転職する時に必ず聞かれる「志望動機」。労務の仕事は、企業によっては人事や総務・経理部門が担当していることが多くあるため、場合によっては幅広い仕事を任されることがあります。労務に限らず、事務職はどの業種でも人気が高いため、通りいっぺんの志望動機では書類選考や面接を突破することは難しいでしょう。今回は、目線を変えて「こういう志望動機ではダメだ」という観点から解説していきます。自分の作成した志望動機と比べてみましょう。
初めに、就職・転職活動における志望動機の重要性について見ていきましょう。
志望動機では、「貴社で仕事がしたい」という気持ちをアピールだけでなく、「自分を雇用したらこのようなメリットがある」ということが伝わる内容であることが肝要です。つまり、「採用されたい」ことに加え「採用したい」と思わせるのに重要な役割を果たすのです。
何社も応募するとなれば、志望動機を一つずつ考えるのも面倒でテンプレート化してしまうこともあるでしょう。しかし、企業の採用担当者はたくさんの志望動機を見ているため、写したような内容には気がついてしまいますし、インパクトがありません。
採用担当者が求めているのは、「なぜ当社なのか」という確たる意志、そして「当社にどう貢献できる(したい)のか」が分かる志望動機です。
これはどの業界にも当てはまる事象であり、もちろん労務職においても同じです。
そんな労務職に応募するにあたっての志望動機を考えるにあたって、まずは労務職がどんな仕事をしているのか、見ていきましょう。
労務は、企業内の「ヒト」が働きやすい環境の整備や制度の導入・運用等を行う職種です。主な業務内容としては、以下が挙げられます。
勤怠管理や給与計算、年末調整などは他の職種で働く方にも比較的馴染みがあるかもしれませんが、具体的に労務職がやっている仕事がどういうものなのか、イメージがつきづらいものも多いでしょう。
これらの業務の具体的な仕事内容について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
労務の仕事内容が分かったところで、労務職を志望する方がどんな理由で就職・転職を目指しているのかについて、代表的なものを3つ見ていきましょう。
労務職の行う仕事は専門性が高く、法制度に関する知識やそれを活かして課題解決をするスキルが習得できます。習得する難易度は高いものの、どの企業でも必要とされる知識やスキルなので、身に付ければ手に職をつけられる仕事であるといえます。
そんな汎用性の高いスキルを習得するために労務職を希望する、という方は多くいらっしゃいます。
労務職に活かせる資格の一つとして、社会保険労務士資格(社労士資格)が挙げられます。社労士が働く職場として、社労士事務所や社労士法人が代表的ですが、業務の親和性も高いため、労務職でも十分に活かすことが可能なのです。この社労士資格を持っている方に多いのが、資格を活かして高年収が実現できる環境で働きたい、という理由です。
社労士法人や社労士事務所はクライアント企業の労務の代行やコンサルティングを行うため、多くの企業の労務業務を担当することができますが、その年収はそこまで高くありません。労務職は、所属する企業の給与体系にはよるものの、一般的には高年収が出やすい傾向にあります。
そのため、せっかく取得した社労士資格をできるだけ年収に反映させたいという方も、労務職を目指すのです。
上述したように仕事内容に共通した部分があることから、社労士事務所や社労士法人と労務職のどちらで働くのか、比較検討する方は多いです。これには社労士資格保持者だけでなく、資格取得を目指す受験生やいずれかで働いていて他方で働くことを検討している方も含まれます。
そんな中で労務職を選択した方の理由として多いのが、従業員から直接感謝されることをモチベーションに仕事ができるという点です。社労士事務所などではクライアントから依頼された業務を実施する形になり、なかなかクライアントの従業員からの感謝はされづらい仕事です。
一方で企業内の労務職として働く場合は、所属する企業の従業員の権利を守ったり、働き方の選択肢を増やすことで、同僚から直接感謝されやすい仕事といえます。
そのため、従業員や企業への貢献にやりがいを感じるために労務を目指すという方も多いでしょう。
では、本題の志望動機の考え方について解説していきます。各々の応募先への志望動機を考えるにあたって、次の3つのステップで考えることをオススメします。
それぞれについて、詳しく紹介していきます。
まずは労務職を希望する理由を洗い出します。ここについては、ある程度イメージがついており、先ほどご紹介したよくある労務職を志望する理由のいずれかに該当するという方が多いのではないでしょうか。ただしこれらの理由の中には、そのまま書くと企業側にマイナスなイメージを与えかねないものもあるので注意が必要です。
例えば、「高年収が実現できる」というのは、直接的な表現は避けた方が良いでしょう。年収さえ稼げればどの業界でもいいのではないか、と考える採用担当が多く、年収の高い他の業界と志望度が分散しているとか、入社してもらってもすぐ退職してしまうのではないかという懸念が出てくる可能性があります。その影響で、面接でそれらをリカバリーする機会も無く、書類選考段階で不合格になってしまうこともあるので注意が必要です。高年収がもらえるのはそれだけ企業への貢献が評価されるということになりますので、「貴社の労務的な課題解決に貢献したい」など、業務に絡めた言い方をすると良いでしょう。
「手に職をつけたい」という理由も同様に、少し表現を変えることをオススメします。手に職をつけるのであれば、同じ管理部門である経理や法務を筆頭に、ごまんとある仕事と大きく差別化することが難しいからです。「労務のスキルを身につけることで貴社や社会全体の労務問題の解決を目指したい」などと、労務のスキルを身に付けたい理由をアピールできるとよいでしょう。
「直接感謝される仕事をしたい」については、そこまでネガティブな印象を持たれる理由ではないので、大きく表現を変える必要はないでしょう。ただし、労務職を目指したきっかけなどがあれば、併せて記載しておきましょう。
次になぜその企業先に応募したのかという理由も落とし込みましょう。FAS業界の求人は沢山ある中でなぜその企業を選んだのかは、書類選考でも面接でもほぼ必ず選考基準に入っています。
志望動機の完成度が低かったり他の企業でも通用するような内容だと、志望度が低いもしくはもし入社してもすぐ辞めてしまうかもしれないという懸念に繋がってしまいますので注意が必要です。
会社の事業内容によって仕事が変わる営業職やマーケティング職とは違い、労務職は行っている業務内容が似ているため、企業ごとの志望動機を作る難易度が高い職種といえます。企業情報や求人を仔細に確認し、相手に熱意が伝わるような内容を作りましょう。
最後にその応募先において自分自身がどのような役割を果たせるのかを考えましょう。こちらはいわゆる自己PRのようなものですが、今までのキャリアや実績をなんでも書けばいいというものではなく、あくまで労務の仕事、さらにその応募先企業で活かせるとアピールできるものでなくてはなりません。
労務職への志望動機の書き方を調べると、例文や他の転職者の回答例を見る機会も多いかもしれませんが、それらを参考にするのはあまりオススメしません。なぜなら志望動機は自分自身の本心や実際の経験に基づいてなるべくリアルに書く必要があるからです。
模範例を参考にしてしまうと、どうしてもそれに引っ張られて独自性が薄れたり、本当に書きたいことと乖離することがあります。もちろん、先述したように赤裸々に書き過ぎないように気を付ける必要はありますが、自分の言葉で伝えられるような志望動機にはしていきましょう。
ただし、選考通過がしにくい志望動機の例については押さえておく必要がありますので、具体的な部分を次の章でご紹介します。
それでは、実際に志望動機を作る上で、陥りやすいNGポイントを見ていきましょう。
志望動機は「自分がどうしてこの企業で働きたいと思ったか」を具体的に語る必要があります。
「企業理念に共感しました」
「将来性に惹かれました」
「人の役に立ちたいと思っています」
「自分の性格上、貴社が向いていると思った」
このような浅い理由は「他社でも使い回しているのだな」とすぐにわかってしまいます。志望企業の研究をしっかりとおこない、その企業の一員となる自分がどのように貢献できるのかまでイメージをしっかりと持ちましょう。
まずは、ネットや書籍で志望企業について以下の概要を調べます。
企業の沿革、経営理念、事業内容、経営計画、資本金、売上高、株価、代表者挨拶、主力商品の歴史
さらに、もし応募企業が近ければ足を運び、オフィスには入れなくても実際にそのビルまで行ってみたり、商品を買ってみたり、店舗に行ってみたりと、その企業のファンというつもりで「追っかけ」をしてみます。
働くことになったら、実際にその会社の人たちを支える存在になるわけですから「この会社をサポートしたい」という感覚をリアルに持つことが大事です。
社員の目線で「どのように貢献できるか」という志望動機を作ることで、ぐっと転職成功に近づくでしょう。
労務などの専門的な職種の場合、キャリアアップの前向きな気持ちがかえって命取りになる場合も。例えば以下のような志望動機です。
「未経験でも可能とあったので」
「御社で経験を積んで勉強したいと考えています」
「私のキャリアやスキルを御社で伸ばしていきたいと考えています」
「研修でしっかりと学んで役立てるように努力します」
「未経験でも可」というのは、あくまでポテンシャルのある人を求めているのであって「入社してから教えてもらおう」という人は対象外です。
また、労務職を募集している場合であっても、他に適性がありそうな職種がある場合に「○○についても可能かどうか」という質問をされることがあります。
このような時、例えば、その会社で働くこと自体が第一希望であれば、柔軟に受けるのもありでしょう。入社してその職種をこなしてから人事部門への異動希望を出す方が、一から転職するよりは負担が少ないからです。
頑なに「労務」にこだわってしまうと、せっかくのチャンスを逃してしまうことにもなりかねません。
面接官は、企業にとってメリットのある人材を採用したいと考えています。自己成長ももちろん大事ですが、それはあくまで、会社の成長に貢献した結果、自身も成長しているという観点で語るようにしましょう。
どの会社にもある業種は、同じような仕事内容でも、どの会社に勤めるかで給与をはじめとした待遇が大きく異なります。
労務管理という仕事は、他の企業でも募集される職種です。その中で「なぜ当社なのか」を面接官は知りたいと思っています。
例えば、メーカーと金融など、業種が違うと社風や仕事における常識がまるで違うことがありますので、採用しても人間関係で苦労して辞められたら困るからです。
「前職が○万円だったのでそれでは少ないと感じました」
「ワークライフバランスを充実させたくて」
「有給休暇をちゃんと消化できると聞いて」
「残業が○時間と会社概要で拝見して」
正直なところ、こうした待遇面で転職してくることは、待遇の良い企業の面接官はわかっていますので、今更それを志望動機にいれる必要はありません。
また、こうした待遇の良さを志望動機にいれてしまうと、必然的に退職理由がネガティブになってしまいます。応募先企業の魅力を語るために、前職を下げる必要はありません。
ネガティブな理由を述べすぎると「うちに入社してもダメな点を見つけて転職してしまうのではないか」という不安を面接官に与えることになってしまいます。
ここまで労務職での志望動機の書き方について解説していきましたが、そうはいっても上手く書けない人や、書けたけどいいのか悪いのか分からない人も多いのではないでしょうか。そんな時は、就職エージェントや転職エージェントに添削の依頼や相談をするのがオススメです。弊社ヒュープロでは新卒・中途ともに選考や面接のサポートをさせて頂いておりますので、ご利用いただくメリットをご紹介していきます。
ヒュープロはこれまで多くのご登録者様の就職や転職を支援してきた実績がありますので、そこで蓄積されたデータから多角的な視点で書類通過率を高めるための志望動機の添削ができます。今回ご紹介した書き方以外にもイメージを言語化する方法などの細かい部分も含め数多くのノウハウを有しているので、個別に最適なアドバイスができるのです。
先ほど紹介した企業ごとの志望動機については、重要ではあるものの企業研究にかなりの時間を費やす必要があります。ヒュープロは求人掲載企業との関係も深く、詳細な企業情報を持ち合わせていますので、わざわざ調べる手間が省けるほか、一般的には得られないようなリアルな情報も提供できます。
志望動機はあくまで、応募先企業でどのように貢献できる人材なのかをアピールするものです。応募先企業への思いを含め「自分を社員にするとどのように良いことがあるのか」をしっかりと面接官に伝えられるように深掘りして考えましょう。