固定資産とは、営業活動に使用するために企業等が所有する資産をいいますが、貸借対照表上はさらに有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産に区分されています。今回は、決算時に貸借対照表を作成するにあたり経理担当者等が知っておきたい会計上の固定資産の区分とその種類についてご紹介します。
まず、冒頭でも述べましたが、貸借対照表上、固定資産は有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産に3区分されます。貸借対照表上、繰延資産という区分もありますが、これは固定資産には含まれない別物ですので注意してください。
これら3区分について区分別に具体的にどんな種類の資産が含まれるのかを見ていこうと思います。
有形固定資産とは、原則として1年以上営業活動に使用する目的で所有する事業用資産で、物理的・具体的な形態をもつものをいいます。
この有形固定資産は、さらに①償却資産と②非償却資産に細区分されます。
①償却資産
有形固定資産
②非償却資産
①償却資産は、さらに、減価償却資産、取替資産、減耗性資産に細区分されますが、取替資産(鉄道業のレール等)や減耗性資産(鉱山、山林等の天然資源)は特定の業種に限られますが、どの業種の企業でも必ず所有しているのが減価償却資産です。
減価償却資産とは、使用や時の経過によりその価値が減少する資産をいいます。そして、その価値の減少分を費用化する手続きが減価償却です。減価償却資産の具体例としては、以下のような資産が挙げられます。
<減価償却資産の具体例>
建物、建物附属設備、構築物、機械及び装置、車両運搬具、工具器具備品
②非償却資産は、償却資産とは異なり基本的に使用や時の経過を通じてその価値が減少しない資産をいいます。ただし、例外的に減損会計の適用を受け、収益性の低下が認められる場合は減損処理が行われてその帳簿価額が減額されることになります。非償却資産の具体例としては、以下のような資産が挙げられます。
<非償却資産の具体例>
土地、建設仮勘定
無形固定資産とは、有形固定資産とは異なり、物理的・具体的な形態は持たないが、競合他社に比べた優位性をもたらしたり、長期にわたって営業活動に使用されたりする資産をいいます。
無形固定資産の細区分の仕方もいくつか切り口がありますが、ここでは①法律上の権利と②経済的価値のあるものの2つに細区分してみていきます。
①法律上の権利
無形固定資産
②経済的価値のあるもの
①法律上の権利に区分される無形固定資産の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。借地権は土地に準じて減価償却は行いませんが、他は基本的には減価償却を行い費用化していきます。
<法律上の権利>
特許権、実用新案権、意匠権、商標権、借地権、鉱業権、漁業権、ソフトウエア
②経済的価値のあるものに区分される無形固定資産の具体例としては、のれんが挙げられます。のれんとは、同業他社に比べた超過収益力の源泉をいい、さらに、自己創設のれんと買入のれんに細区分されますが、現行の企業会計上、自己創設のれんの計上は認められていないので、のれんといえば、通常は買入のれんのことを指します。
買入のれんが計上される場面としては、吸収合併や事業譲渡などが挙げられますが、無形固定資産に計上された買入のれんは、企業会計上20年以内のその効果の及ぶ期間で定額法その他の合理的な方法により規則的に償却することとされています。
投資その他の資産とは、企業支配目的の投資(関係会社株式)、長期利殖目的の投資(投資有価証券)及び投資不動産などが含まれます。
非上場の中小企業ですと投資その他の資産の部の金額ボリュームは有形固定資産や無形固定資産に比べて小さい場合が多いですが、多くの子会社等を持つ上場企業ではその金額ボリュームも増してきます。
最後に、*リース資産:の区分についても触れておこうと思います。
現行の会計基準では、リース取引の借手は、ファイナンス・リース取引に係るリース資産について、原則として、有形固定資産、無形固定資産の別に一括してリース資産として表示することとされています。例えば、リース資産が機械装置等の有形固定資産であれば、有形固定資産の部にリース資産として表示し、リース資産がソフトウエア等の無形固定資産であれば、無形固定資産の部にリース資産として表示することになります。ただし、有形固定資産又は無形固定資産に属する科目に含めることもできるとされています。
固定資産の区分とその具体的な種類についてご紹介しましたが、意外に細かいと思われたかと思います。決算時の貸借対照表の作成においては、固定資産を今回ご紹介した区分別に適切に分類し、集計する必要があります。とは言え、忙しい決算時に固定資産の区分を1つ1つ見ている時間的余裕はないので、日々の会計処理の段階で適切に区分しておき、決算時に慌てないようにするのが基本です。
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