経理の仕事は転職市場で非常に人気が高い一方、その専門性の高さやハードな業務のために大変という噂もよく耳にするはずです。
経理の抱える大変そうなイメージから転職やキャリアアップでのチャレンジを躊躇する人も少なくないでしょう。この記事では経理の大変な面と経理への転職を成功させるポイントについて解説します。
まずは経理がどんな仕事をしているのかを解説します。経理は簡単に言ってしまうと、会社のお金全般の管理をすること。もう少し具体的に表すと、入出金を行いその記録を付けること、そして税金の計算をしたり決算書の作成などを行うことです。その企業の「カネ」を管理する会社経営にとっては欠かせない役割を果たしています。
経理の仕事は大きく分けると、毎日行う日次業務、毎月行う月次業務、そして年に1回行う年次業務に分けられます。
それぞれには以下のような業務が該当します。
日次業務 | 入出金管理/仕訳/経費精算など |
月次業務 | 月次決算/在庫管理(棚卸し)/給与支払いなど |
年次業務 | 年次決算/年末調整/確定申告/監査対応など |
より具体的な経理の仕事内容につきましては、以下の記事をご覧ください。
このように経理の仕事は1日ごとのスケジュール、1ヶ月単位の業務、1年度ごとの流れも、すべてある程度ルーティン化されているという特徴があります。
この点を捉えて、「経理の仕事は予定がスケジューリングしやすく、ワークライフバランスを重視したい人にはおすすめ」と言う人も少なくはありませんが、実際は大変なこともあります。
それでは、以下で経理の仕事が「きつい」と感じるポイントを見ていきましょう。
経理の仕事の「きつさ」を最も感じやすいのが、その業務量の多さでしょう。
特に中小企業ではバックオフィスに割ける人員が限られているため、経理を一人でやらなければならなかったリ、法務や労務などといった、経理以外のバックオフィス業務も任される可能性があるため、忙しくなりやすいです。
大企業の場合は分業制となっており担当する業務の幅はそこまで広くないものの、売上金額が多いほどお金の流れも増えるため、業務の量自体は多いため、結局は忙しい傾向にあります。
このように基本的に業務量が多い経理ですが、企業の決算書を作る時期になるとさらに忙しくなります。決算月は企業によりますが、もっとも一般的な3月決算の場合は、4~6月が最も忙しい時期となります。
決算期は、どうしても必要書類などをすべて期日までに完璧に仕上げる必要があるため、各資料にミスや抜け漏れが無いかを細かく確認しなくてはなりません。
そのため、企業によってバラつきはあるものの、ほとんどの会社で決算時期の経理はハードワークを強いられます。毎日の残業は当たり前、休日出勤も当然覚悟のしなければいけません。この繁忙期の働き方が「きつい」と感じる方は多いようです。
経理はその会社の売上や費用の数字を扱っているため、ちょっとしたミスが企業の損失や未払いにつながってしまう、責任重大な仕事です。
会計ソフトに打ち込めば、計算は自動的におこなってくれますが、そもそも入力ミスがあったり、提出された証憑の数字が正しいかどうかなど、様々なことに気を配らねばいけません。一般的なイメージと異なり、経理は決して単純作業を繰り返すだけではないため、ミスをしないべく高い集中力で仕事をしなければならないのです。
営業など他の部署でも会社の損益に関わっていることは変わりないものの、経理は少しのミスでそれを大きく左右しかねないため、実際にミスをしてしまったことがある方を中心に「きつい」と思ってしまうようです。
経理の仕事は会計に関する高度な専門知識を要します。会社に入社してからゆっくりと勉強をさせてくれる企業も少なくはありませんが、経理としての専門性を有する即戦力的な人材を求めているからです。
経理の仕事は他の事務職と異なり、このようなベースとなるべき知識を備えていなければ遂行することができません。一般事務であれば未経験からでも仕事に慣れることができますが、経理事務の仕事に就くのであれば、例えば日商簿記2級の資格を取得するぐらいは当たり前に求められるでしょう。
また、初めにご紹介したように経理の仕事は実施する頻度に応じて大きく分かれていますが、基本的には頻度が少ない業務ほどその難易度は難しくなっています。中でも年次業務に該当する年次決算や監査対応に関してはかなりの会計知識が求められます。
それなのに年に1回しか経験できるタイミングが無いため、スキルを習得するチャンスはかなり少なくなっています。このようなスキルアップの難しさも、経理の仕事が「きつい」と感じやすい一因のようです。
経理は一日中デスクワークで計算をしている、というイメージの方も多いのではないでしょうか?
しかし実際は、経理はコミュニケーション能力が求められる仕事なのです。
たとえば、経費精算の不備を解消元するために提出元に依頼したり、残業代の不正があれば内容の確認をおこなったり、請求書の数字についてエラーがあれば業者に問い合わせをしたりなど、社内の他部署や外部の取引先と関わる機会は多く発生します。
しかし、他部署の人から見れば、面倒な処理をしたのに不備を指摘され、さらに再提出など、煩雑なこととなるとあからさまに不快感を出されることも珍しくありません。さらに経費の個人消費など不正会計をおこなっているような人であれば、社内でも高圧的に出てくる人もいます。
こうしたやりとりをスムーズにおこなうためには高いコミュニケーション能力が求められ、経理の大変さを実感する場面と言えるでしょう。
近年、会計システムや経理ソフトが広く使われるようになったため、経理にかかる業務負担は低減されてきています。
ただ小規模な企業をはじめとして、まだまだそのようなシステム導入ができず紙での管理がメイン、ということも少なくないでしょう。
その場合、どこにどの取引が明記されているのかというのを整理したり、膨大な量の文書を保管することに時間を割く必要があります。それだけでなく、過去の取引を調べる際や、社内で承認を取る際などにも工数や時間を掛けなくてはならないため、「きつい」仕事を発生させる要因となっているといえます。
先ほどご紹介したコミュニケーションが必要な場面は主に月次や年次の決算のタイミングであり、基本的には経理部内で業務を進めることになります。そのため、他部署との交流をすることが少なく、人間関係を広げにくい傾向にあります。バックオフィスは、オフィス内でも営業部と離れた場所や場合によっては別の階にいるということもあるため、より交流を深めにくいのです。
また、他の部署へは申請ミスや漏れの指摘をするためにコミュニケーションすることが多いため、業務外で関係を持ちづらいと感じる方もいらっしゃるようです。
直接的に仕事に関わる要因ではないものの、職場の環境に馴染みにくいのが「きつい」と感じることもあるようです。
上記のように、様々な理由で「きつい」と感じやすい経理ですが、その割に評価されないという不満の声もよく聞きます。
その要因として挙げられるのが、売上を作る営業部などに比べ、経理職に対する評価制度が整っていない傾向にあることです。具体的な金額や件数で成果が見えやすい営業部と違い、やってきたことの評価をしづらく、給与が大きく上がりにくい仕事のため、大変な仕事をやっているのに満足な評価をもらえず「きつい」と感じやすいのかもしれません。
ご紹介したように、経理の仕事は企業の心身共に負担が大きい大変な仕事です。しかし、就職・転職市場を見たとき、経理の仕事は人気の職種となっています。なぜここまで経理の仕事は人気があるのでしょうか?経理の仕事にあるメリットとは何でしょうか?
経理の仕事は大変です。ただ、だからこそ仕事をこなせたときの達成感や充実感は他の業務では感じられないものです。
一日でこなせそうもないほどの請求書をミスなく処理できたときの達成感、月末に数字に漏れがなかったときの満足感など、充実感を抱けるタイミングはいろいろです。常にハードな仕事に追われているからこそ、常に仕事上の達成感を感じるチャンスがあると言えるでしょう。
経理の仕事で身に付けたスキルは、どこの会社の経理でも通用する汎用性が高いものです。営業や企画担当とは異なり、経理の日々の業務、一ヶ月単位の業務、年単位の業務は、どの会社でもほとんど変わりません。つまり、一度経理の流れを把握して仕事ができる状態になってしまえば、いつでも転職によるキャリアアップを目指せるのです。
経理の仕事は、会社の経営方針の根本を支えるものです。経理や財務などの会計担当部署が作成した予算に応じて会社は企業活動を行うので、いわば、経理は会社の財布を握っている部署とも表現できるでしょう。
したがって、長年経理で経験を積むことで、会社の企業活動のスケール感や収支具合を詳細に把握できます。組織の経済状況を把握すれば、やがては経営全体のバランス感覚を身につけることもできるのです。
経理はきついと感じる仕事も多いものの、向いている人であればそこまで懸念に感じないでしょう。ここではどんな人が経理に向いているのか、見ていきましょう。
経理は会社のお金の流れを見ることになるので、当然毎日数字と顔を見合わせる日々が続きます。数字の苦手な人が経理職を転職先の選択肢に入れることはほとんど無いと思うのですが、もしその目安が分からないという人がいれば、一度簿記の勉強をして確かめるのも良いかもしれません。
経理においては、日次業務は毎日行うわけですが、基本的に同じ業務をやり続ける形になります。また、様々な締めが発生するため、それまでにきっちり業務を終わらせる必要があります。未経験の場合は、このような業務からやり始めることが一般的ですので、漏れなく滞りなく毎日の業務をこなすことに適性があれば向いているといえます。
経理の仕事でミスは許されません。大きい会社であればあるほど、自分のミスが大きく影響を与えることがあります。場合によっては一円を合わせるために、原因を探すようなこともあります。決算業務に関わるようになれば、自分が作成した財務諸表が取引先や株主の意思決定に影響を及ぼすことになりますので、どの場面においてもミスはできないのです。
営業などのように何百万の売上をあげるといったような、目立つ仕事ではなく地道な仕事が多いですが、その一つ一つに責任を持って取り組める人が経理に向いている人と言えます。
ここまで、経理の仕事がきついと感じる理由や具体的な業務を見ていきましたが、ここでこれらを解消するための方法について解説します。
まずは、所属している経理部の業務をきつくないものに出来る要素は無いか、考えてみましょう。
具体的な業務効率化や業務改善の施策としては下記のようなものが挙げられます。
これらの中で適切な施策を実行し、改善できれば、自分が働きやすくなるだけでなく、社内からの評価を上げることもできるでしょう。
経理という業務の特性上、どこで働いたとしても決算期が多忙であることや、業務量が多いことは変わりありません。
しかし、その程度は企業による部分もあります。ですので、それまでの経験を活かして他の企業の経理に転職することで、懸念点だった部分を解消するというのは賢明な判断と言えます。
加えて、「年収を上げたい」「リモートワークをしたい」「通勤時間を短くしたい」などの希望も同時に叶えられる可能性があるため、転職のメリットは大きいと言えます。
士業・管理部門特化の転職エージェントである当社ヒュープロでは、ご登録者それぞれの幅広いご希望に沿った求人をご紹介しております。転職によって、よりマッチした職場で働きたいという方は是非当社のキャリアアドバイザーにご相談ください。
専門知識の習得や他の社員とのコミュニケーションなどについては、程度に関わらず苦手に感じる人は一定数いらっしゃるでしょう。そういう人のように経理の仕事をやってみて全く合わないと感じる場合は、無理に経理職にこだわる必要はありません。
経理職は専門性が高く、経験を活かせる転職先が限られていると思われがちですが、経理経験者は実際、様々な職場でニーズがあります。特に財務諸表の分析能力が活かせる、税理士事務所や会計事務所、FAS系コンサルティングファーム、金融機関などには転職しやすいでしょう。
実際に経理として働きながら「きつい」と感じた方がどのように解消したのか、2つの事例をご紹介します。
新卒で経理部に配属されたAさんは、日次業務から担当していました。簿記2級は持っていたものの実際に仕事をしたことがなかったため、ミスや分からないことが多かったようですが、経理職の先輩は一人だけ。しかもその先輩も業務に追われまめに質問をできるような状況では無かったとのことでした。
そんな中でなかなか仕事を覚えられず怒られることもあったAさんは、当社ヒュープロのエージェントに相談し、教育環境の整った中規模の企業への転職を成功されました。その企業では実務担当者とは別に教育メンターを設置していたため、Aさんも安心して働くことができていると伺っています。
中小企業の経理として5年ほど勤務されていたBさんは、同じ経理部の数名以外と業務上以外の会話をすることがあまりなく、また部署内の人間関係もあまりよくなかったため、仕事に行くのが「きつい」と感じていました。
大企業やオープン&フラットな企業でなければ経理として人間関係を広げにくいと感じたBさんは、経理の経験を活かせる他の職種への転職を検討されていました。そんなBさんに対し、当社ヒュープロから経理経験者を優遇し、従業員が30名以上の会計事務所の求人をご紹介しました。会計事務所は基本的に全ての職員が会計にまつわる仕事をしているため、幅広い職員とコミュニケーションが取れるのです。
Bさんはその中の1社への転職を無事成功され、今でも良い雰囲気の環境で働くことができていると伺っています。
経理は大変な仕事です。しかし、同時に会社全体を支える責任のある業務でもあります。手に入れたスキルや資格は専門性が高いものと評価されるので、転職市場やキャリアアップを目指す際には有用です。
こうした条件を自分で情報収集するのは難しいでしょう。求人情報や面接時に、採用担当者がすべてを正直に話してくれるとは限らないからです。そこで、転職の際は求人元企業の情報収集がしやすい転職エージェントなどを活用しましょう。転職エージェントなどを活用すれば、見かけの求人情報だけでなく、企業の内情もチェックして、求職者に適した求人情報に出会うことができます。
経理という大変な仕事にチャレンジするのは素晴らしいことです。せっかく挑戦するのですから、ぜひ素晴らしい環境でご自身の専門性を高めましょう!