法人税等調整額とは何か、どのような目的で計上されるのか知りたいのではないでしょうか?法人税等調整額とは、損益計算書で表示する勘定科目のひとつです。税効果会計を適用することで、企業会計と税務会計のズレをなくし、費用を適切に期間配分するために使用します。
今回は、法人税等調整額とは何か、どのような目的で使用するのかについて解説していきます。
《関連記事》
法人税等調整額とは、損益計算書の勘定科目のひとつです。企業会計の利益と、税務会計の課税所得のズレを解消するために計上します。
企業会計と税務会計のズレを解消し、費用を適切に期間配分する会計処理を税効果会計を呼びます。つまり、税効果会計を行う場合に使用する勘定科目が法人税等調整額というわけです。
法人税等調整額は、損益計算書で以下のように表示されます。
・税引前当期純利益 : 800
・法人税、住民税および事業税 : 300
・法人税等調整額 : ▲100
・税引後当期純利益 : 400
法人税等調整額は、マイナス表示になる場合もプラス表示になる場合もあります。税効果会計によって法人税等調整額を加減することで、適切な税引後当期純利益が表示されるように調整することが、法人税等調整額の役割です。
税効果会計は、上場企業や一部の非上場会社で義務付けられている会計処理です。中小企業では義務付けられていません。税効果会計をするかどうかは自由となっています。
《関連記事》
企業会計と税務会計にはズレが生じる場合があります。企業会計と税務会計で費用の扱いがが異なるからです。
企業会計では費用として認められていても、税務会計では認められない場合や一部のみ認められる場合があります。例えば、企業会計における交際費には上限がありませんが、税務会計においては、中小企業が交際費を損金算入できるのは800万円までです。
計上できる費用の扱いに差があるため、企業会計における利益と財務会計における課税所得に差が埋まれることになります。
このようなズレを解消するために、法人税等調整額を計上します。
上記のような企業会計と税務会計のズレには、一時的なものとズレが解消されないものがあります。
将来ズレが解消されるものを一時差異と呼びます。貸倒損失の場合であれば、実際に貸倒が発生するか、業績改善によって取り消すことでズレは解消されます。
一方、交際費のように、税務会計で経費として認められなかった部分については、将来もずれが解消されることはありません。このようなズレを永久差異と呼びます。
法人税等調整額を計上することでズレを解消するのは、一時差異だけです。
《関連記事》
例:減価償却費:800 実効税率:40% 税務上の減価償却費は200までしか認められない
1年目の法人税等調整額の計算式は以下の通りです。
(800-200)×40%=240
税務上は減価償却費を200計上していますが、800から200を引いた残りの600については計上できていません。600に実効税率の40%を乗じた額を、法人税額調整額として計上します。
仕訳としては以下のようになります。
(借)繰延税金資産 240 / (貸)法人税額調整額 240
2年目の法人税等調整額の計算式は以下の通りです。
(800-400)×40%=160
1年目と2年目で200ずつ減価償却費を計上しているため、800から1年目の200と2年目の200を差し引いた残りの400が計上できていない額となります。
仕訳としては以下のようになります。
(借)繰延税金資産 160 / (貸)法人税額調整額 160
《関連記事》