未経験から経理としてのキャリアを目指すなら、20代のうちに転職を目指しましょう。経理は実務経験に基づくスキルが重要視される職種であるため、未経験採用は比較的年齢が若い人が重視されるのが実情です。今回はこれから経理職への転職を目指す方向けに、転職活動のポイントを解説します。
業界経験者は即戦力になり得やすいため、どの業界であっても経験者の採用ニーズは高いです。経理職の仕事には専門知識が必要になるものも多いため、よりその傾向が強いといえます。そんな中で、20代の未経験者が経理に転職できる可能性はあるのか、解説します。
結論、20代であれば未経験からの経理への転職は十分に可能です。その理由は、経理の転職市場が若手労働力の減少による売り手市場となっていることにあります。
現実、採用選考にはどうしても年齢が関係します。未経験者の採用においては、特にその傾向が強くなってきます。もちろん若いほうが採用ニーズが高いため、20代は最も採用されやすい年代といえます。その理由として、多くの企業が20代に対してポテンシャル採用という採用手法を導入していることにあります。
ポテンシャル採用とは、これまでの実績やスキルよりも、今後発揮することが期待される潜在能力の有無を重視して有望な人材を採用する方法のことです。どのようなポイントで「潜在能力がある」と判断するかは業界ごとに変わってきますが、適性のある志向性を持っていたり、関連するスキルや資格を持っている人の評価が高くなります。
経理職ではどのようなスキルや資格、志向性があると良いのかについては、後述します。
ポテンシャル採用の対象者は、1から業務について教育や研修をしなければならないため、それなりの人的コストがかかります。そのため、長期的就業が期待でき、吸収力が高く成長スピードの速い20代を優先して採用するのです。
雇用対策法により採用時の年齢制限は「原則禁止」とされていますが、その例外として「長期勤続によるキャリア形成のため若手人材を採用する場合(例外事由3号イ)」を挙げています。この例外事由を明記して、求人の年齢制限をする企業も多く、そのほとんどが20代までと定めています。
つまり、未経験から経理に転職して専門的なスキルを身につけるなら、20代のうちにしておくのがよいといえます。
ただし、社内や所属する部署内の年齢層が高く、20代の採用はしづらいなど、企業固有の事情が優先して考慮されるケースも稀に存在しますので、ご留意ください。
未経験者において、20代が他の年代よりニーズが高いのと同様に、20代の中でもより若い方が有利であるといえます。ただし当然ですが、年齢以外の要因次第な部分もあります。
例えば、20代前半だとしても新卒であれば社会人の経験がある20代後半よりは採用されにくいでしょう。特に経理は業務の専門性が高いこともあり、新卒向けの求人が少ない傾向にあります。
一方で20代後半だとしても、ポテンシャル採用が適用されるような適性を認められれば、十分に転職できる可能性はあるでしょう。
まず、経理未経験の皆様に向けて、経理の業務とはどのようなものなのかご説明します!
まず、経理職は事業会社の財務状況を管理する重要なポジションです。
基本的な仕事内容は以下の通りです。
日次業務
月次決算業務
年次決算業務
また、子会社をもつ上場企業などになると、連結決算などの難しい業務も担当できるようになります。
上述の通り、経理の仕事内容は会社の規模によっても大きく変わってきます。具体的には下表の通りです。
上場企業などの大企業 | 子会社の連結決算などを含む複雑な経理業務が発生します。売上の規模などが大きいため、基本的にチーム内で分業をして決算業務などを行うことが多いでしょう。 |
ベンチャー企業 | ベンチャー企業は上場を目指すようなフェーズである場合、経理担当の業務も非常に複雑で、重要になってきます。IPO準備中のスタートアップ企業で、上場準備に携わることは今後の経理のキャリアに大きなアドバンテージとなります。 |
中小企業 | 中小規模の企業では、従業員数や取引の規模が小さくなるため、1~数人で経理を担当することが多いでしょう。日々の記帳から決算まで、1人で行うこともあるため、経理の業務を幅広く行うことができるのが特徴です。 |
経理とひとえに言っても、1年間を通して多岐にわたる業務があります。3月決算の企業の場合、下表のように業務が月ごとに変わっていきます。
4月 | 軽自動車税、固定資産税・都市計画税第1期分の税金納付 |
5月 | ①法人税等、消費税等(課税事業者のみ)の確定申告と納付 ②自動車税の税金納付 ③株主総会の招集 |
6月 | 株主総会の開催 |
7月 | ①源泉所得税の納付(納期特例を受けている場合) ②固定資産税・都市計画税第2期分の税金納付 ③健康保険、厚生年金保険の定時決定 |
8月 | 消費税等の中間申告と納付(一部の企業のみ) |
11月 | 法人税等の中間申告と納付(一部の企業のみ) |
12月 | ①年末調整 ②固定資産税・都市計画税第3期分の税金納付 |
1月 | ①固定資産税の償却資産に関する申告 ②源泉所得税の納付(納期特例を受けている場合) ③法定調書の提出 ④給与支払報告書の提出 ⑤支払調書の作成 |
2月 | ①固定資産税・都市計画税第4期分の税金納付 ②消費税等の中間申告と納付(一定の企業のみ) |
3月 | ①棚卸 ②年次決算 |
経理の実務未経験者として入社した場合は、最初の数年間は会計ソフトの入力作業や請求書・領収書のファイリング、銀行振り込み業務といった基本的な経理実務からスタートすることが多いでしょう。特に、現在の経理業務は会計ソフトを使うのが基本になっていますから、このタイミングで習熟しておくことがとても大切です。
経理は1年ごとのサイクルで業務が進んで行きますが、特に重要な業務が年次決算業務です。これは1年間の会社の活動を会計的に評価し、最終的に損益計算書や貸借対象表といった財務諸表を完成させることを目指す業務です。
財務諸表の数値に基づいて、その会社が収める税金の金額や、金融機関からの評価が決まりますので、経理は極めて重要な役割を持った職種であるといえます。特に、「金融機関からどのような評価を受けるか」は会社の資金繰りに直接的な影響を与えますから、最悪のケースでは会社の倒産といった事態を招く可能性があります。こうした業務の性質から、経理には非常に重大な業務が求められます。
数値の誤りは一円単位でも誤差があると信頼性に傷がついてしまう職種ですから、未経験から経理職を目指す方は、ご自身に経理職の適性があるかをしっかりと吟味してから転職活動を始めるようにしましょう。
高度な数学が得意である必要はありませんが、少なくとも数字は見るのも嫌い、プライベートでもお金の管理は苦手…という方は、経理という仕事が本当に向いているかどうか検討してみる必要があります。
先でもご紹介したように、ポテンシャル採用においては、これまでの異業種での経験や資格が有利になることがあります。具体的にどんなスキルや資格が活かせるのか見ていきましょう。
もちろんどんなスキルでも経理に活かせるというわけではありません。特に社会人経験をしている場合は、経理の仕事との親和性が高ければ高いほど活かしやすいといえます。
税理士法人や税理士事務所では、企業の経理職が行う業務の代行をしています。そのため企業の経理に転職するとしても、対象がクライアントから所属する企業に変わるだけなので、活かしやすい経験であるといえます。
会社の売上に貢献する直接部門である営業職と会社のお金を管理する間接部門である経理職とでは、なかなか親和性を感じにくいかもしれません。しかし、営業職でクライアントに商材を売り込む際などに身に付くビジネスコミュニケーション力や結果を追い求めるにあたってのコミット力は、経理職にも必要とされます。
経理職への転職活動において最もポピュラーな資格は簿記検定、中でも日商簿記2級でしょう。ただ、いくらポテンシャル採用の対象である20代とはいえ、日商簿記2級を所持しているだけでは一概に有利とは言えません。日商簿記2級は未経験者向けの経理職求人で必須資格として設定されていることも多いため、むしろ「未経験者が最低限持っておくべき」資格という表現の方が正しいでしょう。
それ以上のレベルの資格として、日商簿記1級や税理士、公認会計士などが挙げられ、これらは有利な資格に該当します。
ただ難易度がかなり高いこともあり、これらを取得して経理職への転職を目指す20代はあまり多くありません。それだけに取得すれば差別化できるものの、最低限の日商簿記2級を取得して、他の部分で差別化を図る方が大多数です。
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経理職に向いている人材は、つまり経理職に求められている人材ということです。特に未経験者のポテンシャル採用にあたっては、上述したようなスキルや資格に加えて、経理への適性があるかどうかを重視します。全てに当てはまっている必要はありませんが、以下のような特徴にマッチしている場合は、アピールできるようにしておきましょう。
経理職に従事する上でどうしても避けられないのが、数字と向き合うことです。数字や計算が好きである必要はありませんが、数字は見るのも嫌だという方には続けることが難しい仕事です。日々の業務で難しい計算式を要することなどは少なく、あったとしてもエクセルなどで管理しているため、セルに入力すれば自動で計算してくれます。ただし、簿記の勉強をする際は難しい計算式などを覚える必要があります。
これは経理職に限った話ではありませんが、パソコンでデータを管理することがほとんどなので、パソコンを使えることが大前提となります。「使える」と一言にまとめても、WordやExcelを最低限使えれば問題ないでしょう。
経理では決まりごとが多くあります。例えば、その日までに処理を終わらせなければいけない締めや、必ず毎日行うルーティンワークなどがあります。その時やらなければいけないことを、先延ばしにしてしまう癖のある人は気を付けましょう。
企業のお金を管理する経理の仕事でミスは許されません。大きい会社であればあるほど、自分のミスが後工程に大きく影響を与えることがあります。初めは小さなミスですが、いつの間にか大きなミスになっていることも少なくありません。場合によっては一円を合わせるために、原因を探すようなこともあります。営業などのように何百万の売上をあげるといったような、目立つ仕事ではなく地道な仕事が多いですが、その一つ一つに責任を持って取り組める人が経理に向いていると言えます。
未経験の経理職として20代で転職する場合、平均年収は300万円前後です。一方で、実務経験者としての中途採用では、年収500万円〜での初年度年収を得られるケースも少なくありません。
経理職の年代別平均年収は以下の通りです。
20代 300万円前後
30代 400万円前後
40代 500万円前後
50代 600万円前後
また、基本的には企業規模の大きい企業の求人ほど、求められる実務スキルが高くなる分、平均年収も高くなる傾向があります。経理は実務経験者が重視される職種ですので、「未経験者」をいかに早く卒業するかが年収アップのポイントと言えるでしょう。
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未経験からの転職を目指すのであれば、経験者よりも入念に準備をしておくのがよいでしょう。ここでは、特に準備すべきポイントを解説していきます。
経理未経験の20代で経理職を目指す場合、経理になったら自分がどうしたいのかキャリアパスをしっかり描いた上で、選考に臨むようにしましょう。面接の際、今後のキャリアパスは必ず聞かれます。いざその場になって詰まってしまうことがないよう、事前に準備をした上で挑むことが重要です。
経理のキャリアパスとしては管理職を始めとして、子会社管理や工場管理、また海外支店の担当など多岐にわたります。もしキャリアパスとして海外支店の担当や海外出向を希望するのなら、英語や中国語などの語学を身に付け、「経理の経験以外は担当となる要件を満たしている」ことをアピールしましょう。そうすることで、不足している要件が経理の実務経験だけであること、また20代のうちに経理の実務経験さえ積めば、描いているキャリアパスを今後実現させられることを相手にしっかりと伝えることができます。
これまでの経理としての実績でアピールできる経理経験者と違い、未経験者は「今後活躍するであろうという期待」を採用側に持ってもらうだけのアピールを、ご紹介したような様々な観点から行わなくてはなりません。持っている資格、親和性のある社会人経験、向いている特性などの中で、何をアピールすれば評価されるのかを整理しておく必要があります。
そして書類選考でも面接でも重要になってくるのが、「志望動機」です。未経験者については、「経理への志望動機」→「応募先企業への志望動機」の順に考えることをオススメします。
まずはなぜ経理職として働きたいとのか、自分自身でも理解しておく必要があります。人それぞれのきっかけや志があって応募するので、志望動機に正解はありません。
しかし履歴書への記載はもちろん面接時にも聞かれることが多いポイントなので、なんとなくで作成するのではなく、「なぜそう思ったか?」を自問し続けることで明確な志望動機を見つけましょう。また、それを面接時にもアウトプットできるよう準備しておきましょう。
次になぜその企業先に応募したのかという理由も落とし込みましょう。同じ経理職の募集は沢山ある中でなぜその企業を選んだのかは、書類選考でも面接でもほぼ必ず選考基準に入っています。
志望動機の完成度が低かったり他の企業でも通用するような内容だと、志望度が低いもしくはもし入社してもすぐ辞めてしまうかもしれないという懸念に繋がりますので注意が必要です。企業情報や求人を仔細に確認し、相手に熱意が伝わるような内容を作りましょう。
志望動機は書類選考でも面接でも重要なポイントですが、志望動機をしっかりと考えただけで、必ず内定を勝ち取れるわけではありません。特に面接においては志望動機以外にも、様々な質問をされることになりますので、面接対策は必須といえます。具体的に未経験者が聞かれるのは、以下のような質問です。
このような質問に対してどのように答えるべきなのか、また答える際の注意点などについて、詳しくは以下の記事をご参照ください。
20代で経理を目指す人の中には、新卒からの就職や初めての転職という方も多いでしょう。そのような方はいくら上記のようなポイントを見ても正解が分からず、自信が無いまま転職活動に苦戦する方も少なくありません。
そんなときは、転職エージェントを活用するのがオススメです。転職エージェントには、日々経理の求人情報が入ってくるのはもちろん、キャリアプランに合った転職のサポートが可能です。
また、月次決算や四半期決算になると、経理にはどうしても面接に行くことが難しい期間が発生してしまいます。そんなときも、転職エージェントを通していれば面接先企業との日程調整をエージェントにすべて任せてしまえます。日々締め切りに追われる経理だからこそ、転職の面倒な部分は転職エージェントに任せてしまい、ベストな転職活動ができる体制を整えましょう。
ヒュープロは経理などの管理部門の求人に強い転職エージェントですので、是非ご相談いただければと存じます。
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今回は、これから未経験で経理への転職を目指す20代の方向けに、経理職としてのキャリアの積み方や転職活動のポイントを解説しました。経理職は所属する企業の規模と、求められる実務スキルによって評価が大きく変わる職種です。(つまり稼げるお給料の金額が変わります)
未経験で経理への転職を目指すなら、目先の年収にこだわることも大切ですが、どのような実務経験を積むことができるのかをよく見極めることが、長期的にみてあなたのキャリアにプラスにつながる可能性が高いでしょう。ぜひ参考にしてみてください。
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