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簿記2級は転職に有利?活かせる職種とは?

ヒュープロ編集部 川辺
簿記2級は転職に有利?資格を活かせる就職先は経理職だけ?

日商簿記2級は経理職や会計事務所(税理士事務所)への転職を考える人が最低限身につけるべき知識を学べる資格検定試験です。そこで、この記事では、簿記2級で学ぶ内容が実務にどう関係するのか、簿記2級取得でどのぐらい転職で有利になるのかを紹介します。経理職への転職を検討している方はぜひお役立てください!

簿記2級合格に求められる会計知識レベルとは?

簿記検定を開催している日本商工会議所によると、日商簿記2級のレベルとは以下の説明の通りです。なお、本記事では簿記2級は日商簿記2級を指すものとします。

経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つ。
高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。

出典:簿記2級のレベル|商工会議所の検定試験

簿記2級の試験内容ではファイナンス・リース取引や税効果会計、標準原価計算など高度な会計知識が問われます。実務においては、簿記2級レベルの会計知識を有していると、従業員が300名を越える大企業の経理業務を担当することができます。

参考:検定試験出題区分 「商業簿記・会計学」|商工会議所
参考:「工業簿記・原価計算」|商工会議所

したがって、日商簿記2級に合格すれば、比較的大規模な企業の経理職にも転職できるレベルの会計スキルがあると証明できるので、現在既に経理職に就いている人はもちろんのこと、会計業界未経験の方や比較的年齢が高い人で転職を希望している方は、ぜひ自分のスキル証明のために合格しておくのがおすすめと考えられます。

簿記2級を持っているとできること

それでは経理の業務内容に、なぜ簿記2級が役立つのでしょうか。
商工会議所の検定試験のホームページ上には、簿記について以下のように記載されています。

簿記とは、日々の経営活動を記録・計算・整理して、経営成績と財政状態を明らかにする技能です。 簿記を理解することによって、企業の経理事務に必要な会計知識だけではなく、財務諸表を読む力、基礎的な経営管理や分析力が身につきます。また、ビジネスの基本であるコスト感覚も身につきますので、コストを意識した仕事ができるとともに、取引先の経営状況を把握できるために、経理担当者だけではなく、全ての社会人に役立ちます。出典:[簿記とは|商工会議所の検定試験]

上記のように、簿記を持っているということは、経理事務に直結する会計知識や数字を読み解く力があると判断されます。

簿記は初級、3級、2級、1級とレベル分けされていますが、中途採用で有利になるのは「企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベルに達している」と判断される簿記2級からとされています。そのため、企業側も「簿記2級以上の資格を保有している方歓迎」という条件を出しているのです。

簿記2級を保有していることで、先ほど上述した経理の具体的な仕事内容における基礎知識は持っていることになりますので、たとえ未経験であっても、知識がない人に比べ実務経験を積むことでスピードを持ってスキルアップしていくことができます。

簿記2級は経理の転職で有利なのか?

結論から申し上げますと、簿記2級は経理の転職に有利といえます。なぜそう言えるのか、理由を見ていきましょう。

経理の転職市場の現実から見てみると…

経理職は、求人数から見ると一般事務職や営業職に比べ多いとは言えません。一方で、企業としては経理経験者を採用したいと考えるのですが、転職市場に経理経験者は少ないというのも実情です。
そこで、次に出す条件が「未経験だが簿記の資格を持っている人材」となるのです。特に簿記2級以上は転職活動において確実に有利になります。
ただし20代であれば未経験で無資格の場合でも採用対象になる可能性があるものの、30代になり経験も資格も無いとなると選考対象となるのはなかなか難しいでしょう。

簿記2級の難易度から考えると…

また、簿記2級は一般に合格率が30%前後で、簡単とは言えませんが極端に難しい試験ではないです。一方で、簿記2級を必須の条件に据える経理求人は多く存在します。ですので、他の資格と比較して難易度の割には転職時に有利になる度合いが高いのです。

簿記2級が評価される理由

簿記2級は会計の知識を問う検定ですので、合格することによってその知識を有していることが認められるのは当然です。また、日商簿記は知名度や信頼性が高い資格であるため、採用する側としても評価基準として置きやすいという背景もあります。
さらに、簿記2級を取るまでの勉強をした過程自体を、やりきる意志があるという人物面の評価に繋げる企業もあります。

「簿記は転職に意味ない資格」って見たことがあるけど…

「簿記は転職に意味ない資格」という言葉を目にしたことがある方については、上述の内容に懐疑的かも知れません。しかし、こういった言葉は転職市場全体における簿記の価値について使われていることが多く、経理の転職市場に絞った話ではないのです。簿記の知識はあくまでも「経理の専門職として必要な知識」なので、もちろん他の職種ではほとんど使わないこともあります。
ですので、全ての職種で有利ではないものの経理の転職においては有利であるという捉え方が正しいでしょう。

簿記2級を活かせる転職先とは?

では、日商簿記2級を取得した場合、どのような仕事や職業・業種への転職に役立つのでしょうか?簿記2級を活用できる転職先として、以下のようなものが代表的です。

・事業会社の経理・財務職
・会計事務所(税理士事務所)

ただ、それ以外にもその知識を活かせる職場もあるので、紹介していきます。ご自身のキャリア設計にお役立てください!

一般事業会社の経理・財務職

まず転職先の候補になるのが、一般事業会社等の経理・財務職です。

一般事業会社の経理職の仕事

経理は、企業の会計に関する専門職です。1年に1回、決算書を作成して税金の計算をすることがメインの仕事になります。

税金を納めることは、日本国内で活動するすべての企業に求められることですから、経理職は活躍できるフィールドが非常に広い職種と言えます。

また、決算書作成と税金計算の他にも、企業会計に関するさまざまな仕事が経理の仕事の範囲に含まれます。
具体的な経理職業務とは、以下のような仕事があります。

・会社の取引先とのお金のやりとりを管理して帳簿に記録する
・会社従業員の給与計算
・銀行などの金融機関とのやりとり(融資交渉)
・会社内のお金の動きに関する内部管理体制の構築

会社にとって、お金は血液のようなものですから、経理の仕事は会社が活動を続けていく上でとても重要な仕事と言えます。

一般事業会社の財務職の仕事

財務職は会社の資金を管理することがメインの仕事になります。

財務職は企業の新規投資のためにお金を調達する役割を担っているため、会計知識に加えて、交渉力やコミュニケーション能力も求められる就職難易度が高い職種となります。

具体的な財務職業務とは、以下のような仕事があります。

・資金調達:銀行からの借入、投資家からの出資、株式の発行
・予算管理:年間の資金計画管理
・資産調整:社員の給与や経費の調整

財務職は外部関係者とコミュニケーションを取り自社の資金がショートしないように、お金を守る役割を担っています。

会計事務所

会計事務所の仕事は、顧客である企業と顧問契約を結び、経理や税務申告を代行することです。そのため、会計事務所の仕事も経理事務と同じく、簿記に関する知識がとても重要です。経理事務で経験する仕事よりも高度な税務申告全般について経験を積むことができます。

簿記2級の資格を持っている人は転職採用でも有利ですし、会計事務所の仕事にスムーズになれていくことができるでしょう。

コンサルティング会社

コンサルティング会社は企業の課題解決に向けた施策や方針を提案する会社ですが、その中でも経営コンサルティングなどでは企業の経営に関するソリューションを提供するために、財務諸表を読んで企業の経営状況を把握する必要があります。簿記の知識があれば、それらの書類を正確に読み取る力があるため、即戦力になることを期待されます。

法人営業

法人営業に簿記の知識がどう活きるのか、気になる方も多いと思いますが、コンサルと同じく、相手企業の財務諸表がある程度読めている、ご応募でき得る可能性があります。なかでもM&A業界の営業職は直近新卒採用や未経験採用を始めていることもあり、簿記2級合格者からの人けが増えています。

簿記2級は荷が重いという方にオススメの資格

日商簿記2級の合格が営業職等に役立つのは以上の通りですが、営業職等に従事する人の中には、比較的難易度の高い資格試験である簿記2級の合格を目指すだけの余裕がないという人も少なくないはずです。
そのような人は、まずは日商簿記3級の合格を目指すのがおすすめです。
簿記2級を取得しているに越したことはありませんが、経理・財務職以外の職種に従事する人にとっては簿記3級レベルの会計知識で足りることがほとんどだからです。
簿記3級でも貸借対照表と損益計算書など、基本的な会計関連知識を十分に学ぶことができ、ファイナンス的な思考を養うことができます。
なお、日本商工会議所では、日商簿記3級について以下のような説明が加えられています。

業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。

以上より、「自分の仕事は会計に全く関係がない!」「数字や計算は苦手」と即断せずに、「簿記の知識はどんな仕事にも関連するものだ」と真摯な姿勢であるべきです。ビジネスに関わる人であれば取得して損はない資格ですし、ビジネスに関連する情報は積極的に手に入れるようにしましょう!

経理職の転職求人募集の実情

経理・会計職に関する求人募集は多くありますが、給与が高い求人募集や好条件の企業への求人内容では、応募段階において日商簿記2級の取得が必須とされたり、簿記2級と同等の知識レベルを求められたりするのが一般的です。
こういった事例から、簿記2級が会計業界に勤務する者として取得していて当然の資格だと認知されていることがわかると思います。
合格したらすぐに簿記2級の知識が活かせる転職先を探し、どんどん実務経験を積むのがおすすめです。経理のキャリアを積むにつれて市場価値の高い会計人材になれること間違いないからです。
経験の有無にかかわらず転職に役立つことから日商簿記2級は人気の資格ですが、ぜひ果敢にチャレンジしてください!

簿記2級を取得したら目指すべき資格とは?

簿記2級に合格したら、次に目指すことができる資格はたくさんあります。

簿記1級

まずは、日商簿記1級です。
簿記1級は、会計資格の中でもかなりの高度な知識が必要とされる難関資格で、その合格率は約10%前後です。税理士資格試験の「簿記論」よりも難関であるとも言われています。
このように高難易度な簿記1級を取得すれば、大企業の経理も担うことができる経営管理や会計知識のスペシャリストとも見なされることから、就活や転職においても非常に有利になります。

公認会計士・税理士

会計士と税理士はどちらも、会計・税務の最難関資格とも言われます。
どちらも、会計に関する知識が必要となる資格なので、簿記2級の知識があることでかなりスムーズに学習を進めることができるでしょう。
会計士や税理士の資格を持っていれば、経理職だけではなく、税理士事務所・会計事務所・監査法人での就職を視野に入れることも可能です。

経理・財務スキル検定(FASS)

FASS検定(経理・財務スキル検定)は、経済産業省が開発した「経理・財務サービス・スキルスタンダード」をベースに米国テスト理論を取り入れることで、経理・財務分野における客観的な実務知識・スキルの習得度を測る検定試験です。

FASSは合格制度ではなく、5段階のレベル分けで評価されるため、高得点を取ればとるほど、転職に有利になるでしょう。

簿記2級があれば実務未経験でも転職できるのか?

簿記2級があれば未経験でも可能!応募の幅も広がる!

未経験でも経理職に転職することは可能ですし、簿記2級があると応募の幅も広げることができるできます。経理職を求める一般企業や会計事務所は、人材不足が続いており、経験者の採用だけでなく教育体制を整えて未経験人材を育成していく動きも大きくなっています。

経験者に比べると簿記2級の有無問わず不利ではある

ただし、実務未経験者は当然、実務経験者に比べると応募可能な求人が少なくなりますし、応募可能だとしても同じ企業に経験者も応募している場合なども考慮すると選考通過率も低くなってしまいます。ですので簿記2級があるだけで、実務経験なしでも思い通りの転職活動が必ずしもできるとは限りません。選考に臨む際の対策次第で、結果も変わってくるのです。

簿記2級を活かしながら転職活動を成功させるポイント

それではどのように転職活動を進めていくのが良いのでしょうか?今回は未経験の場合に押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。

職種や業界への志望動機を明確にする

まずはなぜその職種に就きたいと考えているのか、自分自身でも理解しておく必要があります。人それぞれのきっかけや志があって応募するので、志望動機に正解はありません。しかし履歴書への記載はもちろん面接時にも聞かれることが多いポイントなので、なんとなくで作成するのではなく、「なぜそう思ったか?」を自問し続けることで明確な志望動機を見つけましょう。また、それを面接時にもアウトプットできるよう準備しておきましょう。未経験だとより一層、重要視されるポイントです!

応募先への志望動機を明確にする

次になぜその企業先に応募したのかという理由も落とし込みましょう。同じポジションの募集は沢山ある中でなぜその企業を選んだのかは、書類選考でも面接でもほぼ必ず選考基準に入っています。志望動機の完成度が低かったり他の企業でも通用するような内容だと、志望度が低いもしくはもし入社してもすぐ辞めてしまうかもしれないという懸念に繋がってしまいますので注意が必要です。企業情報や求人を仔細に確認し、相手に熱意が伝わるような内容を作りましょう。

人材エージェントを活用する

就職・転職活動にあたって、自分で応募する求人を探したり面接の日程調整をするのは骨が折れるものです。そこで活用すべきなのが人材エージェントです。希望の条件やご自身の経歴などを伝えることで効率的に求人を提供され、日程調整もエージェントが実施してくれます。内定を複数社もらった際に断りをいれてくれるなど、心理的負担のある対応もする必要がありません。そういったサービスを無料で受けられるエージェントが多いのも特徴です。

士業・管理部門の転職エージェント「ヒュープロ」では、税理士事務所や税理士法人、一般企業の経理職などでの転職をお考えの皆様のキャリアをサポートさせていただいております。選考にあたって書類添削や面接対策の手厚さや、業界特化だからこそ持ち得ている企業情報や市場感の知識の深さには定評があります。

簿記2級取得者の年収

簿記2級を持っている人の年収について、まとまったデータがあるわけではありませんが、基本的に簿記2級は年収に考慮されないのが現実です。上述した通り選考段階においては効果を発揮するものの、実際に内定を出す段階ではスキルや経験、その企業の給与体系などが大きな要素となります。

簿記2級資格合格者へおすすめの転職時期

簿記2級に合格した後に、経理職や税理士事務所へ転職を考える方もいるかと思います。
経理や税務業界での転職成功の秘訣は、適した転職時期を見極めるということです。
経理や税理士の繁忙期は一般的な決算月である3月の前後、また、税務申告が行われる5月です。繁忙期にはとても忙しい業界になりますので、この時期前から求人が増える傾向にあります。
転職を考えるのであれば、12月頃がおすすめです。

まとめ

今回は、簿記2級を持っていることで転職にどのような有利なことがあるのかについて解説しました。

本文でもみたように、簿記では「決算書を作るための知識」について学習します。「簿記はビジネスマンの基礎知識」といわれることは多いですが、現実には「会計専門職」に転職する場合に活かすことのできる資格といえるでしょう。

簿記で学んだ知識を転職活動で最大限に活かすのであれば、経理事務や会計事務所などの専門職への転職がおすすめです。

このように、経理業界では、資格を取得して能力をアピールできれば、今までのキャリアをいっきに逆転することも可能です。学歴、年齢など、一般的に転職時には不利な条件に陥っているとしても、資格を取得さえすればキャリアを積むことは難しくありません。ぜひ積極的にチャレンジしてください!

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINE編集部の川辺です。転職エージェントとして多くのご登録者様からご相談をいただく際に伺った転職に際しての悩みや不安、疑問を解消する記事をご覧いただけるよう、日々奮闘中です!ご相談はヒュープロ公式Xまでどうぞ!
カテゴリ:転職・業界動向

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