税理士は難関国家資格であり、安定したキャリアを実現できることから目指す方も多くいらっしゃいます。一方、「激務」というイメージが根強くあることで、税理士業界への就職や転職を躊躇するという方も多いのではないでしょうか?本記事ではそんな税理士について、激務と言われている働き方やBIG4の実情を紹介します。
「税理士は難関国家資格を持った専門家だから、ある程度自由に働いているだろう」思っている人もいらっしゃる一方で、「税理士はかなりハードに働いているらしい」、「税理士業界は忙しいイメージが強い」といった声も聞かれます。そんな税理士の働き方について実態を見ていきましょう。
激務かどうかを判断する要素の一つとして、残業時間があります。税理士の残業時間は一般的には月30時間程度と言われています。厚生労働省が2023年に発表した「毎月勤労統計調査 令和4年分結果確報」によると、労働者の月平均残業時間は13.8時間でしたので、比較的忙しい程度と言えるでしょう。
ただしこの数値はあくまで平均であり、この値を大きく超える月が数ヶ月続く期間があります。この期間のことを繁忙期と呼びますが、こちらについては後ほど詳しく紹介することにします。
残業時間以外の激務かどうかを判断する要素として、休日をどの程度取得できるか、および休日に働くことはあるのか、という部分があります。
士業・管理部門特化の転職エージェントである弊社ヒュープロにてご案内している税理士向けの求人では、ほとんどの企業が完全週休二日制で土日祝日が休みです。また有給休暇についても、5~10日付与されることが多いです。
2024年は土日祝日が118日なので、年間休日118日ということになりますが、これは平均的な休日日数であると言えるでしょう。
そして大事なのが休日に仕事をしているかどうかですが、税理士は基本的に休日に仕事はしていないようです。税理士の多くが就業している会計事務所は基本的に土日祝日休みなので、クライアントとやり取りをする機会がほぼないことが理由です。
ただし、税法は目まぐるしく改正されているため、税理士は知識をアップデートすべく資格取得後も継続的に勉強しなければなりません。そのような勉強の時間に休日を充てる税理士が一定数いらしゃるというのが、実情です。どうしても平日は業務を行わなければならないので、まとまった時間を取って勉強に充てるというのは難しいようです。この時間を自己研鑽の時間と捉えることができればそこまで負担に感じないかもしれませんが、休日は完全にオフ、という働き方ではないのは事実です。
また先ほどご紹介した繁忙期については、事務所や企業によっては休日出勤を月に数回しなければならないケースもあります。
激務と感じるかどうかは人それぞれではあるものの、上記のような状況を知って「働きやすい労働環境」と思う方は少ないでしょう。ただし、過度な残業があったり、休日を自由に使えないなどといったいわゆるブラックな職場と言われるような環境ではありません。ある程度のタフさは必要かもしれませんが、大きな懸念や嫌悪感を持つほどのものではないのです。
激務のイメージが強かった税理士ですが、働き方改革の影響などもあり、かなり解消されつつあるのです。
この章では、ここまで何度か出てきた「税理士の繁忙期」について、解説します。
税理士事務所や税理士法人で働く税理士の場合、12月~4月が該当します。この時期が忙しくなるのは、税理士が請け負う業務の中で特に業務量が多い年次決算にまつわるタスクがこの時期に集中するからです。その理由は、国内の企業の多くが3月を決算月としていることにあります。
ただし、企業の管理部門で自社の決算を担当する税理士であれば、その企業の決算月の前後が繁忙期ということになります。
繁忙期の税理士は申告書の書類製作に追われ、残業や土日出勤をしなければならないほど激務になる可能性があります。もともとストレス耐性が低かったり、前職がかなり働きやすい環境だった場合は、かなり覚悟が必要といえます。
繁忙期以外、特に6月~10月は逆に仕事が落ち着きますので、閑散期と呼ばれます。繁忙期に月40時間残業する事務所でも、閑散期の残業は0という場合もあります。
全体的に忙しい傾向にあり、繁忙期と閑散期の忙しさの差が大きいという部分で、税理士になることを懸念する方もいらっしゃるかもしれません。ただ、もちろん資格取得するメリットもありますので、主な3つを紹介します。
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、税理士の平均年収は約958万円です。同データには全ての労働者の平均年収は約308万円とされているので、単純計算だと税理士は平均の3倍程度の高水準であるといえます。
どんな職場で働くのかによって年収の差が開きやすい業界ではありますが、平均と比べると全体的に高年収ということができるでしょう。
税理士は全国に8万人超いるものの、非常に希少価値の高い存在です。ですので、資格を取れば幅広い職場から求められる人になることができます。
また、どこかで働く以外にも、独立して税理士事務所などを開業し、経営者としてのキャリアを歩むことも可能です。
税理士を目指す人や税理士の方にとっては当たり前かもしれませんが、税理士には独占業務というものがあります。具体的には、税務書類の作成、税務申告の代理、税務相談の3つの業務を指します。これらの業務は税理士にならないと行えないのです。
税理士や税理士を目指す方の多くが、BIG4税理士法人という言葉を聞いたことがあると思います。そんな4法人の労働実態はどうなのでしょうか?
税理士法人の中でも、日本国内において圧倒的なシェアを誇っている4つの税理士法人のことを、BIG4税理士法人と呼びます。
BIG4税理士法人に該当するのは以下の4法人です。
・KPMG税理士法人
・PwC税理士法人
・EY税理士法人
・デロイト トーマツ税理士法人
なおBIG4税理士法人については、世界4大会計事務所とメンバーファームとなり、業務提携を交わしています。ロイヤリティー(加盟金)は収めていますが、国内で日本人が代表を務めている『外資系会計事務所』ということになります。
BIG4税理士法人のクライアントは大手企業・外資系企業・金融機関などで、企業規模が大きいクライアントが多いです。BIG4税理士法人はこういったクライアントに会計・税務・コンサルティングなどを提供していますが、もちろん主に提供しているのは税務に関する業務です。
クライアントの多くは自前で経理・会計に関する部署を持っているため、記帳代行・決算業務・税務申告書の作成はクライアント自身が行うのが通常です。そのため、BIG4税理士法人にて行う主な業務は、作成された税務申告書のチェックなどです。
また、上記のように記帳代行や決算業務を行わない分、BIG4税理士法人では、中小の税理士法人・会計事務所では扱うことの少ない、より専門性の高い税務業務が行われています。
BIG4税理士法人は基本的には中小の税理士事務所に比べると、待遇が良いです。BIG4と呼ばれるBIG4では、初任給も高く、初年度で年収が500万円に達するケースもあります。
これは、クライアントに上場している大手企業が多く、また高度な国際税務の案件などを扱うことにより、その分大きな利益を得ていることが挙げられます。
もちろん、BIG4税理士法人への転職は選考ハードルが高く難しいですが、採用されれば初任給から高待遇が用意され、40代にもなれば年収1000万円以上も望めるでしょう。
次に、BIG4税理士法人で働くメリットをご紹介します。
既に紹介しましたが、BIG4税理士法人はその他の税理士法人・会計事務所と比べて年収のレンジが高いです。これは非常に大きなメリットと言えるでしょう。
BIG4税理士法人のクライアントは大手企業、外資系企業、金融機関などが多いです。これらのクライアントを担当すると、連結決算や国際税務やM&Aなど、他ではあまり経験できない専門性の高い業務が存在します。そういった業務を経験できることはBIG4税理士法人で働くメリットであると言えます。
そこで実績を残すことは今後のキャリア形成の大きな手助けになるでしょう。
BIG4税理士法人は屈指の大企業なので、福利厚生が充実している傾向にあります。ある程度激務だとしても、その分の給与の上乗せや勤怠管理などは確実に行われるでしょう。また、リモートワークやフレックスタイム制など柔軟な働き方もしやすいでしょう。
激務と言われている具体的な仕事内容についても見ていきます。
BIG4税理士法人の仕事内容としては、まず「税務コンプライアンス」として、税務申告書の作成、税務相談や税務代行などを行います。これは他の会計事務所とも同じです。
また、「税務コンサルティング」として、M&A・組織再編、企業再生や事業承継海外税制についての調査・解説などに重きをおいて行う点が特徴的です。
これらの業務はBIG4税理士法人でないと経験できない部分もあり、キャリアアップが図れる点がメリットです。広く業務を行うというよりも専門的な知識が得られるのが魅力です。
今回は、税理士の激務と呼ばれる働き方について解説しました。決して働きやすい業界とは言えないものの、働き方改革の影響もありワークライフバランスを重視して働ける職場が増えているのも事実です。
もちろん、年収面や今後のキャリアの安定性などにおいてメリットがたくさんある職種なので、資格の取得や業界への転職はオススメできます!