介護については、いずれ自分も家族の介護をしなければならないのではと思っている方も多いのではないでしょうか。高齢化社会の到来により、介護による離職が深刻化しており、その解決のために平成29年1月1日に「育児・介護休業法」の改正が施行されました。
本記事では、介護休業の内容と条件、間違われがちな介護休暇との違いについて解説します。
介護休暇と介護休業は見た目はそっくりですが、内容が異なります。まずは介護休業について見ていきましょう。
介護休業は、対象家族1人につき:通算93日まで取得可能です。
通算なので、分割して取得ができます。分割可能回数は3回までです。
介護休業については、介護休業給付金が雇用保険より支給されます。
支給対象となる1回の介護休業期間(ただし、介護休業開始日から最長3か月間)について支給されるものです。
介護休業給付金:休業開始前賃金の67%
介護休業を開始するにあたっては、以下の書類を事業所の所在地を管轄するハローワークに提出する必要があります。
介護休業給付の申請手続は、原則として、事業主を経由して行う必要がありますので、労務担当者は注意してください。
【受給資格確認に必要な書類】
1.雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
2.賃金台帳、出勤簿又はタイムカード(1.に記載した賃金の額及び賃金の支払い状況を証明することができる書類)
【支給申請に必要な書類】
1.介護休業給付金支給申請書
※個人番号欄にマイナンバー(個人番号)を記載ください。
2.被保険者が事業主に提出した介護休業申出書
3.住民票記載事項証明書等(介護対象家族の方の氏名、申請者本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書類)
4.出勤簿、タイムカード等(介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類)
5.賃金台帳等(1.の申請書に記載した支給対象期間中に支払われた賃金の額及び賃金の支払い状況、休業日数及び就労日数を確認できる書類)
※上記の他、対象介護休業期間中に対象家族が死亡した場合には、必要に応じて戸籍抄本、死亡診断書、医師の診断書などを添付してください。
介護休業給付金の原資は、雇用保険です。
そのため、雇用保険の被保険者に限られます。
なお、労使協定により介護休業の対象外とすることができます。
①入社1年未満
②申出の日から93日以内に雇用期間が終了
③1週間の所定労働日数が2日以下
有期雇用の場合については、介護休業を申し出する時に以下の条件を満たしている必要があります。
①入社1年以上
②介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
つまり、無期雇用でも有期雇用でも入社1年以上が経過しているところが最低ラインです。
また、介護休業の申し出日から取得の最大日数である93日以内に雇用が終了しないことも必要。
例えば今から仕事を辞めるという前提では、介護休業は取得できません。
介護休業は育児休業と同様、復帰を前提としている制度なのです。
自分が介護休業を取得する際の対象家族は以下の範囲に当てはまる人です。
基本的に2親等以内ということになります。
・配偶者(事実婚を含む)
・父母
・子
・配偶者の父母
・祖父母
・兄弟姉妹及び孫
※介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子を含む)のみ
例えば、父親が要介護状態になり、介護休業の支給要件を満たす子が2名いる場合、それぞれ介護休暇を取得することが可能です。
介護休業が認められるのは、(2)の家族が「要介護状態」にある場合です。具体的には以下の状況が該当します。
負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護 (歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること)を必要とする状態。
なお、介護休業については1人につき93日と決まっています。例えば、ケガで要介護状態になって93日の介護休業を使いきってしまった場合、次に同じ人が痴ほうによる要介護状態になっても、介護休業の対象にはなりません。
介護休業と間違われやすいのが「介護休暇」です。
要介護状態にある対象家族の介護や世話を行う労働者に対し与えられる休暇で、年次有給休暇とは別に与えられる休暇のことを差します。
対象者が同じで、その要件も似ていますが、介護休暇は介護休業とは異なり、連続ではなくスポット的に使うことができる休暇です。
介護休暇は半日単位から利用できるので、例えばデイサービスのお迎えや、公的機関への届出といった所用に活用できます。
ただし、介護休暇は法的に休暇取得はできますが、その間の給与支払いは、企業によって、対応が異なります。有給のように全額保証するところもあれば、中小企業の中には無給扱いとする企業も少なくありません。
そのため、介護休暇ではなく有給休暇で介護のために休む人も多いのです。