フリーランスの税理士として、税理士事務所に勤務せずに自由に働きたいと希望している方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、フリーランス税理士として働くメリットとデメリット、フリーランス税理士の業務内容などについて解説します。
フリーランス税理士に明確な決まりがあるわけではありませんが、「フリーランス」という言葉は中小企業庁において、下記のように定義しています。
これを踏まえフリーランス税理士は一般的に、従業員を雇わず、税理士事務所などクライアント向けの事業所を持っていない開業税理士のことを指します。
企業との雇用関係が無いため、就業時間や仕事内容や報酬など大部分を自分自身で決めることができます。かつて、税理士は会計事務所で働くという固定観念が強かったですが、様々な働き方の認知度が高まっている近年において、フリーランスは注目されつつある働き方です。
フリーランス税理士といえど、業務内容は会計事務所で働く税理士と共通しているものも多いです。一方で、フリーランスならではの強みを活かすことができる部分もあります。
フリーランス税理士は、大きな企業を顧問先にするよりも、ベンチャー企業やフリーランス、スモールビジネスなどを対象に、税務サポートやコンサルティングを行っているケースが多いです。具体的には、確定申告や税務処理などの代行、給与計算、節税や税務についてのアドバイスなどになります。
税理士のコア業務として記帳代行が挙げられますが、記帳代行は量で勝負できる税理士法人との価格競争になりがちです。さらに、クラウド会計を導入すれば記帳代行は自動で可能なため、今後は縮小していくことが予想されます。
ただし、フリーランス税理士は固定費や自分以外への給与の支払いが不要なため、会計事務所よりも安い価格でサービス提供が可能です。なので、会計システムの導入に懸念を感じている中小企業などから一定数の需要はあります。
税務サポートやコンサルティングなどの通常的な業務を行う上で、自分の強みを付加価値としてプラスできれば差別化につながります。差別化の一例として挙げられるのは、年配の税理士は疎い傾向があるクラウド会計の活用や、仮想通貨の税務処理などです。
もちろん、相続税申告や国際税務、M&Aアドバイザリーなど業務の専門性を武器にするフリーランス税理士もいます。
以前は、フリーランス税理士として生計を立てるために、税理士事務所に所属してコネクションを作ったり、税理士会に参加する必要がありましたが、現在では、SNSなどを効果的に活用すればインターネット上で営業活動を行うことも可能です。そのような営業活動では、税務業務を提供するクライアントよりも、ブログの執筆依頼やセミナーの登壇依頼をしてくる企業や個人を獲得できるケースが多いです。
【参考】
士業のSEO対策 - ホームページで集客する方法│SEOホームページ
フリーランス税理士として働くメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。
フリーランスの税理士の最大の特徴として、就業時間や働く環境を自由に選択できることがあります。
先ほどご紹介したセミナー登壇などは、会場に赴く必要があるかも知れませんが、それ以外の業務はその多くがパソコン一つで対応することが可能です。
例えば、長時間働きたくなければ受ける仕事量を減らすなど、自分で労働時間の調節も可能です。平日休日関係なく、自分のプライベートに合わせて仕事のスケジュールを組むことができます。
税理士事務所や企業などの組織に属している場合、基本的には仕事の内容や顧問先を選べません。苦手な業務や嫌な顧問先でも、断ることは難しいです。なぜなら、勤務税理士は所属する会社の経営方針を決めなくてはなりませんし、会計事務所の代表として開業したとしても、その事務所の存続のために収益を最大限に稼ぐ必要があるからです。
その面、フリーランス税理士の場合は、自分が得意な分野の業務を優先的に受ける、気の乗らない顧問先の仕事は最初から受けないなど、仕事内容や顧問先の取捨選択ができます。
また、ブログの執筆やセミナー講演、yotube配信など会計事務所では特化することが難しい仕事を中心に働くことができるのも、近年のトレンドに沿ったメリットと言えるでしょう。
フリーランスなど独立という働き方を選ぶ税理士は、一人で自由に働きたいという思いの中に余計な人間関係に悩みたくない、という感情を抱いている方も少なくありません。
もちろんクライアントあっての仕事なので、全く人とのコミュニケーションが必要なくなるわけではないですが、面倒と感じる人も多い社内の人間関係から解放されるのは、メリットに当たるでしょう。
ここまでメリットの部分をご紹介しましたが、その一方でフリーランス税理士として働くデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
税理士事務所や企業に勤務している場合、仕事は分け与えられるのが一般的です。フリーランス税理士は、自ら営業して仕事を取ってこない限り仕事はありません。
それによって、勤務税理士に比べて年収が不安定になってしまうケースもあるのは、注意すべきポイントです。
自ら獲得した仕事を、自らのスケジュールに適切に落とし込むのもフリーランス税理士の役割です。案件が少ないと給与も少なくなってしまう一方で、同時期に多数の案件を抱えてしまうと対応しきれず、クレームや悪評判に繋がってしまいます。勤務税理士であれば、他のスタッフと進捗確認したり、場合によっては仕事を分担したりできますが、それができないというデメリットがあります。
フリーランス税理士は、自分の仕事をいくらで売るかを設定する必要があります。あまり安すぎても生活ができず、かといって高すぎても売れません。自らが提供できる価値を客観的に値踏みして、妥当な値段をつけることが求められます。
フリーランス税理士が活躍するのに最も必要と言えるのが、営業力です。税理士は市場価値が高いものの、令和6年4月時点で81,073名いることからも分かる通り、ライバルはたくさんいるのです。その中で、自分の強みが何かを理解した上でクライアントにアピールをしていかなければ、仕事が増えることはありません。
歴史が長い税理士事務所に勤務していた場合などでは、古くから依頼してくれている顧問先が多く、新規開拓などの営業活動をする必要がないケースがあります。Big4税理士法人などの知名度が高い事務所に在籍していた場合も、自然に案件が増えていくので、同様にあまり営業活動をすることは無いでしょう。
そういった方は、営業力の有無は未知数ともいえるので、営業を行っている会計事務所や一般企業の営業職などでスキルを磨いてからフリーランス税理士になるという手段もあります。
デメリットの部分でも挙げたように、フリーランス税理士はタスク管理を自ら行う必要があります。請け負っているタスク内容やそれぞれの進捗を把握するだけでなく、スケジュールに遅れが出ていないか、目標の売上に達するほどの案件を獲得できているのかまで、網羅的に把握しておかなければなりません。
社会人として、自らのタスク管理に自信があったり、部下のマネジメントを経験していた方であれば、フリーランス税理士としてもそのスキルが活かせるでしょう。
フリーランス税理士は会社を持っているわけでは無いので社長ではありませんが、自身の生計を立てるために経営戦略を策定します。目標に対して具体的にどのような業務をどのくらい行っていくか、という目標を年単位や月単位で作れる方はそこから逆算して営業をかけていけるので、活躍が期待できます。
また、クライアントから受け取る報酬についても、競合の金額や利益率などを踏まえて、適切な価格設定ができるかどうかも案件数に直結する要素となります。
税理士はクライアントの個人や法人のお金周りを取り扱うので、ミスは基本的にあってはなりません。会計事務所などではダブルチェックを行うことなどでミスを防いでいますが、フリーランス税理士はチェックし合える相手がいない為、自分の知識のみで正しい資料や情報を提供する必要があります。
フリーランス税理士として働く場合、仕事や顧問先、働き方などを自由に選べるという大きなメリットがあります。自由がある分、デメリットとして挙げられるのは、営業による仕事獲得や、仕事の値段設定などが必要になる点です。
昔は税理士の営業活動にはコネクションが必要でしたが、現在ではブログなどを活用すれば、インターネット上で営業活動を行えます。
大前提、税理士は難関国家資格保持者なので、社会的ニーズは高いです。
フリーランス税理士として働きたい場合はスキルに自信を持って、まずは自分の強みをどのようにアピールして営業活動を行えば効果的か考えるところから始めてみましょう。