「不動産を証券化する」という言葉を耳にする機会が増えましたが、具体的なイメージがつかみにくいと感じていらっしゃる方は多いのではないでしょうか?確定拠出年金などでも、不動産に対する投資は重要になってきていますので、基本的な知識は持っておきたいですよね。今回は、不動産の証券化について解説していきます。
そもそも不動産の証券化とは、一般的に大きな規模となりがちな不動産の売買等の取引を、有価証券という小口に分けて、多くの投資家が手持ちの資金内で購入できるようにすることをいいます。
特に、数十億円もするような高額の不動産の場合、所有者が資金繰り等のために売りたいと思った時に、すぐに買い手が見つかるとは限りません。そうすると、どうしても安く売り叩くことになり、売り主としては非常に困ってしまいます。特に、バブル崩壊後に金融機関が貸し渋りをするようになったため、運転資金の絶えた企業が泣く泣く一等地の本社ビルや土地を廉価で手放すような案件が増えました。
それを受けて増えてきたのが、高額で流動性が低い不動産を、証券化して有効に活用しようという動きです。仕組みとしては、まず本来の持ち主がSPV(Special Purpose Vehicle:特別目的事業体)と呼ばれる事業体を設立し、それに不動産を売却します。SPVとは、不動産の証券化だけを目的とした事業体で、SPC(Special Purpose Company:特別目的会社)の形態をとっていることが多いです。
さらにSPVが投資家に出資を募り、その額に応じて当該不動産から得られた家賃を配分します。ちなみに、年金等の投資対象として人気のREIT(Real Estate Investment Trust:不動産投資信託)も、不動産投資をするための資金を集め、その収益を配分するという性格から、不動産の証券化のスキームをとっていると言えます。私たちも知らず知らずのうちに、不動産の証券化による恩恵を受けているのですね。
では、改めて証券化のメリットを解説します。まず、元々の不動産所有者(オリジネーターといいます)にとっては、それを売却することで資金を得ることができます。また、投資家にとっても、これまでは手が届かなかった優良かつ高額の物件に対しても、有価証券として小口に分かれたことで、投資をすることが可能になります。
そして一件面倒なようですが、SPVを設立することにもメリットがあります。まず、オリジネーターにとってみると、SPVに不動産を売却することで、不動産運用のリスクから逃れることができます。つまり、たとえ当該不動産の運用が失敗したとしても、あくまでそのダメージはSPVにのみおよび、オリジネーターの財務諸表に与える悪印象は最低限に抑えられるのです。投資家の観点からしても、もしオリジネーターの会社が倒産したとしても、投資対象である不動産は、SPVがオリジネーターから分離していることで守られます。
また、近年のトレンドとして、過剰な資産の保有を避けてリスクを減らす経営が、どの企業にも求められています(資産のオフバランス化といいます)。保有不動産を証券化することにより、ある程度の権利をコントロールできる状態のまま、財務諸表からオフバランスすることができます。
つまり、物件の一部だけを売却したり、将来的にオリジネーターが再び買い戻したりといったことも、証券化によって容易くできるようになります。資金を調達しつつ、物件もある程度コントロールするという理想をかなえられる手法が、不動産の証券化なのです。
一方で、デメリットも存在します。それは何と言っても、仕組みの複雑さとそれに伴うコストの増加です。つまり、証券化を実行するにはそれなりの知識を持った専門家に仕事を依頼することになるため、彼らに対する報酬を用意する必要があります。具体的には、実際のスキームを組む費用(アレンジメントフィー)を証券会社に支払ったり、SPVを設立するため司法書士に報酬を出したり、税務や記帳の依頼を会計事務所に委託したりします。
また、どんな不動産でも証券化できるとは決して言えません。というのも、投資家がその利回りに魅力を感じる不動産でなければ、資金を集めることが困難だからです。従って、証券化できる不動産というのは、立地などによる価値が高いものに絞られてしまいます。
先ほども触れたREITが、我々のような一般の投資家でも購入できる、不動産を扱った証券になります。投資信託のなかに、REITが組み込まれているものも多いですし、個別のREIT銘柄を購入することもできます。
まずはそれぞれの証券会社で、どのような商品が取り扱われているのか確認してみましょう。 REITはあくまで有価証券ですので、その時価が上昇するのを待って買った時より高く売って、その差額で利益を獲得したり、また分配金を家賃収入のように定期的に得たりすることができます。
今回は、不動産の証券化について解説してきました。魅力的な物件に小口から投資できるというのは、非常に嬉しいことですね。これからもREIT銘柄なども充実していくと思われますので是非チェックしていきましょう。
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