現在税理士として働いている方や、これから税理士を目指される方で、フリーランスの税理士として事務所に所属せずに自由に働きたいと希望している方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、フリーランス税理士として働くメリットとデメリット、フリーランス税理士の業務内容などについて解説します。
一般的にフリーランス税理士は、従業員を雇わず、税理士事務所などクライアント向けの事業所を持っていない開業税理士のことを指し、「一人税理士」と呼ばれることもあります。
税理士には以下の3種類がありますが、フリーランス税理士はこのうちの③に分類されます。
①所属税理士 | 独立開業はしておらず、個人事務所や税理士法人に所属している。 |
②社員税理士 | 税理士法人の社員として登録されており、経営にも関わることがあるが独立開業はしていない。 |
③開業税理士 | 個人事務所にも税理士法人にも属しておらず、納税者と直接契約を行う。自身の事務所を開設することも可能。 |
企業や事務所との雇用関係が無いため、就業時間や仕事内容、報酬などの大部分を自分自身で決めることができます。かつて、税理士は会計事務所で働くという固定観念が強かったですが、様々な働き方の認知度が高まっている近年において、フリーランスは注目されつつある働き方です。
フリーランス税理士といえど、業務内容は会計事務所で働く税理士と共通しているものも多いです。一方で、フリーランスならではの強みを活かすことができる部分もあります。
フリーランス税理士は、大きな企業を顧問先にするよりも、ベンチャー企業や個人事業主などのスモールビジネスを対象に、税務サポートやコンサルティングを行っているケースが多いです。具体的には、確定申告や税務処理などの代行、給与計算、節税や税務についてのアドバイスなどになります。
税理士のコア業務として記帳代行が挙げられますが、記帳代行は量で勝負できる税理士法人との価格競争になりがちです。さらに、クラウド会計を導入すれば記帳代行は自動で可能なため、今後は縮小していくことが予想されます。
ただし、フリーランス税理士は固定費や自分以外への給与の支払いが不要なため、会計事務所よりも安い価格でサービス提供が可能です。なので、会計システムの導入に懸念を感じている中小企業などから一定数の需要があります。
また、法人や個人事業主以外の一般個人に対しては相続関連の相談業務が多い傾向があります。近年だと株式投資やFX(外貨為替取引)を行っている個人に対し、年末調整に向けた確定申告の代行や節税関連のコンサルティングも需要があるようです。
以前は、フリーランス税理士として生計を立てるために、税理士事務所に所属してコネクションを作ったり、税理士会に参加する必要がありましたが、現在では、SNSなどを効果的に活用すればインターネット上で営業活動を行うことも可能です。そのような営業活動では、税務業務を提供するクライアントよりも、ブログの執筆依頼やセミナーの登壇依頼をしてくる企業や個人を獲得できるケースが多いです。
【参考】
士業のSEO対策 - ホームページで集客する方法│SEOホームページ
フリーランス税理士として働くことにはいくつかのメリットがあります。以下で1つずつ見ていきましょう。
フリーランスの税理士の最大の特徴として、就業時間や働く環境を自由に調整できることがあります。
例えば、長時間働きたくなければ受ける仕事量を減らすなど、自分で労働時間の調節も可能です。平日休日関係なく、自分のプライベートに合わせて仕事のスケジュールを組むことができるのは、フリーランスになる1番のメリットと言えるかもしれません。
また、場所を選ばないのもフリーランスのメリットの1つです。
先ほどご紹介したセミナー登壇など、ピンポイントでどこかに赴く必要はあるかも知れませんが、それ以外の業務はほとんどがパソコン一つでできる仕事です。そのため、育児や介護で自宅を離れられない方や、地方でゆっくりと暮らしながら仕事をしたい方でも希望を叶えられます。極論、パソコンさえあれば旅行先からでも仕事をすることができるため、「とにかく自由に働きたい」という方にはオススメです。
とはいえ、様々な場所で働くということは情報漏洩などのリスクも高まる訳ですから、インターネット環境などのデータ管理にはより一層の注意が必要です。
税理士事務所や企業などの組織に属している場合、基本的には業務内容や顧問先を選ぶことはできません。苦手な業務やコミュニケーションが合わないと感じる顧問先でも、基本的に断ることは難しいです。なぜなら、勤務税理士は所属する会社の経営方針を決めなくてはなりませんし、会計事務所の代表として開業したとしても、その事務所の存続のために収益を最大化する必要があるからです。
一方でフリーランス税理士の場合は、自分が得意な分野の業務を優先的に受ける、気の乗らない顧問先の仕事は最初から受けないなど、仕事内容や顧問先の取捨選択ができます。
また、ブログの執筆やセミナー講演、YouTube配信など会計事務所や税理士法人では特化することが難しい特殊な戦略を取ることができるのも、近年のトレンドに沿ったメリットと言えるでしょう。
フリーランスなど独立という働き方を選ぶ税理士は、一人で自由に働きたいという思いの中に余計な人間関係に悩みたくない、という感情を抱いている方も少なくありません。
もちろんクライアントあっての仕事なので、他人とのコミュニケーションが全く必要なくなるというわけではないですが、社内の人間関係から解放されるのは、メリットだと感じる方も多いのではないでしょうか?
上記のようなメリットがある一方で、同様に注意しなければならないデメリットも存在します。
フリーランス税理士に限らず自営業全般に対して言えることですが、自ら営業して仕事を取ってこない限り仕事はありません。
事務所や税理法人に所属している場合、自身で営業をしなくても仕事は分け与えられるのが一般的ですが、フリーランス税理士は自ら顧客を獲得しない限りは誰も仕事を取ってきてくれません。そのため、組織に所属する税理士に比べてフリーランス税理士は収入が不安定になってしまうリスクが高いです。つまり、仕事を獲得できなければその月の収益がゼロということもあり得るわけです。そうならないためにも、いち早く顧問契約などの継続的な収入源を確保することが重要です。
しかし、逆を言えば勤務税理士よりも柔軟な働き方ができるため、通常よりも高収入を狙うことも可能ということです。
先ほどの営業力もそうですが、フリーランスの場合は業務管理や顧客管理なども全て自身で行うため、業務を効率化するためにITスキルを身につける必要があります。また、獲得した案件や抱えている業務を適切に管理するタスク管理能力が非常に重要になります。フリーランスとは言え、クライアントワークが中心になる可能性が高いため、クライアントとの打ち合わせや書類作成の期日など、スケジュール管理は必須です。
その他、顧客を獲得するために、YouTubeなどのSNSでの配信やホームページを作成して情報発信を行う場合、インターネット周りの知識や動画編集などのスキルも必要となります。
このように、純粋な税務業務だけでなく、その周辺業務の部分で多様なスキルが必要になります。
これをデメリットと感じるかどうかは人それぞれですが、純粋に税理士としての経験を積んでスキルを高めたいという方にとっては、税務業務以外の業務で多くの時間を取られることになるわけですから、ある意味デメリットと言えるかもしれません。
これは想像しやすいかもしれませんが、フリーランスは自分一人で全てが完結するため、全責任が自身にのしかかるため、1つのミスがダイレクトに大きな損害につながる可能性もあります。また、個人で仕事を請け負うため、信用問題に発展すると仕事を失う可能性も大いにあり得ます。そのため、1つ1つの仕事に対してのリスクマネジメントをより一層徹底する必要があり、ある意味で体力の消耗が大きいと言えます。
営業力に通ずる部分でもありますが、フリーランス税理士が仕事を獲得するには、他との差別化や独自性が重要です。もはやフリーランスに限ったことではないかもしれませんが、既存顧客との強いコネクションなどがないフリーランスの税理士は、新規顧客の獲得が必須です。そうなった場合、実績も信頼性もないフリーランスの税理士が新規顧客を獲得するには、他との差別化や強みとなる独自性がないと競争に打ち勝つことはできません。自身の強みは何か、他と差別化できるポイントはどこかをよく考えてから独立を検討してみてください。
前述で述べた内容に重複する部分もありますが、改めてフリーランス税理士に必要なスキルをまとめておきます。
先ほどお伝えした差別化や独自性を出す際に最も効果的なポイントが、高い専門性です。
幅広く税務業務を請け負えることはもちろん強みになり得ますが、何か1つのことに特化していることで、独自性を出すことができます。例えば、英語の勉強をしたいと思ったときに、国語や数学などの様々な科目を教えている人と、英語に特化して英語のことなら何でも知っているという人では、どちらの授業を受けたいと思いますか?多くの人が後者を選択するのではないでしょうか。
このように、何か1つの分野の専門性を尖らせることで、他との差別化を図りやすくなります。また、フリーランスの税理士は個人で仕事を引き受けるため、顧問契約などをする場合は1人で幅広い分野に関して高い専門性を持っている必要があります。
フリーランス税理士が活躍するのに最も必要と言えるのが、営業力です。税理士は市場価値が高いものの、令和6年4月時点で81,073名いることからも分かる通り、ライバルはたくさんいるのです。その中で、自分の強みが何かを理解した上でクライアントにアピールをしていかなければ、仕事が増えることはありません。
歴史が長い税理士事務所に勤務していた場合などでは、古くから依頼してくれている顧問先が多く、新規開拓などの営業活動をする必要がないケースがあります。Big4税理士法人などの知名度が高い事務所に在籍していた場合も、自然に案件が増えていくので、同様にあまり営業活動をすることは無いでしょう。
そういった方は、営業力の有無は未知数ともいえるので、営業を行っている会計事務所や一般企業の営業職などでスキルを磨いてからフリーランス税理士になるという手段もあります。
コミュニケーション能力も同様です。せっかく仕事を獲得しても、コミュニケーション能力が乏しく、その1回限りで終わらせてしまってはもったいないですよね?取ってきた仕事をスポットで終わらせるのか、その後も継続的に依頼してもらえるのかは、顧客との関係値をいかに築けるかにかかっています。
デメリットの部分でも挙げたように、フリーランス税理士はタスク管理を自ら行う必要があります。請け負っているタスク内容やそれぞれの進捗を把握するだけでなく、スケジュールに遅れが出ていないか、目標の売上に達するほどの案件を獲得できているのかまで、網羅的に把握しておかなければなりません。
社会人として、自らのタスク管理に自信があったり、部下のマネジメントを経験していた方であれば、フリーランス税理士としてもそのスキルが活かせるでしょう。
フリーランス税理士は会社を持っているわけでは無いので社長ではありませんが、自身の生計を立てるために経営戦略を策定します。目標に対して具体的にどのような業務をどのくらい行っていくか、という目標を年単位や月単位で作れる方はそこから逆算して営業をかけていけるので、活躍が期待できます。
また、クライアントから受け取る報酬についても、競合の金額や利益率などを踏まえて、適切な価格設定ができるかどうかも案件数に直結する要素となります。
ここまでフリーランス税理士のメリットとデメリットや、求められるスキルについてご説明しましたが、実際に独立してフリーランスになる際に失敗しないためのポイントをお伝えします。
まず重要なのが、価格で競わないことです。フリーランス税理士は他の税理士事務所や会計事務所、税理士法人と違って、報酬がそのまま自身の給与になるため、自身で価格設定を行うことができます。そのため、できるだけ仕事を取ろうとして価格を安易に下げてしまうと、1人で全ての業務を行わないといけないためやることは多いのに収入は少ないというような状態に陥ってしまい、結果的に損をしてしまうことになりかねません。
出来るだけ価格以外の部分で他との差別化を図れるように、自身の強みを磨いて付加価値を提供できるように意識しましょう。
1人で全てを管理するということは、途中でモチベーションが下がってしまったり、だらけてしまう可能性が十分にあり得るということです。自分は大丈夫と思っていても、1人でモチベーションを保ち続けることは簡単なことではありません。また、ただその日の収入を生むことだけを考えていても長続きはせず、「明日、また明日」と先延ばしになってしまうことも考えられます。
そのため、営業目標を立てて、その目標に向けて「何をいつまでにするのか」を明確にして行動をすることで、営業活動をマンネリ化させることなくしっかりと収益を確保できるようになります。特に、税理士事務所や税理士法人から独立したばかりで新規営業に馴染みのない方にとっては、独立して失敗しないためにも営業目標の設定は必須と言えるかもしれません。
これは大前提になりますが、やはり十分な税理士経験がない状態で独立をしても上手くいく可能性は限りなく低いです。税理士になって1~2年程度で独立をしても、営業の前に本分である税務業務の専門性も不十分な可能性が高く、収益を継続的に生み続けることは難しいでしょう。そのため、将来的にフリーランスで働きたいと考えている方は、今よりも専門性を高められる事務所や、税務業務以外の幅広い業務経験を積むことができる会計事務所などへ転職をして、十分な経験を積んだ上で独立を検討することがオススメです。
「独立と転職はどっちが良いのか」という疑問については、結論からお伝えすると目的次第になります。
メリットの中でお伝えしたように、1人で自由に働きたいという方や、営業経験もあり自分の力を試したいという方にとっては独立がオススメと言えます。また、フリーランスではありませんが、自身の事務所を構えて年収の上限を上げたいという方にも独立がオススメです。
一方で、将来的に独立はしたいがもう少し実務経験が必要な方や、純粋な税理士としてのスキルアップを目指したい方には転職を強くオススメします。また、リモートワークなどのワークライフバランスを重視した働き方をしたいという方でも、わざわざ独立をしなくても転職によって実現できる可能性があるため、まずは転職から考えてみるのが良いでしょう。
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フリーランス税理士として働く場合、仕事や顧問先、働き方などを自由に選べるという大きなメリットがあります。自由がある分、デメリットとして挙げられるのは、営業による仕事獲得や、タスク管理が必要になる点です。
昔は税理士の営業活動にはコネクションが必要でしたが、現在ではブログなどを活用すれば、インターネット上で営業活動を行えます。
大前提、税理士は難関国家資格保持者なので、社会的ニーズは高いです。
フリーランス税理士として働きたい場合はスキルに自信を持って、まずは自分の強みをどのようにアピールして営業活動を行えば効果的か考えるところから始めてみましょう。