コロナ新型肺炎の流行で、勤め先企業の業績が悪化した、予定していたIPOが延期になるなど想定外のことが起こり、転職活動を考える人も多いかもしれません。厳しい経済環境のため、転職先を見つけてから今の職場を辞めたいと考えている人も多いと思います。今回は転職活動のためのマネープランについて解説します。
「そろそろ転職を考えようかな?」と思った時、転職先に関する情報や、自身の転職市場での客観的価値についてサポートをしてくれる転職サイトや転職支援会社はたくさんあります。大抵の転職希望者は、まずは、このようなサポートを提供してくれる会社やサイトで転職に関する情報収集を始めることを第一にすると思います。
けれども、転職を考えた時、転職情報と同じくらい大切なのは、転職活動中の、自分自身のマネープランです。ここでいうマネープランとは、「転職活動を行い、転職先を見つけて就職して最初の給料を貰えるまで、転職活動に必要な費用を捻出して、必要な生活費を確保して、転職活動中にお金の心配をしないようにすること」を意味します。
マネープランは、在職しながら転職活動をする場合にも、今の職場を辞めて転職活動に専念する場合にも、どちらの場合でも必要です。その理由は次の通りです。
① 転職をする場合には、多くの場合、給料を貰えない期間があること。
② 在籍しながら転職活動をする場合には、マネープランを考えない人が多いため、想定外の出費を捻出できない人が意外と多い。
③ 職場を辞めて転職活動に専念する場合のマネープランは、必要な費用を網羅していない場合が多い。
マネープランを考えなくても良いのは、無借金の人で、20代ならば給与1年分、30代ならば給与1年半程度以上の自由に使っても良い貯蓄がある人でしょう。それ以外の人は、転職活動をしようと思ったら必ずマネープランを行ってください。
働きながら転職活動をする場合には、毎月の生活費は今の職場の給料で賄える場合が大半だと思いますので、考えなければならないのは、主に2つです。
① 転職活動に掛かる費用と、転職活動中の生活が変わることで発生する費用
② 実際に転職をする場合に、次の職場で給料を貰えるまでに必要な生活費のためのお金
まず、在職中に転職活動をすると通常の生活費も多めに掛かるようになると考えましょう。今の仕事をきちんとこなしながら転職活動をするわけですから、自由に使える時間がほとんどなくなります。ですから、食費、交通費などがついつい多めに出ていくことになります。
また、転職活動には、スーツを新調する必要もありますし、髪形や化粧なども普段以上に身ぎれいにする必要があります。今であれば、Zoom等を使ってオンラインでの面接も多いので、個人で必要なPCやネット環境を整える必要もあります。
このような転職費用は、平均して、20万円くらい掛かるようです。転職活動が長くなればその金額も多くなります。結論として、通常の生活費は毎月20%程度のアップと、それ以外に20万円から30万円は転職活動に用意出来ると良いと思います。
在職中に転職活動をしても、退職から次の職場で働くようになるまで空白期間が全くないというケースは稀です。大抵は1ヶ月程度の空白期間があると思っていた方が良いです。
その場合には、その空白期間の生活費と、新しい職場で給料が貰えるまでの期間の生活費を確保しておく必要があります。ここで注意しなければならないのが、「自分が勤める企業が支払う給料は、後払いか前払いか?」です。「末締めの翌月25日払い」などの場合は後払い、「20日締めの当月25日払い」などの場合には、実際にはまだ働いていない当月10日分の給料を先払いしていることになります。この先払いの企業に勤めている場合には、退職するタイミングによっては、最後の給料が少なくなることがあります。
退職する企業と、次に就職する企業では、給料の支払い方が異なるのが一般的です。特に初めて転職する場合には、この点を見逃す人が多いです。大企業からベンチャーへ転職する場合には、給料が前払いから後払いになるケースが多いです。
結論として、転職をするタイミングには、2~3か月分の生活費があると安心です。
勤めていた企業を辞めて転職活動をする場合には、無職の状態で転職活動をすることから、在職しながら転職活動をするよりも経済的には負担が多いのが一般的です。けれども、大抵の会社員であれば転職活動中は失業手当を受給できます。そして、転職活動に専念できることから、時間的余裕があるので毎月の生活費を節約することも可能です。従って、転職活動に専念する人が考えなければならないのは次の3点です。
① 毎月必要な最低限の生活費
② 転職活動に必要な費用
③ 転職活動中の社会保険料等の費用
転職活動に専念する場合には、転職活動に費やす時間は充分あります。ですから、普段の生活費は自炊を増やす、友達との外食はなるべく控えるなどすることにより、働いていた時よりも生活費を少なくすることが出来ます。人にもよりますが、働いていた時よりも、10%~20%は少なくすることが出来ると思います。
貰える失業手当の金額は人によって違いますが、退職をする前に失業手当の受給金額を確認しておき、不足する生活費がいくらなのか予め計算をしておくと良いでしょう。理想は失業手当の範囲で最低限の生活費を賄うことです。それが出来ない場合には、転職活動期間を半年程度と見て、不足する金額は貯蓄から取り崩すことになりますので、その金額を予算化して、必要以上に使わないようにします。
転職活動に必要な費用は、在職中に転職活動をする人と大きな差がないと思います。毎月の生活費とは別に20万円から30万円程度を予定しておくと良いと思います。
初めて転職をする人の多くが盲点で失念をしてしまうのが、この転職活動中の社会保険料等の費用です。会社を辞めると、健康保険は、(1)国民健康保険に加入する、(2)前の職場の健康保険を任意継続する、(3)家族の扶養に入る、この3つの選択肢が考えられます。失業手当を貰っている場合には家族の扶養に入れる人は少ないと思います。従って、国民健康保険と社会保険の任意継続のどちらが有利か、予め調べておくと良いでしょう。
そして、厚生年金も脱退しますので、国民年金保険料を納める必要があります。それ以外に、給料から毎月天引きされていた前年分の住民税を自分で支払う必要があります。
この3つの費用、「社会保険料、年金費用、前年度の住民税」はかなりの金額になる可能性があります。貯蓄に余裕がない場合やリストラされた場合には、国民年金保険料や国民健康保険料は、市役所で減免の相談をすることも一考です。
リストラをされた人に多いのが、「失業手当は貰える期間分すべて貰わないと損だ!」と思い込んでいる人が多いようです。しかしながら、この考え方は間違いです。失業手当を貰いながら就職活動をして早く就職先が見つかった場合には、再就職手当が貰えます。
今の職場を辞めて転職をしようとする人の中には、失業手当を長く貰うことばかりを考える人が多いですが、そのような気持ちで転職活動をすると真剣味が欠けます。転職活動に専念しようとした場合には、なるべく早く次の仕事を探す気持ちが一番大切です。
一般的に、万が一の場合のために給料の3か月分の貯蓄をしておくべきというアドバイスが多いようですが、実際には、転職をする場合には給料の3か月分の貯蓄では心もとないので現実です。給料の3か月分の貯蓄は、通常でも必要な予備費のようなものだと思っておいた方が賢明です。
転職を考える場合、特に初めての転職の場合には、予め自分なりのマネープランを考えることで、転職活動中に余計な心配をしなくても良くなります。そして、マネープランを考えた結果、今は転職が難しいと判断した場合には、転職のタイミングを再考することも肝要です。転職活動のために、カードローンを使ったり、友人からお金を借りたりすることは論外です。転職活動のためのマネープランは社会人のたしなみと認識して、日頃から家計を管理しておくことが大切です。