監査への転職を検討するにあたり、企業での内部監査はすべての企業で設置する訳でないため、また、監査法人は公認会計士などに人気の職場のため、転職の難易度が高いです。
本記事では、そんな監査職への転職に成功するための志望動機の書き方のポイントやアピールできる資格について解説します。
監査という仕事は公認会計士しか行えない独占業務で専門性が高いことから、未経験から働くのは難しいというイメージが大きいようですが、そんなことはありません。
内部監査から外部監査へ、外部監査から内部監査へというキャリアチェンジはもちろん、公認会計士試験に合格した未経験者にも採用の間口は広げられているのです。
ただし、難関国家試験の一つとされている公認会計士試験を突破したとはいえ、同じ試験を突破した求職者がライバルとなりますので、それ以外のアピールポイントを持っておくことや、書類選考・面接を有利に進めるためのコツを知っておく必要があります。
そこでまずは内部監査と外部監査、それぞれにおいて多い転職理由から見ていきましょう。
内部監査への転職を希望している人の多くは、キャリアアップのため、やりがいを感じられると思ったという理由を挙げます。一般的に、大学を卒業してすぐに内部監査の仕事をすることはありません。そのため、内部監査への転職を考えている人は、監査法人での勤務経験がある、あるいは、会社の経営に近い総務職などの経験を活かしたい人が多い傾向がみられます。
また、監査法人ではどうしても企業に対してクライアントへのコンサルティングという立場で監査を行う形になるため、監査の知識を活かして当事者として企業に貢献したいという理由で、内部監査を目指す方もいらっしゃいます。
一方で、外部監査を行う職場として一般的な監査法人を希望する理由で最も多いのは、公認会計士としての知識をどこよりも活かせる職場だから、というものです。内部監査と違い、複数のクライアントの監査を絶え間なく行うことになるので、監査業務のスキルが速いペースで習得できるのです。
監査法人はクライアントから適切な報酬を受け取っているため、比較的高年収です。そのため、安定した年収を担保するために転職するといったケースも多いです。
また、監査法人は業務未経験者の採用も行っているため、教育環境が整っている傾向にあります。ですので、そういった環境を求めて転職する方もいらっしゃいます。
志望動機は、書類選考でも面接でも必ず重要視されるポイントです。
「どうして内部監査の業務に携わりたいと思ったのか」、「どうして当社の求人に応募したのか」といった志望動機は必ず面接で聞かれるので、あらかじめ自分の中で模範解答を考えておくのがオススメです。
ここでは、そんな志望動機の考え方について解説していきます。
実務経験が無い場合、まずは監査業務に携わりたい理由を洗い出します。ここについては、ある程度イメージがついており、先ほどご紹介したよくある転職希望理由のいずれかに該当するという方が多いのではないでしょうか。ただし先述した通り、そのまま書くと企業側にマイナスなイメージを与えかねないものもあるので注意が必要です。
例えば、「高年収が実現できる」というのは、直接的な表現は避けた方が良いでしょう。年収さえ稼げればどの業界でもいいのではないか、と考える採用担当が多く、年収の高い他の業界と志望度が分散しているとか、入社してもらってもすぐ退職してしまうのではないかという懸念が出てくる可能性があります。その影響で、面接でそれらをリカバリーする機会も無く、書類選考段階で不合格になってしまうこともあるので注意が必要です。例えば監査法人であれば、高年収がもらえるのはそれだけクライアントから見合った報酬をもらえるということになりますので、「クライアントに寄り添ったサポートを行い、感謝される仕事がしたい」など、業務に絡めた言い方をすると良いでしょう。
「境域環境が整っている」というのも、同様の理由でそのままの表現はやめるべきです。「未経験からでも公認会計士資格を活かして、早い段階から貴社に貢献したい」など、あくまで自分へのメリットではなく、会社への貢献性をアピールすると良いでしょう。
「成長環境で働ける」や、「専門的な知識が習得できる」についてはそのままの表現で大方問題ないでしょう。ただし、「専門的な知識が習得できる」の場合は、早期離職のリスクを企業側に感じさせないために「スキルを習得するとその後のキャリアに役立つ」という部分は書かないようにしましょう。
もちろん「監査」に関わりたい理由だけでなく、内部監査もしくは外部監査で仕事がしたい理由についても、明確に書けるようにしましょう。
次になぜその企業先に応募したのかという理由も落とし込みましょう。監査の求人は沢山ある中でなぜその企業を選んだのかは、書類選考でも面接でもほぼ必ず選考基準に入っています。
志望動機の完成度が低かったり他の企業でも通用するような内容だと、志望度が低いもしくはもし入社してもすぐ辞めてしまうかもしれないという懸念に繋がってしまいますので注意が必要です。
特に監査は行っている業務内容や事業が似ているため、企業ごとの志望動機を作る難易度が高い業界といえます。企業情報や求人を仔細に確認し、相手に熱意が伝わるような内容を作りましょう。
最後にその応募先において自分自身がどのような役割を果たせるのかを考えましょう。こちらはいわゆる自己PRのようなものですが、今までのキャリアや実績をなんでも書けばいいというものではなく、あくまで監査の仕事、さらにその応募先企業で活かせるとアピールできるものでなくてはなりません。
ただし直接的に関係なくても、税務や経理など、監査に関連した業務の経験があれば記載しておけば、適性があると判断されやすくなります。
また、内部監査に携わる人の適性として「物事を客観的に公平な目で判断できること」や「きちんと経営陣に意見ができること」が挙げられます。面接での質問では、このような人柄であるかどうかを判断できるような質問が投げかけられるでしょう。いかに冷静に物事を見ることができ、独立性または客観性を持った言動をとることができるのかを意識しながら、あなたが思う誠実な態度で答えるようにしましょう。
志望動機の書き方を調べると、例文や他の転職者の回答例を見る機会も多いかもしれませんが、それらを参考にするのはあまりオススメしません。なぜなら志望動機は自分自身の本心や実際の経験に基づいてなるべくリアルに書く必要があるからです。
模範例を参考にしてしまうと、どうしてもそれに引っ張られて独自性が薄れたり、本当に書きたいことと乖離することがあります。もちろん、先述したように赤裸々に書き過ぎないように気を付ける必要はありますが、自分の言葉で伝えられるような志望動機にはしていきましょう。
監査へ転職したい場合、転職理由と併せて自己アピールもできるとなお良いでしょう。「このような資格を取得しているので、内部監査として働きたい」といった根拠のあるスキルを証明しつつ、転職をしてどのようなことをしたいのか・どのような点で貢献できるのかを具体的に述べるのです。
監査業務に携わる際には、公認会計士の資格が必須です。そして、監査業務で欠かせないこの公認会計士の資格を取得していることは、内部監査の業務に必要な知識を習得しているという証明にもなります。また、公認会計士の資格を取得していれば、企業を俯瞰して判断することができる能力があるとみなされるため、有利に働くでしょう。
内部監査の転職に関して有利だと判断されやすい資格は「公認内部監査人(CIA)」です。
公認内部監査人という資格は、誰もが受験できる資格ではありません。試験に合格ができても、その後2年間、実務経験を積む必要があるのです。そのため、内部監査人としての知識を得ているだけではなく、実務経験もあることを証明できるので、転職の際に有利に働きやすいとされています。外資系企業はもちろんのこと、日系企業においても評価されるようになり、公認内部監査人の資格を取得する人も増加傾向にあります。
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内部監査にはコミュニケーション能力が求められます。具体的には社内の様々な部門の人からヒアリングして問題点があるかどうかを見極めなければいけなかったり、監査の結果を経営陣にきちんと伝え、問題があれば改善を促さなければいけません。そういった点での能力をうまくアピールしていけると良いと思います。
本記事では、監査への転職理由として多いものや、どのような志望動機を伝えれば評価が高くなりやすいのかについてまとめました。監査への転職を本気で考えている人は、なぜ監査の仕事に携わりたいのか自問自答し、面接のシミュレーションも行うようにしましょう。
転職はこのように「自分と向き合う」ことが非常に重要なのです。内部監査に有利な資格を取得しているからといって、この自問自答を甘くみてはいけません。
またこのような自己分析や志望動機を考えるのに転職エージェントを活用するのも手段の一つです。キャリアアドバイザーとの面談でアドバイスなどがもらえるでしょう。