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取得形態で異なる有形固定資産の取得原価の決定方法!税理士が解説!

税理士 井上幹康
取得形態で異なる有形固定資産の取得原価の決定方法

企業会計上、固定資産は有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分類されます。有形固定資産は営業目的のために長期間使用する資産で、建物、機械装置などが該当します。有形固定資産は取得時に取得原価を決定し、その後減価償却等の手続きで費用化されますが、今回は、取得原価の決定方法についてご紹介します。

有形固定資産の取得原価は取得形態により異なる

企業会計における有形固定資産の取得原価の決定方法は、「連続意見書 第三 有形固定資産の減価償却について」(以下、「連続意見書」という。)に規定されています。

連続意見書では、有形固定資産の取得形態別に以下の通りそれぞれ取得原価の決定方法が規定されています。

<有形固定資産の取得原価の決定方法>

取得形態
取得原価
購入による取得 購入代金-値引・割戻+付随費用
自家建設による取得 適正な原価計算基準に従って計算した製造原価
現物出資による取得 交付した株式の発行価額
交換による取得 同種資産の交換:自己資産の適正な簿価
異種資産の交換:自己資産の適正な時価
贈与による取得 時価等を規準とした公正な評価額

購入による取得

取得形態として、まず一番多いのが購入による取得だと思います。この場合には、購入代金から値引・割戻を控除し、付随費用を加算して、有形固定資産の取得原価を決定することとされています。

付随費用の具体例として、連続意見書では、買入手数料、運送費、荷役費、据付費、試運転費等が挙げられています。

なお、連続意見書では、正当な理由がある場合には、付随費用の一部又は全部を加算しない額をもって取得原価とすることができるとされています。この点、法人税法基本通達7-3-3の2では、以下の費用は取得原価に算入しなくてもよい旨規定されています。

<法人税法基本通達7-3-3の2>

次に掲げるような租税公課等の額は、固定資産の取得原価に算入しないことができる。
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
ハ 新増設に係る事業所税
ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用

自家建設による取得

自家建設による取得とは、例えば、自社で使用する工場や機械装置を自社で建設・製作することを言います。

この場合には、適正な原価計算基準に従って計算した製造原価(材料費、労務費、外注費、経費)をもって、有形固定資産の取得原価を決定します。

ただし、建設に要する借入資本の利子で稼働前の期間に属するものは、これを取得原価に算入することができるとされています。借入金利子(支払利息)は原則的には費用計上(営業外費用)されるものですが、例外的に取得原価に算入することができる取扱いになります。

借入金利子の取扱い 原則:支払利息として費用計上
例外:建設に要する借入資本の利子で稼働前の期間に属するものは、取得原価に算入可
取得形態で異なる有形固定資産の取得原価の決定方法

現物出資による取得

現物出資による取得とは、自社の増資にあたり、出資者から金銭ではなく有形固定資産を提供してもらい、株式を発行するような場合をいいます。実務上、金銭出資がほとんどで現物出資はレアケースだと思いますが、取得形態としてはあり得ますので連続意見書には現物出資による取得の場合も規定されています。

この場合、出資者に対して交付された株式の発行価額をもって有形固定資産の取得原価とすることとされています。

現物出資の場合、会社法による規制を受け、現物出資で受け入れる財産の公正な評価額と交付する株式の発行価額が等しくなければなりませんので、現物出資による有形固定資産の取得原価は、受け入れた有形固定資産の公正な評価額(時価)とも言えます。

交換による取得

交換によって有形固定資産を取得した場合、自社が相手にどんな資産を提供するかによって取得した有形固定資産の取得原価の決定方法が異なります。

連続意見書では、以下のとおり2パターン規定されています。

① 自己所有の固定資産と交換に固定資産を取得した場合には、交換に供された自己資産の適正な簿価をもって取得原価とする。
② 自己所有の株式ないし社債等と固定資産を交換した場合には、当該有価証券の時価又は適正な簿価をもって取得原価とする。

①のように同種資産どうしの交換の場合、自己資産の帳簿価額をそのまま交換取得した固定資産の取得原価とします。

一方で、②のように異種資産どうしの交換の場合、自己資産(株式等)の時価を交換取得した有形固定資産の取得原価としますが、自己資産(株式等)の時価が不明の場合には帳簿価額を交換取得した有形固定資産の取得原価とします。

贈与による取得

贈与による取得とは、企業が無償で有形固定資産を取得する場合をいいます。これも現物出資と同じく実務上はあまりないケースかと思いますが、あり得なくはないので連続意見書では、贈与による取得の場合も規定されています。

贈与による取得の場合、1つの考え方として、無償(タダ)で取得しているのだから、購入による取得でいう購入代金等がゼロということで、取得原価ゼロとすべきとも考えられます。ただし、取得原価をゼロとするといわゆる簿外資産を認めることになってしまいますので、連続意見書では、取得した有形固定資産の時価等の公正な評価額を取得原価として資産計上することとされています。

したがって、贈与による取得の場合、有形固定資産が時価で資産計上される一方で受贈益という利益が計上されることになります。

<贈与による有形固定資産の取得仕訳イメージ>

借方 金額 貸方 金額
有形固定資産 時価 受贈益 時価

この記事を書いたライター

大学在学中に気象予報士試験に独学一発合格。社会人として働きながら4年で税理士試験官報合格。開業税理士として税務に従事しながら不動産鑑定士試験にも一発合格。税理士試験や不動産鑑定士試験受験生向けの相談サービスや会計学ゼミも開催。
カテゴリ:コラム・学び

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