社会保険労務士の仕事に興味のある方や資格勉強中の方は、補助の仕事からはじめて経験を積みたいと考えることがあるでしょう。しかし社会保険労務士の補助とはどんな仕事内容なのか、詳しくは知らない方が多いはずです。そこで今回は、社会保険労務士の補助の仕事内容について解説していきます。
社会保険労務士には「独占業務」と呼ばれる業務があり、労働・社会保険に関する申請書類や帳簿の作成、提出代行業務等を指します。社会保険労務士法第2条1項の1号および2号に定められることから、1号業務、2号業務といいます。独占業務に関しては細かな内容まで間違いなく記載するという難しさはありますが、記載内容や添付書類などがある程度定まっており定型化もしやすいため、補助者が多く携わる業務です。
1号業務の例としては、雇用保険や社会保険の被保険者資格取得・喪失、労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎届の作成、各種助成金の申請などが挙げられます。2号業務は、労働者名簿や賃金台帳、出勤簿などの重要書類を作成する業務です。
近年とくにニーズが高まっているのが、社会保険労務士法第2条1項3号が定める助言、指導等(コンサルティング)です。具体的には、クライアント企業に対して、人事・賃金制度の設計・構築、メンタルヘルス・ハラスメント対策、臨検調査への対応、福利厚生等について、提案やアドバイスをおこないます。
独占業務ではないため資格は必要ありませんが、クライアント企業の課題をみつけだし、正しい法令の知識をもとにアドバイスしなくてはなりません。その意味では難易度が高く、経験も問われるため、補助者がいきなり3号業務を任されることは多くありません。ただし社会保険労務士から指示を受けて、資料収集などのサポートをすることは考えられます。
このほか、社会保険労務士事務所等では、企業の従業員の給与計算や年末調整等の業務を請け負うケースがよくあります。ミスなく正確に計算するという緊張感のある仕事ですがその分やりがいもあり、専用ソフトの入力など定型的な作業も多いため、補助者が活躍する分野です。
また社会保険労務士は年金にかかわる唯一の国家資格なので、個人向けの年金相談や、公的制度を中心としたお金に関する相談全般を受ける場合もあります。たとえば金融機関では窓口業務の一環として顧客の年金相談に応じることがあり、社会保険労務士や年金アドバイザー等の資格取得が推奨されています。この場合は補助者というより窓口の担当者となるため、相応の知識がないと対応できないでしょう。
このように、社会保険労務士の仕事内容は多岐にわたり、それにともない補助者の仕事内容も変わってきます。なにをもって「補助者」というのかについて明確な定義はありません。電話応対やお茶出し、郵便物の手配等、いわゆる庶務的な仕事に集約されるケースもあり、勤務先の考え方によって異なります。
社会保険労務士の補助者が働く先として典型的なのは、社会保険労務士事務所や社会保険労務士法人です。所長と何名かの従業員が社会保険労務士として活動し、その補助をするスタッフとして事務スタッフやパート、アルバイトなどを雇うケースが一般的です。
労働問題を取り扱う法律事務所でも、リーガルスタッフとして社会保険労務士の有資格者を募集しているケースがあります。税理士事務所や司法書士事務所等、ほかの士業事務所で補助スタッフとして募集するケースもあります。
なお一般の事業会社の場合は、従業員が社内業務として手続等をおこなうことは問題ないため、社会保険労務士がなくても業務に就くことができます。したがって、事業会社では社会保険労務士補助というより、担当部署(人事や総務など)での採用を目指すことになるでしょう。
社会保険労務士の補助者を募集する求人をみると、「経験不問」「無資格でも歓迎」をうたうケースは少なくありません。したがって、知識や経験がゼロでも応募することは可能ですし、実際にその状態から業界に入り活躍されている方もいらっしゃいます。
ただし、単なる事務作業だと思っていると転職してから苦労するかもしれません。補助といっても、労働・社会保険関連法令や制度の知識が求められるからです。
また社会保険労務士事務所は多くの場合で少数精鋭であるため、経験・知識がまったくのゼロの従業員を育てる余裕がないケースもあります。基本的には、社会保険労務士資格の受験生であるか、一般企業で人事・労務部門で働いた経験があるか、少なくとも事務職の経験者であることが、採用にあたり有利な事情となるでしょう。
経験者や有資格者と比較すれば採用されるハードルが高いものの、
無知識・未経験でも補助業務に就ける可能性は十分にあります。このような人が採用されるケースとしては、まず成長意欲が高く、人柄が素直な方が考えられます。法令や制度の知識を得ようと努力するので、その分仕事を覚えるのも早いと考えられるためです。また、補助者として顧客へ対応する、チームのひとりとして業務に携わるといったケースも多々あるため、コミュニケーション能力が高い方や貢献意欲の高い方も採用の可能性が高まります。
補助の仕事に向いているのは、次のような方です。
ちなみに資格勉強中の方や、資格はあるが実務未経験の方のように、近い将来に社会保険労務士として活躍したい方へのニーズは多くあります。事務所等によっては勉強しやすい環境を整えてくれたり、先輩のすぐ近くで貴重な経験を積ませてくれたりしますので、所長等の考え方を聞いておきましょう。
社会保険労務士の補助の仕事内容は、労働や社会保険の分野における書類作成や申請などのサポートが中心となります。ただし実際には働く先によって大きく異なり、単純な事務作業を任されるケース、社会保険労務士と同じような業務を担うケースとさまざまです。転職の際には仕事内容をよく確認しておきましょう。
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本記事は松澤社会保険労務士法人に監修していただきました。
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