固定資産の実務の中で重要なものの一つに、減価償却費の計算が挙げられます。採用する減価償却方法で企業の利益が大きく変わることもあります。
そこで、今回は定率法から定額法など、減価償却方法を変更する時の注意点について解説します。
初歩的なことですが、減価償却方法の種類を簡単におさらいしましょう。
減価償却の代表的なものとしては、次の方法が挙げられます。
・定額法
・定率法
・級数法
・生産高比例法
実務で使われるのは、ほとんどが定額法と定率法でしょう。
定額法は、毎期定額の減価償却を行う方法となります。100万円の資産を購入して、耐用年数が5年の場合は20万円ずつ費用処理を行う方法です。毎期同額だけ費用処理されるため、見た目にもわかりやすい方法となります。
定率法は、100万円の資産であれば、該当する耐用年数の償却率をかけて償却費を計算する方法です。購入当初は多めに減価償却が行われて、徐々に償却費が減っていく方法となります。
法人税法上、特に届出を出さない場合は定率法を選択したものとみなされます。ですが、定率法の方が一般的に取得後に償却されるスピードが速いので、定率法を選択している企業は多い印象を受けます。
では、一度届出をした減価償却方法を変更するための手続はどのようになるでしょうか。定率法から定額法へ変更した場合を例にとってみましょう。
法人を前提に考えると、変更したい事業年度の前日までに税務署に提出・郵送・電子申告のいずれかを行う必要があります。
3月決算の場合は前の事業年度の3月31日までに提出しなければならず、申告期限である5月末と勘違いしないようにしましょう。
法人税法上は、基本的には届出を出すかどうかで要件を満たすこととなります。ですが、会計監査を受けているような企業ですと、単に税法に従っているからという理由だけでは認められない場合があります。
定率法はどちらかというと価値の減少が急激な資産や、稼働率が年々落ちてくる資産に適しています。
例えば、機械装置で購入当初が1時間に1000個部品が作れるものの、10年後にはその半分の500個しか部品が作れない場合や、メンテナンス費用がどんどん上がってくるような資産には定率法が向いていると言えます。
一方で、建物のように劣化スピードは時間と共に均等であるような資産であったり、機能が著しく変わるわけではなかったりするものについては定額法が適していると言えます。
よって、定率法でも問題なかったけれど、定額法のほうがよりその資産の償却費の実態を表すような場合に変更が認められると考えましょう。
それでは、定率法から定額法へ変更する際の計算方法を見てみましょう。
定率法から定額法に変更する場合、今まで定率法で償却をしていた資産の償却の基礎をどうするかによって計算方法が変わります。具体的には次のうちどちらかを選択することとなります。
・前期末までに償却されなかった金額を取得価額とする。
・元々の取得原価を使うが、耐用年数から既に経過している年数を差し引いて計算をする。
前者の方は台帳を登録しなおして新たに資産を購入したようなイメージでの計算となります。一見簡単そうに見えますが、償却が再スタートとなり損をすることがあります。
一方後者では何年今までに経過したかを間違えないようにしなければなりませんが、ソフトを使っていればそのまま償却を進めることができます。
例えば、100万円、耐用年数が10年の資産を5年間定率法で償却した結果、残額が300万円だったとします。ここで定額法に変更すると、300万円を取得原価として5年で均等償却となるので、残り5年を60万円ずつ償却することとなります。
ただし、実際の計算は割り算ではなく小数点を使った掛け算となるので端数処理の関係でちょうど60万円にはならないと思われます。
では、反対に定額法から定率法へ変更した場合の計算はどのようになるのでしょうか。
例えば100万円で耐用年数が6年の資産である場合、定率法であれば償却率は0.333となります。100万円で2年間定額法で償却すると簿価は約67万円となります。ここから定率法に変更すると、67万円×0.333の22万円が減価償却費となります。
定額法から定率法は、その逆の変更よりもすっきりとしている方法ですので、それほど迷うことはないでしょう。
ただ、減価償却方法を変えると間違いの元となりますので、システムを使っているとしても再計算などをするなどの検証が必要です。
定率法から定額法に変更する際は、償却の基礎となる帳簿価額をどうするかによって計算方法が異なります。定額法から定率法に変更する場合は比較的計算方法が簡単ですので、あまり問題はないでしょう。どちらにしても、会計監査人がいるような会社であれば、必ず事前に会計士に相談の上で変更をしましょう。
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