要があります。このため、実験や研究といった理系が得意にする領域以上に、人間関係やコミュニケーション能力などの文系的なスキルが必要とされています。
ただし、理系出身者でも、もちろん法律や経済に興味を持ち、文系的なスキルを身につけた場合は、十分に税理士に向いている場合もあります。特に数字に対する抵抗感という点では、文系以上に理系出身者のほうが馴染みがあり、数字をもとにした会話にも抵抗がないと考えられます。
いずれにしても、税理士試験受験に向けて数千時間という時間を費やす忍耐力と座学を行ってきた背景がある方なら、十分に仕事を全うできる可能性は高いと考えられます。
平成26年4月に調査された「第6回税理士実態調査」によると、登録している女性税理士は全体の14.4%となっており、まだ全体の割合としては低いようです。
一方で、平成28年の合格者数としては、全体の27%が女性で、さらに令和3年度の科目合格率が男性よりも2%高いなど女性の税理士も増えてきているのが現状です。あくまで、現時点で男性の比率が高くなっているのは、長時間の残業や出張など業界慣習が抜けず、ブラックな業界と思われている側面もあるかもしれません。
しかしながらコロナを経て、徐々に働き方も多様になりつつある昨今、男女という性別による仕事のパフォーマンス差は少なくなっていくのではないでしょうか。
より多くの女性が税理として活躍の場を広げていくことで、これまで男性がメインだった税務・会計の領域においてもライフステージの変化に合わせた柔軟な働き方ができるなど「選択ができる職場」になっていくかもしれません。
ヒュープロでは、時短勤務やフレックスタイム、リモートワークなど個人の希望に沿った働き方の提案をしています。キャリアアドバイザーにご相談いただくことで、すぐでなくても今の職場よりも良い条件の求人を見ていただくことも可能です。
近年、デジタル化が進み、税務処理もオンラインやクラウドベースのシステムを利用することが増えています。税理士はデジタル技術に対応し、効率的なデータ管理や自動化ツールの活用など、最新のテクノロジーに精通している必要があります。
また、最近では税理士を利用する方々がより自分たちの条件に合った税理士と巡り合うことができるよう税理士とのマッチングサイトがあります。それらを活用することでさらに業務が増えますし、業務が増えることで収入アップにもつながるかもしれません。
税理士は、企業や個人の財務や税務に関するアドバイスや業務を行う専門家です。普段から、財務諸表の作成や分析、税務申告書類の作成や提出、税務調査対応といった仕事を求められています。
特に、法人税や消費税などの税法の知識や、会計基準の理解は欠かせません。これらは、国税局を中心とした税に関するルールが変更された場合などに税制改正や会計基準の改定など、常に最新の情報を追いかける必要があります。そして、それをわかりやすく税に詳しくない経営者に共有するコミュニケーション能力も欠かせません。
これらのスキル・知識があることで、税理士は顧客がおかれている状態に沿って、ケースバイケースの柔軟で的確なアドバイスを提供し、信頼性の高い業務を行うことができます。
税理士にとっても英語をはじめ、多言語を利用できることで武器になる可能性があります。決して大規模な会計事務所でなくても、Eコマースの発達によりバリューチェーン内に海外企業が関与しているケースは増えてきましたし、顧客同士の繋がりにより、顧問先として外国籍企業を紹介されるケースも増えてきました。こういった場合に、国際税務に関する専門用語や規制に精通していることは、国際的なクライアントの獲得につながります。
実際に転職時の求人としても、英語や中国語が利用できる方を優遇するものも増えています。専門性のある知識を複数の言語により操れることは、そのまま事務所自体の取り扱い範囲の拡大にも繋がるため、今後も重要視されていくでしょう。
近年、営業に重きをおく税理士法人が増えています。一定規模以上の事務所であれば反響営業があるものの、立ち上げて間もない事務所や顧客が単発の案件になるケースでは紹介を受けたり、自ら営業機会を増やす方法に頼らざるを得ない時もあります。
新規の営業でない場合でもクライアントとの信頼関係を築き、ビジネスを前進させるうえでは営業は重要なスキルになります。特に、保険営業に関しては、クライアントのリスクマネジメントに貢献できることもあり、提案をする事務所が増えているようです。
現代の税理士には、ITやエンジニアスキルが求められる時代となっています。クラウド会計ソフトや税務申告システムの導入、データの活用による分析力など、ITに関するスキル・知識が必要です。
特に2023年2月ごろより、ChatGPTを代表とするAIサービスの普及に伴い、更なるAIを用いた業務効率化が進んでいくでしょう。より資金力のある事務所がそうではない事務所を淘汰する可能性もあるため、時流に沿った対応が求められています。
税法は毎年改正が行われます。そのため、毎年、税法改正にはアンテナを張り、最新情報に適した業務を行わなければいけません。
よって、常に勉強することを怠らず、新しい知識に柔軟に対応し、情報をアップデートすることが重要です。
税理士に向いている人は、論理的思考力、コミュニケーション能力、粘り強さ、専門知識、チームワークなどのスキルを備えた人々です。また、多様な業種・業態に関する知識や法律の最新動向に敏感であることも求められます。そして、IT技術やデータ分析にも精通し、社会的ニーズに合わせた高度なサービス提供が求められ始めています。最適な顧客サービスを提供することができ、長期的な信頼関係を築くことができる人々が、税理士として活躍するために必要な資質を備えているといえます。
今回の記事をお読みいただき、税理士を目指そうと決心いただけた方は、以下の記事で税理士試験についてもご確認ください。