中小企業の経理だとまずお目にかかることがない連結決算ですが、上場企業ともなると子会社が多く存在するために必要な処理になってきます。普通は一般社員が行うのではなく幹部候補が行いますので、経理としてのランクは高いです。
今回は連結決算を組むことが出来る経理の市場価値について解説していきます。
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まず連結決算とは何でしょうか。
連結決算は連結財務諸表を作成するための仕組みです。連結財務諸表とは親会社に子会社・関連会社の財務諸表を一つのグループとして集約した財務諸表のことです。日商簿記2級では範囲に含まれておらず、日商簿記1級になって始めて習う手続きです。
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連結決算は普通の決算に一手間二手間かかった作業が必要になってきます。
まずはグループ会社全ての財務諸表を集めなければなりません。もちろん海外に支社がある時はそれも含めます。近年では決算期の変更を行う企業が多いとされていますが、それは子会社・関連会社化した会社が親会社に決算期を合わせるために行っているからです。
また子会社の決算日と連結決算日が3か月未満のズレならば、子会社の決算日をそのまま使うことが出来ます。その場合、ズレている期間に必要な修正が入ります。
子会社・関連会社の財務諸表を親会社に合算します。この時子会社でも非連結子会社といって、会社の支配が一時的であるまたは連結の範囲に含めると利害関係者の判断を著しく誤らせる恐れがある子会社があります。
また関連会社も会計計算規則で詳しく定められていますが、議決権の20%を有するなど全ての関連会社を含める訳ではありません。そして非連結子会社や連結する関連会社は持分法が適用されます。持分法適用会社の純資産や損益は全てを合算するのではなく、持分比率に準じたものを合算していきます。
親会社と子会社間の取引は大きく見ると同じ会社間での取引になるので、削除する必要があります。時と場合によって処理が違ううえに数が多いので大変な作業になります。
連結修正を紹介しておきます。
●投資、資本の相殺消去とのれんの計上・償却
親会社の投資勘定と子会社の資本勘定を相殺する処理をするにあたり、時価で評価するため差額がでます。その差額を「のれん」勘定を使用しますが、この「のれん」勘定は20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します。
●子会社の当期純利益の振替
親会社が保有している子会社の株式の分しか連結することが出来ないため、子会社の当期純利益に親会社の持ち分を乗じます。保有していない株式は非支配株主持分と言って、連結するグループとは別だからです。
●子会社の配当金の修正
非支配株主への配当金は非支配株主持分を減少させますが、親会社への配当金は親子間の取引にあたるので相殺消去します。
●親子間の取引で起きた債権債務の相殺消去
親子間での取引は内部取引になり、外部への財務諸表へは反映されません。そのため相殺消去する必要があります。
●貸倒引当金の調整
上記④の債権債務の相殺消去によって消えた有形固定資産にかかる貸倒引当金は同時に取り消す必要があるため調整します。
●未実現利益の消去
グループ間での取引で生じた利益は内部利益となります。内部利益が生じたものが外部にでて初めて利益として計上されます。例えば親会社が子会社に商品を販売したとして、期末時点で子会社がその商品を外部に売らずに保有していた場合、それが未実現利益となります。この未実現利益は内部の取引になりますので相殺消去する必要があります。
他にも税効果会計を考えたり、関連会社についての処理があったりと連結修正仕訳はたくさんあります。
出典:連結財務諸表に関する会計基準
出典:会社計算規則|電子政府の総合窓口
経営成績や財政状態を評価される資料となり、株価にも影響してきます。
これを見て、投資家は投資の判断をしますし、経営陣は対策を練られます。
どこの支社が一番売上が高いか、利益を出している支社はどこか、実は他の支社から補助されているのではないかなど子会社・関連会社全てが集約されていますので、一目瞭然に見ることが出来ます。
上場企業の幹部候補の立場となりますので、一般的な経理とはワンランクもツーランクも上の待遇が望めます。年収で言えば500万円から600万円が相場ですが、中には850万円と高いランクの求人もあります。
いかがでしょうか。処理が煩雑で難しい連結決算ですが、やり遂げた時の達成感は他と比べられないのではないでしょうか。またグループ全てをまとめる幹部という立場も魅力的です。年収も経理としては最高ランクの金額を手に入れられるかもしれません。これを機に日商簿記1級に挑戦してみて、連結決算を自分のものにするのはどうでしょうか。