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売掛債権とは?時効期間が変わる?|売掛債権の疑問を分かりやすく解説

HUPRO 編集部
売掛債権とは?時効期間が変わる?|売掛債権の疑問を分かりやすく解説

売掛債権という言葉は、ビジネスにおいてよく耳にする機会がありますが、正確にどういうものなのかを説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。本記事では売掛債権とは何かという点や、売掛債権が請求できなくなってしまう時効について、民法・商法の改正も踏まえて分かりやすく解説します。

売掛債権とは

売掛債権とは、企業の営業活動による商品やサービスの売上代金のうち、まだ受け取っていない代金を請求できる権利のことです。企業間の取引では、取引の都度代金を現金で支払うということはされず、月末などに1か月分の代金をまとめて後で支払うか、手形による支払いを受けるというのが一般的です。このような取引を信用取引といいます。このような、信用取引に用いられる売掛債権には、売掛金と受取手形の2種類があります。
なお、まだ現金化されていない債権という意味では未収金と共通しますが、売掛債権は、営業活動によって発生した債権であるのに対し、未収金は営業以外の特別な取引によって得られた債権のことをいいます。したがって、全く意味が異なりますので、注意しましょう。

売掛金とは

売掛金とは、後払いで支払われる代金のことで、いわゆるツケ払いです。一般的には月末や翌月末に入金されることが多く、入金されると売上として計上されます。後日受け取れる権利なので、貸借対照表では資産として扱われます。売掛金は、後述するように、一定期間が経過すると時効によって消滅してしまい、請求できなくなってしまいます。未回収のまま放置することの無いように、定期的に請求するなど売掛金管理が重要になります。

受取手形とは

受取手形とは、購入者(支払人)が販売者(受取人)にあてて、所定の期日までに支払うことを約束した証書のことです。売掛金と同様に、貸借対照表では資産となります。
売掛金と同様、受取手形も商品・サービスを販売する際には、現金の受渡しが発生せず、支払期日に支払いを受けることで初めて現金となります。
売掛金とは異なり、手形を第三者に譲渡することで支払期日までに現金化できるなどのメリットがありますが、取引会社の経営状況をチェックしておかないと不渡りになり、回収不能になるというリスクもあります。

売掛債権の時効について(改正前の民法・商法による場合)

時効とは、一定期間の経過を理由に権利が消滅する制度のことをいいます。売掛債権のうち、売掛金については、2019年9月現在の民法では発生原因によって異なる時効期間が定められています。時効期間については以下の通りです。

ビジネスにおいてよく問題になるのは、商品の売買代金に関する時効です。2年間と比較的短期間になっているので十分注意しましょう。

売掛債権の時効について(改正前の民法・商法による場合)

売掛債権の時効について(民法・商法の改正後)

2020年4月1日から施工される民法・商法では、現行の時効期間について変更があります。改正後の民法・商法では、発生原因ごとに時効期間を分けるルールが削除されており、一律で以下のような時効期間になっています。

・権利を行使できることを知った日から5年間
・権利を行使することができる時から10年間

いずれかの期間の短い方が適用されます。なお、このルールが適用されるのは、改正された民法・商法が施工されて以降に発生した債権が対象です。したがって、2020年の4月1日より前に発生した債権については改正前のルールが適用されるため発生原因ごとに時効期間が異なるのに対し、2020年4月1日以降は改正後のルールとなります。いつ、発生した債権なのかによって大きく時効期間が異なります。十分に注意しましょう。

時効の成立を阻止するには?

時効の成立を阻止する方法としては、以下のような事由が民法上定められています。

・請求
・差押え、仮差押え又は仮処分
・承認

請求

「請求」とは、単に請求書を送るような行為ではなく、訴訟を提起する行為のことをいいます。したがって、請求書を送るだけでは、時効の成立を止めることはできませんので、注意しましょう。

差押え、仮差押え又は仮処分

「差押え、仮差押え又は仮処分」とは、文字通り裁判所に差押えや仮処分の申し立てを行うことです。「請求」と共通するのは裁判所に手続きを申し立てる必要があるという点です。いずれもコストがかかるのがネックです。

承認

一番利用されやすい事項を阻止する手段としては、「承認」があります。これは、債権の存在を債務者が認めることを言います。例えば、商品を販売した場合、商品を購入した人が代金を支払う義務があることを認める場合がこれに当たります。相手が認めてくれれば良いため、前述の2つに比べてコストがかからないのが「承認」のメリットです。ただし、後で「言った、言わなかった」という争いになりやすいのも事実です。したがって、メールをスクリーンショットで残しておくなど、後に残るように工夫して、証拠を残しておくことが重要となります。

まとめ

売掛債権は企業の営業活動での売上のうち、まだ受け取っていない代金を請求できる権利のことで、売掛金と受取手形の二種類があります。売掛金に関しては「時効」が存在し、その期間は2020年4月1日の民法・商法改正前後で異なるので、注意が必要です。
万が一時効が成立してしまうと、売上になるはずだった金額が無くなってしまうので、相手企業の経営状態を確認したり、定期的に請求したりと、しっかりとした管理が重要でしょう。

この記事を書いたライター

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