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要管理債権とは?具体例をもとに簡単解説!

HUPRO 編集部
金融機関の要管理債権

要管理債権について定める「金融再生法」とは

金融再生法は、銀行などの金融機関がどのようなときに破綻したとみなされるのかについて定めている法律です。金融機関が破綻するような事態が発生すると、国の金融システムに対する信頼性が大きく揺らいでしまいます。場合によっては一つの金融機関の破綻が、取り付け騒ぎなどの騒動を引き起こす可能性すらあります。

金融再生法が制定された平成10年は、消費税が3%から5%に引き上げられた翌年で、個人消費が大幅に落ち込んだことにより大幅な不況となった年です(いわゆる「金融危機(第二次平成不況)」の年)

この年には金融機関の経営破綻が大きな問題となり、不良債権処理の一環として中小企業への貸し渋りが大きな問題となりました。こうした事態に対処するために、国は金融機関に対して、貸付先の企業の信用リスクを一定の基準で評価することを求めます。

具体的には、適時に保有している債権の開示を義務付けることによって、金融機関に不良債権の処理をうながし、破綻を未然に防ぐことを目指す意味があります。金融再生法による開示はその後も継続的に行われており、直近では令和元年9月期の開示が行われています(令和2年2月21日金融庁発表)

金融再生法における要管理債権の定義

金融再生法では、貸付先の企業を、財務状況別に区分して開示するよう義務付けています。

具体的には、以下の4つの区分があります。
・破産更生債権及びこれらに準ずる債権
・危険債権
・要管理債権
・正常債権
(なお、これは金融再生法による開示基準に基づく分類です。金融機関が自己査定を行う際には破綻先・実質破綻先・破綻懸念先・要注意先・正常先に分類します)

金融機関は、これらの分類に応じて、貸付先の貸し倒れに備えた引当金を積み立てる必要があります。会計上、引当金を計上するためには、信用リスクに応じた引当率を適用しなくてはなりません。当然ながら信用リスクが高い貸付先であるほど、高い引き当て率が設定されることとなります。

高い引当率によって引当金を設定した場合、会計上は貸倒引当金繰入というかたちで多額の損失が計上されることとなりますら、貸付先の経営状況の悪化は、金融機関自身お経営悪化に直結します。以下では、それぞれの区分の意味について大まかに理解しておきましょう。

破産更生債権及びこれらに準ずる債権

「破産更生債権及びこれらに準ずる債権」は、すでに経営が破綻しており、各種の法的整理手続きが開始されている企業に対して貸し付けている債権です。具体的には、破産・会社更生・会社再生等について、裁判所による手続き開始決定が出されている企業を言います。金融再生法による開示債権の中では、もっともリスクが高い債権に分類されます。

危険債権

「危険債権」は、経営破綻にまではまだ至っておらず、事業活動は正常に続けているものの、経営成績と財政状態が極めて悪化している企業に対して貸し付けている債権を言います。

一般的に経営成績は損益計算書で、財政状態は貸借対照表によって判断されますが、貸付契約の内容通りの元本・利息の弁済ができない可能性が高いと判断される場合には、この危険債権に分類されます。金融再生法による分類では、2番目に信用リスクが高いとされる企業に対する債権です。

金融再生法における要管理債権の定義

要管理債権

「要管理債権」は、すでに3ヶ月以上にわたって元本・利息の延滞が生じている貸付先です。経営状況の再建・支援の目的で貸出条件の緩和などの措置が取られている貸付先で、金融機関側から見て信用リスクに見合った収益が確保できない場合には、この要管理債権に分類する必要があります。

金融機関の本来の業務は、貸付先の信用リスクに応じて貸付利率を設定して収益を上げることです。しかし、経営破綻が懸念される貸付先に対して、本来のリスクに見合った貸付利率を設定してしまうと、実質的な破綻状態を招いてしまう可能性があります。

こうした事態を避けるために、金融機関は貸付条件の緩和や返済のリスケジュールを認めることがありますが、このような措置を講じている貸付先に対する債権は要管理債権として注視することを求めているのです。

正常債権

「正常債権」は、上で説明した3つの状況に該当しない企業に対して貸し付けている債権のことをいいます。いわば「今のところ問題のない企業」です。貸付契約の内容に従った元本と利息の返済が行われている企業で、経営成績や財政状態にかんがみて今後もスムーズな債権回収が見込める企業を意味します。

要管理債権が問題となった具体例

要管理債権が問題となった具体例としては、2017年に三菱UFJフィナンシャル・グループが、貸付先である東芝を「要管理債権」として分類したことが挙げられます。

三菱UFJフィナンシャル・グループはこの分類変更によって1600億円弱の貸付金に対して、およそ700億円の貸倒引当金を計上することとなりました。これは三菱UFJフィナンシャル・グループの当期純利益の10%程度に相当する金額です。貸付先の経営悪化が金融機関の経営に与える影響の大きさを印象付ける例と言えます。

まとめ

この記事では、要管理債権という言葉の定義について解説しました。金融債権法は金融機関に対するルールですので、私たちの普段の生活ではあまり馴染みがないかもしれませんが、経済ニュースではしばしば言及されることがあります。ぜひ参考にしてみてください。

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