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退職金と企業年金の違いとは?基礎知識と受給のコツ

HUPRO 編集部
退職金と企業年金の違いとは?基礎知識と受給のコツ

企業には退職金や企業年金など多くの制度があります。これらの制度は資産形成と密接に関係しており、老後資金を検討する際にもこれらの確認が必要となります。今回は、「退職金」と「企業年金」の違いについて基礎的な部分を説明し、さらに、そのもらい方のコツについて解説していきます。

退職金とは

退職金制度について

「退職金」とは、企業が退職する社員に支給するものであり、企業ごとに自由に規定する制度です。

必ずしも法律で支給しなければならないものではなく、金額や支給するタイミングなども企業によって異なります。企業によっては、定年退職のみならず、自己都合による中途退職、解雇、死亡等の際に支給される場合もあります。

退職金の目的

退職金の目的は、福利厚生を充実させ優秀な人材を確保するためです。

また、退職金は給与や賞与よりも税金の面で優遇されており、かつ、社会保険料がかからないため社員の手取りとなる金額が多くなるため、効率的な支給方法であると言われています。

退職金の種類

退職金には大きく二つの種類があります。ひとつが「退職一時金」であり、一般的に退職金といわれるものです。

退職時に社内規程で定められた金額が一括で支払われます。原資は内部留保であるため、企業は常に現金で積立金を確保しておく必要があります。

もうひとつは「退職年金制度」であり、いわゆる企業年金です。

会社の外部に年金制度を活用して積立や運用を行い、年金として受け取る仕組みです。名称は似ていますが、公的年金である「老齢年金.(国民年金)」や「厚生年金」とは異なるものです。

退職年金制度とは

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金は2002年4月にはじまった制度であり、現在では企業年金の中で最も加入者数の多い制度となっています。

社員が退職すると外部機関から社員に直接支給されるものです。確定給付企業年金は、企業が保険会社や信託銀行等と契約を結び、会社に代わって掛金として保険料を預かり、運用、給付を行う仕組みとなっています。

確定拠出年金 (DC)

確定拠出年金は、確定給付企業年金と同じように外部機関から社員に直接支給されるものですが、社員が選んだ方法で運用し、その運用結果による金額が支給されます。

原則的には60歳以上に年金として受給します。会社は決められた額の掛金を外部機関に拠出し積立を行い、運用の仕方は社員が選択します。運用リスクを社員が負担するため、社員が運用に関する十分な知識を持っていなければ、期待する額の退職金をもらえるとは限りません。

厚生年金基金

厚生年金基金は、厚生年金の一部と企業年金を合わせて基金が運営しているものです。

掛金の徴収や運営、支払いまで基金が代行します。掛金は確定給付企業年金に比べて少なめですが、厚生年金よりは掛金や給付金を増額して運営しているため、以前は多くの企業が厚生年金基金を運用していました。積立不足の問題などから2014年からは新設が認められなくなっており、制度の変更や見直しが求められています。

退職金共済制度

退職金共済制度は、会社が社員の退職金のために共済に加入して掛金を積立・運用をするものです。基本的には本人が共済に退職金受取請求をする必要があります。なお、会社が倒産した場合でも、社員は退職金共済から退職金を受け取ることが可能です。

退職金共済制度には、中小企業退職金共済の他に、業種別の退職金共済や商工会議所等が運営する特定退職金共済などがあります。

退職金共済制度

退職金と企業年金の受け取り方

退職金と企業年金の受け取り方

退職金一時金は退職する際に一括で受け取るケースがほとんどです。この場合、「退職所得控除」の非課税枠が適用されます。なお、退職年金制度では年金と一時金の2つの受け取り方法があり、企業年金の種類や会社の規程によって受け取り方法が異なります。

企業年金ごとの受け取り方

確定給付企業年金は年金でも一時金でも受け取れる場合があります。
確定拠出年金は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。一般的には、60歳になると年金として受け取るか、一時金として受け取るかを選ぶことができます。

厚生年金基金は加入者の減少から複雑な仕組みになっており、通算企業年金、基本年金、代行年金を受け取ることができます。まず、解散したり退職したりした厚生年金基金から、企業年金連合会に移管した場合は通算企業年金となり、終身年金として受け取ることができます。

80歳までが保証期間となっており、受け取り開始年齢から80歳までの間に死亡した場合は、死亡一時金を遺族が受け取ることができます。また、疾病や災害などで必要な場合には一時金を受け取ることができます。

基本年金と代行年金は厚生年金に相当する部分であり、2014年4月よりまでに厚生年金基金が解散した場合は代行年金、自身が退職した場合は基本年金となります。いずれも厚生年金に相当するので年金として受け取ることとなります。

退職金共済制度はそれぞれの制度により給付の種類や受け取り方が異なります。例えば、中小企業退職金共済制度の場合は、一時金と分割払いがあります。分割払いの支払い回数は年4回、受取期間は5年間と10年間があります。

退職金と企業年金の留意点

自社の退職金や企業年金を確認する

退職金および企業年金ともに就業規則や退職金規程として定める必要があるため、それらを確認することで把握することができます。そのほかにも、確定給付年金や厚生年金基金で社員負担分がある場合は給与明細の控除欄に掛金が明記されます。

また、各外部機関からの通知で把握することも可能です。なお、退職後は各機関からの案内の他、自身で照会しなけば把握できない場合がありますので、可能な限り在職時に把握しておくことをお勧めします。

中途退職した場合の退職金と企業年金

退職金に関しては、中途退職した場合に会社の規程に沿った支払いがされます。企業年金は退職する際に一時金として受け取ることが主となりますが、近年では企業年金を転職した先に持ち運ぶ仕組みが拡充してきています

実際に転職先に移管するかどうかは本人の選択次第となっており、移管する条件は企業年金によって異なります。

退職金や企業年金を受け取るまでに制度が廃止となった場合

在職中に企業年金が廃止された場合は、基本的には積み立てられた資産を社員(加入者)に配分して解散となります。

例えば、厚生年金基金の解散の場合は時期(2014年3月以前の解散かどうか)によって取り扱いが変わってきます。確定給付年金の場合は、年金資産が加入者に配分されて解散となりますが、加入者本人の希望により個人型確定拠出年金への移行が可能です。企業型確定拠出年金の場合は、個人型確定拠出年金に移行することになります。

退職金や企業年金を受け取るまでに制度が変更となった場合

企業年金が変更される場合は、新しい制度に引き継ぐ方法と引き継がない方法があります。

新しい制度に引き継がれない場合は、資産を加入者に配分して一旦終了となり、新たな制度が始まることとなります。変更前の制度が積立不足の場合は、会社が退職金として支給したり、長期的に新しい制度に補填したりします。

新しい制度に引き継がれる場合は、基本的には自分で手続きをする必要はありません。ただし、変更の制度が厚生年金基金の場合と、変更後の制度が中小企業退職金共済制度の場合は取り扱いが異なるので注意が必要です。

まとめ

退職金や企業年金制度は、その水準や支払い方法が様々であり、会社ごとに異なります。自分の会社の制度を理解し、老後の資金準備の一環として退職金や企業年金を検討することが大切です。

この記事を書いたライター

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