税理士と社労士は難関資格です。お互いの業務が関連しながらもそれぞれに独占業務があります。業務の関連性が深い事および他の方との差別化で、税理士と社労士とのダブルライセンスを検討する方が増えています。そこで今回は税理士と社労士とのダブルライセンスおよびそういった方の転職での評価について解説していきます。
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2020年4月末現在、日本には約78,700人程度の税理士がいます。そのため、税理士業界は既に過当競争であると言われています。
そんな中、上記のように、税理士と社労士の業務範囲は密接に関連しており、さらに、ダブルライセンスで他の税理士および社労士との差別化を図るために、どちらか片方の資格を既にお持ちの方が、もう一方の資格も取ってダブルライセンスを狙うことが資格取得者としての生き残りの戦略の一つとなっています。
ただし、どちらもかなりの難関資格であるため、2つ目の資格取得は容易ではありません。働きながらもう一方の試験に合格することを考えると、そのための試験勉強の時間や体力などを確保することは非常に難しく、ダブルライセンスを達成する上で大きな問題となります。そのため、実際にダブルライセンスを狙うのであれば、かなりの覚悟が必要です。しかし、だからこそ、ダブルライセンスを成し遂げた方への評価は高く、ニーズもしっかりと存在すると言えます。
税理士には以下の独占業務があります。
a.税務代理
税務官公署に対する申告等、税務官公署の調査もしくは処分に関し、クライアントに代わって、税務官公署に対して対応することです。
b.税務書類の作成
税務官公署に対する申告等に係る申告書等をクライアントに代わって作成することです。
c.税務相談
税務官公署に対する申告等、税務官公署の調査もしくは処分に関し、租税の計算に関する事項について、クライアントからの相談に乗ることです。
社労士には以下の独占業務があります。
a.クライアントの以下の手続の代行
・労働社会保険諸法令に基づいて申請書等を作成すること
・上記の申請書等について、その提出に関する手続を代理すること
・労働社会保険諸法令に基づく申請等または当該申請等に係る行政機関等の調査もしくは処分に関して、行政機関等に対しての対応を代理すること
b.社会保険諸法令に基づく帳簿書類をクライアントに代わり作成すること
税理士は上記の独占業務をクライアントから請け負う場合は記帳代行、言い換えると、会計処理業務を請け負うことが多いです。一方で、社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成は社労士の独占業務なので社労士が行うケースが多いです。このように人事および給与等の計算とその会計処理は密接に関わっていることから、税理士と社労士の業務には密接した関係があります。
一方で、社会保険諸法令に基づく帳簿書類を作成する業務について、有償では社労士のみ請け負うことが可能ですが、無償であれば税理士が行うことも不可能ではありません。そして、賃金計算を自社で行っているという企業の当該事務についてのアドバイスや、社労士が作成した賃金台帳による賃金に関する会計業務などを税理士が行うことも可能です。
そのため、賃金計算に関する業務や社会保険に関する業務を税理士が無償で行っているというケースがあり、税理士と社労士のダブルライセンスを取得した方は特にそういった領域でしっかりとした活躍が可能であり、転職においても有利に働くでしょう。さらにダブルライセンスの保有者でなくても、上記のようなニーズに対応するため、税理士事務所で社労士の募集を募る場合があります。
科目合格が一般的な税理士試験と比べて、社労士試験は全科目合格を目指さなければならず、しかも税理士試験と社労士試験には重複したものはありません。そのため、片方の試験のために培った知識がもう一方の試験でそのまま利用できる可能性は低いでしょう。
ただし、税理士試験や社労士試験だけに限らず試験勉強全般に関して、ある試験勉強で身に着けた勉強方法や知識を活かして問題を解くという応用力は別の試験勉強でも深いところでは関連していると言えなくもありません。そのため、税理士または社労士という国家資格の試験およびその合格を体験しているという事にはそれなりのアドバンテージがあると言えるでしょう。
ここまで税理士と社労士のダブルライセンスおよびダブルライセンスを取得した方の転職市場での評価について見て来ましたが、いかがでしたでしょうか。
上記のように、税理士と社労士のダブルライセンスを達成するのは決して容易ではありません。しかし、だからこそ生き残り戦略として価値があり、かつ、転職市場でのニーズもあると言えます。税理士と社労士のダブルライセンスを考えられている方は、強い覚悟のもとに成し遂げて、キャリアをより輝かしいものにしていって下さい。