士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

人事デューデリジェンスとは?調査する情報や実施の流れも解説

社会保険労務士 田中かな
人事デューデリジェンスとは?調査する情報や実施の流れも解説

M&A取引を検討する際、対象企業・事業の価値やリスクについて、人事面から事前に調査・分析する作業を人事デューデリジェンスといいます。M&Aにおいて人事デューデリジェンスはなぜ必要なのでしょうか。今回は、人事デューデリジェンスの概要や目的を説明したうえで、調査対象となる情報や実施の流れなどについても解説していきます。

人事デューデリジェンスとは何か

デューデリジェンスとは、M&Aの意思決定に際し、対象企業の経営実態や内在リスクを調査・分析し、企業価値を検討する作業のことです。M&Aの可否を判断するための重要なプロセスとして実施されています。もともとは不動産取引における対象不動産の取引履歴や紛争の有無などを確認する行為が一般化されたものといわれています。

デューデリジェンスの大きな目的は、買収の可否判断や買収価格・条件の設定に役立てること、売り手と買い手の間の情報の不均衡や格差を是正し、株主などの利害関係者への説明責任を果たすことです。

M&Aの際に実施されるデューデリジェンスには事業や財務、法務、ITなどさまざまな種類があります。その中で人事デューデリジェンスは、人事制度や人材マネジメントなど人事領域の実態調査を指します

M&Aがいくら経営戦略上の合理性が想定されるものであっても、実際に企業を動かすのは「人」です。人事領域に関する課題解決こそが、当初想定した効果をだすための鍵になるでしょう。もっとも、人事デューデリジェンスは財務や法務など重なる部分も多いので、他のデューデリジェンスと連携しておこなうのが一般的です。

人事デューデリジェンスの目的

人事デューデリジェンスは、M&Aによって想定される人事上のリスクを把握し、リスクに備えるために実施します。人事上のリスクには、社員のモチベーション低下、組織風土の相違によって生じる社員間の摩擦などさまざまなものがあります。

M&Aにおける人事面の失敗で多いのは、買収にあたって優秀な人材が流出してしまうこと、統合後に人事システム上の想定外の出費が発生することです。人事デューデリジェンスを適切に実施すれば、このような失敗を防ぐことができます。

調査対象となる情報とは

人事デューデリジェンスでは、買い手が売り手に必要な情報を請求し、売り手が資料・データの収集、精査をおこないます。この情報には財務面、非財務面の2つの視点があります。

財務面

財務面では、各社における人件費や就業条件などの比較・分析をおこないます。そのうえで各社の現行の仕組みを残した場合、財務面にどのような影響を与えるのかを検証します。

たとえば報酬水準に格差があった場合、統合によって一方の会社の社員報酬が大きく下がることになれば、モチベーションの低下や不利益変更などの法的リスクが発生し、人材流出につながりかねません。そこで統合時には報酬の補填や昇格・降格のコントロールなどを検討する必要があります。

他にも、対象企業に未払い賃金などの潜在債務があった場合には、統合後に請求を受け、想定外の出費が発生する可能性があります。そこで残業代の計算など労働法規を正しく理解し、適切な支払いがなされているのかなどを確認します。

以下、財務面で調査する情報の具体例です。

-総人件費や人件費の推移
-報酬水準、各種手当制度
-未払い賃金、その他の未払い報酬や社会保険料
-退職給付、年金制度
-慶弔費などの福利厚生
-出張旅費関係

財務面

非財務面

非財務面では、各社の人事システム・評価制度や組織風土、労使関係の分析など人事上のあらゆる方面から調査・分析を実施します。

たとえばA社では成果重視の思考様式だったのに対し、B社ではプロセス重視型の思考様式だった場合、統合後のモチベーション低下リスクを把握したうえで、新会社における将来の方向性にフィットした思考様式を定める必要があります。

以下、非財務面で調査する情報の具体例です。

-人事制度の仕組み
-人員構成、年齢・勤続年数・雇用区分
-経営幹部、キーパーソン
-組織風土、社員のモチベーション・価値観、業務の進め方
-採用や退職の状況
-労働法制の遵守度合い
-就業規則の運用状況
-労働組合との関係、労働係争の状況

人事デューデリジェンスを実施する際の流れ

人事デューデリジェンスは、対象企業との基本合意契約や守秘義務契約を締結してから、最終条件交渉に移る前のタイミングで実施します。早すぎると社員や取引先へ噂が広まる、遅すぎると別の買い手に先を越されるといった懸念があるため、実施のタイミングは非常に重要です。

進め方としては、まずは社内で専門家や有資格者がいるのか、どの程度の時間を割けられるのかなどのリソースを確認します。そのうえで、自社で実施するか外注するかの判断や、外注する場合の外注先(会計士や弁護士など)の選定をおこないます。

その後は次の流れで作業を進めます。

-調査範囲の設定、課題の仮説を立てる
-資料の開示請求
-開示資料の精査、ヒアリング、現地調査
-中間報告、情報共有
-課題仮説の検証、解決案の策定
-最終報告

まとめ

人事デューデリジェンスはM&Aの可否判断や企業価値の検討に際して不可欠なプロセスです。人事デューデリジェンスを適切に実施しなければ、統合前とのギャップを感じた優秀な人材の流出や、財務面への大きな影響が懸念されます。実施の過程においては、どの範囲で調査するべきか、調査対象者とどのようにコミュニケーションをとるべきかなどの疑問も生じますので、専門家のアドバイスを得るなどして慎重に実施しましょう。

士業・管理部門に特化!専門エージェントにキャリアについてご相談を希望の方はこちら:最速転職HUPRO無料AI転職診断
空き時間にスマホで自分にあった求人を探したい方はこちら:最速転職HUPRO
まずは LINE@ でキャリアや求人について簡単なご相談を希望の方はこちら:LINE@最速転職サポート窓口

この記事を書いたライター

求人関連企業の経理部門に在籍中、社会保険労務士資格を取得。その後、会計事務所や総合病院での労務担当を経験し、現在はフリーランスのライター・校正者として活動中。ジャンルは労働問題を得意とする。
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事