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雑損控除で住民税は安くなる?計算方法や申告手続きを解説!

HUPRO 編集部
住民税の節税

地震や火災などによって生活に被害が出た場合には、税金の計算上「雑損控除」という特別なルールを適用してもらえる可能性があります。これは所得控除の一種で、所得税や住民税といった税金が安くなる仕組みです。今回は雑損控除が適用される具体的なケースや、控除額の計算方法を紹介します。

雑損控除で住民税が安くなる仕組み

雑損控除は、あなたや家族が災害等によって被害を受けたときに、所得税や住民税の負担を小さくしてもらえる仕組みです。

具体的には、「所得控除」という仕組みによって税金の負担が小さくなるかたちになっています。所得控除には医療費控除や社会保険料控除など14種類のものがありますが、雑損控除もこのうちの一つです。なお、雑損控除の適用が認められるのは、以下のような原因によって被害を受けた場合です。

(1) 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
(2) 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
(3) 害虫などの生物による異常な災害
(4) 盗難
(5) 横領
なお、詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。

参考:災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁HP

所得控除とは?

所得控除とは、その名の通り「その年の所得金額から、一定額を差し引きしてもらえる(控除してもらえる)仕組み」のことです。所得税や住民税は、1年間の所得金額に応じて課税される税金ですので、所得控除によって所得金額が小さくなれば、その分だけ税額も安くなります。

なぜこのような制度が認められているかというと、以下のような理由があります。所得の金額がまったく同じであっても、人それぞれの状況によって負担できる税額には違いがあります。

例えば、同期入社で給料が同じサラリーマンでも、「独身の人」と、「専業主婦の奥さんと子供2人がいる人」とでは、生活していく上での必要な支出は全く異なるでしょう。同様に、災害によって大きな被害を受けた人と、そうでない人とでは負担できる税金の金額は異なります。雑損控除は、こうした違いがある人どうしで、不公平感が生じないようにするために設けられているルールなのです。

雑損控除の計算方法

雑損控除によって、税金が具体的にどのぐらい安くなるのかをみていきましょう。以下の(1)と(2)のいずれか「大きい方の金額」になります。

(1) 差引損失額−総所得金額等×10%
(2) 差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円

例えば、以下のような状況だったとしましょう。
・差引損失額:200万円
・総所得金額等:300万円
・差引損失額のうち災害関連支出の金額:100万円

(1) と(2) のそれぞれの金額は、以下のように計算できます。
(1) 200万円−300万円×10%=170万円
(2) 100万円−5万円=95万円

この場合は(1)の金額が大きいため、雑損控除の金額は170万円となります。
その年の総所得金額等300万円から、雑損控除170万円を差し引きし、その他の所得控除(医療費控除や社会保険料控除など)をさらに差し引きします。その差し引きした金額に所得税率や住民税率を掛け算すると、その年の所得税や住民税の金額を計算することができます。なお、上の計算によって、その年の総所得金額等から引ききれない金額がある場合には、翌年以降3年間にわたって、損失を繰り越すことが可能です。

差引損失額

雑損控除の金額を求めるためには、まずは災害等によって実質的に被った被害額である「差引損失額」を計算する必要があります。差引損失額は、以下の計算式によって計算できます。
差引損失額=「損害金額」+「災害等に関連したやむを得ない支出の金額」−「保険金などにより補てんされる金額」

損害金額

「損害金額」とは、災害などによって被害を受けた財産の時価です。
ここでいう「財産の時価」は、以下の計算式によって計算できます。
(取得価額−減価償却費)×被害割合

なお、住宅について取得価額が明らかでない場合には、以下の計算式で代用することも認められています。
損失額=(1㎡当たりの工事費用×総床面積-減価償却費)×被害割合

雑損控除

減価償却費

ここでいう「減価償却費」は、以下の計算式で求めます。
減価償却費=取得価額×0.9×償却率×経過年数

償却率は、財産の種類別に法律で決まっていますので、国税庁のホームページで確認しましょう。
参考:「減価償却費」の計算について|国税庁HP

なお、事業用に使っている資産であれば、毎年の決算で減価償却費の計算を行い、減価償却累計額を計算しているはずです。この場合は、取得価額から減価償却累計額を差し引きした金額が時価となります。

被害割合

「被害割合」については、被害の状況に応じて15%〜100%の割合が設定されます。例えば、二階建て以上の建物で「床上1m以上1.5m未満の浸水」があった場合には、被害割合は住宅で50%、家財で85%となります。

国税庁のホームページでくわしい計算方法が記載されていますので、参考にしてみてください。
参考:被害割合表|国税庁HP

災害等に関連したやむを得ない支出の金額

「災害等に関連したやむを得ない支出の金額」とは、災害によって被った被害を原状回復するために支出した費用のことをいいます。
例えば、床上まで浸水した家屋を清掃するために要した費用などが該当します。これらの作業を依頼した業者から受け取った請求書等を使って支出の合計額を計算しましょう。

保険金などにより補てんされる金額

災害を受けた時に、保険会社などから保険金を受け取っている場合には、その金額を「保険金などにより補てんされる金額」として計算から控除しなくてはなりません。
他人から受けた損害について損害賠償金などを支払ってもらった場合にも、この「保険金などにより補てんされる金額」に含めます。

雑損控除を適用してもらうための手続き方法

雑損控除を所得税・住民税に適用してもらうための手続き方法を理解しておきましょう。まず、所得税については、税務署に対して確定申告を行うことによって雑損控除の適用を受けることができます。被害を受けた翌年の2月16日〜3月15日の間に、税務署に確定申告書類を提出しましょう。

一方で、住民税については、所得税の金額に基づいて市区町村が計算をして納税者に通知してきます。そのため、所得税の申告をやっておけば、住民税について手続きは何も必要ありません。

ただし、所得税の計算について「災害減免法」の適用を選択した場合には、住民税については別途申告手続きを行う必要が生じます。この場合は、上記の確定申告期間中に、(税務署ではなく)市区町村に対して申告書を提出しましょう。

まとめ

この記事では、雑損控除によって住民税が安くなる仕組みについて解説しました。雑損控除は、災害等によって被害を受けた人であればどなたでも利用することができる制度です。計算方法は一見複雑に見えますが、本文で解説いたしましたポイントを押さえていけばそれほど難しいことはありません。ぜひ利用を検討してみてください。

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この記事を書いたライター

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