税理士事務所や会計事務所で税理士補助として働いている中で、他の職種、特に経理に転職できるか不安という方もいるでしょう。しかし、税理士補助からの転職が難しいというのは、人手不足の今、全くの古い認識です。今回は、税理士補助から経理に転職できるのかを、おすすめの転職先3選とあわせて解説していきます。
結論から申し上げると、税理士補助をしていた方が経理に転職できる可能性はかなり高いといえます。その要因として最も大きいのが、税理士補助と経理の仕事の親和性が高いことです。
税理士補助の仕事はクライアント企業の経理業務の一部を代行することがメインです。つまり税理士補助の方にとって、それらの業務を企業の経理として担当することの難易度は高くないのです。
そのため、税理士補助の経験者はむしろ経理への転職が歓迎される場合もあります。その理由について、次の章で見ていきましょう。
税理士補助は、会計事務所などの同じ業界内でしか転職できないと思っている方もいるでしょう。しかし実際は、税理士補助の経験は事業会社でも歓迎されます。税理士補助は、税務や会計など特定の分野においては一般的な企業経理よりも経験を積んでいるケースがあるからです。
たとえば、企業経理の場合は、1年に1回自社の決算業務しか経験できません。ところが、税理士補助は、会計事務所に依頼される企業の決算業務を1年に20〜30件ほど経験可能です。決算業務においては、企業経理の数十倍の経験を積んでいるといえます。
そのため、税理士補助から転職するには、まずは自らが積んできた経験を棚卸ししましょう。どのような分野に強いのか、その経験を求めている転職先はどこかを分析し、うまくマッチングができればスムーズな転職が可能です。
採用する側に歓迎される理由についてはお分かりいただけたかと思いますが、転職する側にとってはどんなメリットがあるのでしょうか?
事業会社は、人事制度や福利厚生が整備されている企業が多いです。
個人の税理士事務所は、一般企業と比較するとどうしても、残業量などの調整が難しかったり福利厚生が少ない傾向にあります。そのため、結婚などに伴い安定した生活を求める場合などには、人事制度や福利厚生の享受は大きなメリットです。
税理士補助の年収は300万円程度であることが多く、事務所の経営状況によっては収入が安定しないことも少なくありません。一方で経理職は一般企業に所属するため、比較的業績が安定しており、その分給与も安定している傾向にあります。
また、他職種と同じ給与体系が経理でも採られていることも多いため、上場企業などへの転職に成功すれば、高めの給与水準で働くことも可能です。
税理士補助だと、なかなか税理士のアシスタントというポジションから上がっていくのは難しいです。それに比べ、企業の経理では担当者からリーダー、課長、経理部長、管理部長とキャリアアップが可能で、場合によってはCFOという会社の経営に直接関わるポジションまで昇格することができます。
経理は売上に直接関わる営業職や総合職よりも評価されづらいというイメージがあるかもしれませんが、今は企業におけるバックオフィスの重要性はかなり高まっていますので、そのような心配もなくキャリア形成できるでしょう。
とはいえ税理士補助から企業の経理職の転職は未経験からの転職ということになりますので、内定率が高いわけではありません。そんな中で、どんなことをやっておくと有利に働くのか、紹介していきます。
経理職は先述した通り、税理士補助としての経験を活かせるので、積極的にアピールするべきです。特に面接ではこれまでこのような経験をしてきた、今後はこのような業務に役立つなどと具体的な業務内容を伝えていくことが大切です。書類だけでは業務の中身が分かりづらかったり、そもそも面接官が全ての職務内容を見てくれているとは限りません。
税理士補助とひとえに言ってもその業務レベルは様々ですので、経験・スキルはアピールしていきましょう。
志望動機は、書類選考や面接において合否に関わる重要なものなので、適当に作ってはなりません。
まずは職種への志望動機を考えるにあたり、なぜ経理職として働きたいと考えているのか、自分自身でも理解しておく必要があります。ここは特に正解があるわけではありませんので、「なぜそう思ったか?」を自問し続けることで、自分だけの、明確な志望動機を見つけましょう。また、それを面接時にもアウトプットできるよう準備しておきましょう。
さらに応募先への志望動機も考えておかなくてはなりません。同じ経理職の求人が沢山ある中でなぜその企業を選んだのかは、書類選考でも面接でもほぼ必ず選考基準に入っています。志望動機の完成度が低かったり他の企業でも通用するような内容だと、志望度が低いもしくはもし入社してもすぐ辞めてしまうかもしれないという懸念に繋がってしまうので注意が必要です。
経験のアピールも志望動機も、税理士補助からの経理職への転職活動において非常に大切なことなのですが、実際なかなかご自身だけで行うのは大変だと思います。特に税理士補助という職種は半年近くある繁忙期だと、より転職活動に割ける時間は限られているでしょう。そんな中でおすすめなのが転職エージェントの活用です。アピールポイントの整理や志望動機の明確化も担当エージェントのサポートを借りながら、進めることができます。また、応募する求人を探したり面接の日程調整をするのも、エージェントが対応するので、必要最低限の時間を使うだけで転職を成功させることができます。
ヒュープロは面接対策や書類添削の手厚さ、士業特化だからこその企業情報や市場感の知識が量・質ともに高い満足度を頂いています。
経理職は決算期が最も忙しい時期に該当します。よってこの決算期の前、もしくは終わった後が転職にオススメの時期といえます。
決算期の前は、業務量が増えることを見越して、求人を出す企業が増えます。この時期は、すぐに業務を割り振れる即戦力を求める求人が多いですが、税理士補助の経験があれば応募可能な求人は十分にあるケースが多いので、この時期に転職するのがオススメです。
一方で税理士補助の経験があるとはいえ、少しスキルに自信がないという方は、決算期後に動くのが良いでしょう。これは決算期が終わり、経理職の所属部門に余裕ができるタイミングで、経験の浅い人や未経験者向けの求人が増えるからです。全くの業務未経験者よりは十分有利に立てる上、応募できる求人数もある程度多いこの時期が、もう一つのオススメのタイミングと言えるのです。
日本では3月決算の企業が多く、その前後2か月程度も繁忙期と言われていますので、12月や6月が決算期に該当するタイミングとなります。ただし、3月決算の企業は全体の18%程度とされているので、応募を検討する企業の決算月を把握した上で逆算するようにしましょう。
経理で働く魅力は多くあるものの、わざわざ税理士補助としてのキャリアを諦めることなく、他の会計事務所・税理士法人に転職するのも決して悪い選択肢ではありません。
同じ業界で転職するメリットとしては、以下の点が挙げられます。
・転職の交渉によって待遇を上げられる
・会計事務所の後継者になれる可能性がある
個人の税理士事務所ではどうしても人事制度や福利厚生まで行き届かないケースがあります。また、未経験の税理士補助として就職した時点では、低賃金のアルバイト契約だった方も多いでしょう。
最初の税理士事務所で十分な経験を積んで転職する場合には、大手や中堅の会計事務所を目指すなど、転職によって給与や福利厚生などの待遇を上げることが可能です。実際に転職まで踏み切らなくとも、現在の事務所に転職の可能性を示唆すれば、引き止めのために待遇が上がるかもしれません。
また、個人の税理士事務所では後継者問題に悩まされているため、経営者に気に入られれば、後継者や重要なポジションに就ける可能性もあります。そのような話が出た場合、税理士試験合格を再度目指せばよいでしょう。
リーマンショックの頃、税理士業界での転職は厳しいといわれていましたが、この10年で状況は大きく変化しました。2020年現在、税理士補助の転職が会計事務所で歓迎される理由は、主には次の通りです。
2008年のリーマンショック時には、倒産する企業が増えた影響で税理士業界の先行きは暗く、難関の税理士試験に合格してもパフォーマンスが悪いという風評が定着しました。その結果、税理士試験の受験者数・合格者数が年々ともに減少し、税理士業界では人手不足に悩まされています。
税理士の平均年齢は60代といわれており、日本税理士会連合会「データで見る税理士のリアル。」によれば、60〜80代の税理士が全体の半分(53.8%)を占めます。そのため、後継者問題で悩んでいる会計事務所は多いです。
税理士を目指す人が減ったため、税理士補助になろうとする人も減っています。さらに、人手不足のなか、苦労して税理士や試験合格を目指す税理士補助を雇っても、独立すれば辞めてしまいます。
そのため、税理士補助業務に専任し税理士試験を目指していない人は、独立の可能性がないため重宝される傾向があります。実務に精通している優秀な人材であれば、人手がない中で教育する手間も省けるため、なお高評価です。役職や年収がアップすることも期待できるでしょう。
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最後に会計事務所での税理士補助からの転職に成功した事例をいくつか紹介していきます。
中小規模の税理士法人で4年ほど勤務されていた20代後半のHさんは、これまでのご経験を活かし、事業会社の内部から経営陣を支える経理職として働きていきたいという点、および勤務先の雰囲気が合わないという点でご転職を考えられていました。
弊社エージェントからは、おもに二点のアドバイスをさせて頂きました。
一つは長期的なキャリアパスや年収の上がり幅を面談時にイメージができる求人に応募していくことです。一般企業の経理職でのご経験がない場合は、入社後のミスマッチを防ぐためにもこのような点は重要です。
そして二つ目は雰囲気が良いという抽象的な条件を、20~30代の方が多く、上司の方が穏やかで面接で質問のしやすい雰囲気があるという、具体的な条件にしてご転職活動ができたことです。抽象的な希望条件で求人を探してしまうと何を境目にして求人に応募するかを判断しにくくなってしまいますので、なるべく具体的にすることが転職成功の秘訣と言えるでしょう。
結果この方はご希望の経理職として、ミスマッチのない上場企業への転職を成功させました。
経理職で4年ほど勤めたのち、9年ほど会計事務所で税理士補助をしていたIさんはリモートワークができる環境、かつ年収アップも実現できる転職先を探していました。
この方は弊社の担当エージェントとの面談時に、希望条件の明確化ができたことが転職成功の大きな要因といえます。リモートワークは週何回したいのか、年収の上がり幅はいくらから検討できるのか、といったところまで条件を落とし込むことで、よりご自身に合った求人が見つけやすくなりました。
また、面接があまり得意ではないとのことだったので、面接対策も各企業・各面接ごとに実施し、内定率を高めることに成功したのも、要因の一つといえます。
結果、リモートワークが希望通りの頻度で使用でき、年収も上げられる企業への転職を果たしました。
もちろん今回ご紹介した方以外にも、多くのご登録者の転職をご支援させて頂いておりますので、ご興味のある方はぜひお気軽にご相談ください!
税理士補助からの転職は、リーマンショックの時期は厳しいといわれていましたが、現在では事情は大きく変化しました。
税理士業界が人手不足な現在、税理士資格を持っていなくとも、税理士補助としての経験を活かせる転職先は、企業経理やクライアント企業、会計事務所など多々あります。そのため、古い認識をアップデートし、積極的に転職に取り組むことが必要です。
まずは、自らの税理士補助としての経験を棚卸しし、自らの強みと転職先のニーズを分析することが必要です。どうしてよいかわからない場合には、士業に精通した専門エージェントのアドバイスを聞くなど、転職の専門家への相談で新たな選択肢が開けることもあります。まずは、税理士補助にはどのような求人があるかの確認など、手軽にできる転職への準備から始めてみてはいかがでしょうか。