簿記検定の最高峰「日商簿記1級」。難関資格だからこそ、取得すれば転職に有利になるのか気になる方も多いはずです。本記事では、未経験からの転職において簿記1級がどれほどの強みになるのか、年代別に詳しく解説します。
日商簿記1級とは、日本商工会議所主催の簿記検定試験の最上位級です。商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算という高度な会計知識を問う内容で、合格率は毎回10%以下と非常に難関です
合格までに必要とされる勉強時間は600~1000時間程度とも言われ、毎日2時間勉強しても合格まで約1年~1年半かかる計算になります。まさに国家資格並みとも言われる低い合格率であり、取得には相当の努力と継続学習が求められる資格です。 それだけ大変な簿記1級ですが、取得できれば得られるメリットも多くあります。
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簿記1級に合格したということは、企業会計に必要な高度な知識(商業簿記・工業簿記・原価計算など)を習得した証拠になります。転職市場でも「知識量」「向上心」の高さが評価されます。
難関ゆえに保持者が少なく、特に大手企業の経理部門では簿記1級レベルのスキルを持つ人材が不足しています。そのため求人ニーズが高く、「ぜひ欲しい人材」と思われやすいでしょう。
簿記1級で学ぶ原価計算や管理会計の知識は、単なる経理事務に留まらず経営企画や経営分析などにも活かせます。経理部だけでなく財務・マーケティング・経営管理など幅広い部署で活躍できるポテンシャルがあります。
難しい資格に挑戦し合格した事実そのものが、あなたの努力量や自己研鑽力を示します。特に20代の若手で取得すれば、ポテンシャル採用の場面で大いにプラス評価されるでしょう。
このように簿記1級は知識面でも姿勢面でもアピール材料になります。ただし、それをどう転職に結びつけるかが重要です。次章から、具体的に「転職で有利になる場面」「未経験の場合の注意点」を見ていきます。
「簿記1級を持っていれば転職に有利」と一口に言っても、有利に働く場面とそうでない場面があります。資格の価値は応募先によって評価が異なるため、どんな仕事で簿記1級が活きるのか把握しておきましょう。
特に上場企業や大手企業では、高度な会計スキルを求められる経理業務が多く、簿記1級の知識が直接役立ちます。連結決算や原価計算が絡む業務を担当できる可能性が広がり、知識量や向上心も高く評価されます。
多くの会計事務所は日商簿記2級以上を応募条件としていますが、簿記1級を持っていれば面接時に「そこまで勉強してきた」という点で高評価につながります。特に未経験OKの会計事務所求人では強力な武器になるでしょう。ただし、小規模事務所だと実務で1級知識を活かす場面は少ないこともあります。
会計コンサルや経営企画では、財務諸表から企業の経営状況を分析する力が求められます。簿記1級取得で身につく管理会計の知識は、経営分析や予算策定に活かせるため、コンサル・企画系職種へのアピール材料になります。
企業の内部監査では会計知識がベースとなるため、簿記1級保持者は知識面で信頼されやすいです。特に経理実務経験がなくとも、資格知識でカバーできる部分も多く、内部統制強化を狙う企業でニーズがあります。ただし内部監査は経験も重視されるので、簿記1級+αを求められる場合もあります。
将来的に公認会計士を目指す意向があるなら、簿記1級を機に監査法人のアシスタント職にチャレンジする道もあります。簿記1級合格者は公認会計士試験科目の一部と内容が重なるため相性が良く、科目合格者の補助スタッフなどで採用されるケースもあります。
以上のように、簿記1級が直接役立つor高く評価される職場は多岐にわたります。「経理」という枠に限らず、企業の管理部門全般やコンサル系まで門戸が開かれる点は簿記1級の大きな強みです。
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一方で、簿記1級があっても必ずしも有利にならない場面もあります。
採用担当者から見れば、どれほど難関の資格でも実務経験にはかなわないことがあります。極端な例では「簿記1級持ちの未経験者」と「簿記2級だが実務経験あり」なら、後者のほうが即戦力として評価される傾向があります。資格はあくまで知識の証明であり、実務スキルや業務への適応力は経験者に軍配が上がるという現実は認識しておきましょう。
中小企業では経理に簿記2級程度で十分な場合が多く、簿記1級を特別視しないこともあります。「資格よりも人柄や他業務の兼務力を重視」という企業も多いため、簿記1級を持っていても過度なアピールにはならないケースです。
税理士法人や会計事務所では、簿記1級よりも税理士試験の科目合格を評価する傾向があります。簿記1級は本来、税理士試験の受験資格にもなっていましたが、2023年より受験資格要件が緩和され簿記1級がなくても受験可能になりました。そのため今では、簿記1級より税法科目の合格実績がある人のほうが事務所では重宝される場面もあります。
このように簿記1級の評価は応募先次第。資格保持=即戦力ではない点に留意しつつ、自分の目指す業界・職種でどう評価されるかを見極めることが大切です。
では、実務未経験の場合はどうでしょうか。次章で、20代・30代・40代それぞれのケースで簿記1級が転職に与える影響と、成功のためのポイントを解説します。
ここでは「簿記1級を持っているが実務経験はない」という場合に、年代ごとに転職市場での見え方や戦略を説明します。簿記1級 未経験 20代/30代/40代のケースで企業側がどう感じるかを理解し、適切なアプローチを取りましょう。
20代で簿記1級を取得済み・実務未経験であれば、転職活動では比較的有利に働く可能性があります。でも述べられている通り、20代はポテンシャル採用(将来性重視の採用)の余地が大きく、難関資格を取得した努力と向上心は大きなアピールポイントです。
企業側も「若いうちにこれだけ勉強したのなら、仕事をしながら成長してくれそうだ」と前向きに評価してくれるでしょう。特に簿記1級の知識量は即戦力には直結しなくとも、研修次第で戦力化できる土台と見なされます。
●応募可能な求人の幅が広がる
実際、簿記1級を持っていることで未経験OKの求人に応募できるケースは確実に増えます。20代であれば多少畑違いでも「知識があるなら育ててみよう」という企業は少なくありません。大手企業の経理部門や会計事務所でも、20代の簿記1級保持者なら書類選考を通りやすくなるでしょう。
●「まずは簿記2級から」の壁を突破
未経験で経理を目指す場合、多くの人はまず簿記2級取得を目指します。それだけでも基礎知識証明として十分ですが、1級まで取っている20代は希少です。「経理未経験だけど簿記1級持ち」というだけで他の未経験者と差別化できるのは20代ならではの強みです。
もっとも、20代とはいえ過信は禁物です。後述する「資格だけに頼らない姿勢」を示すことが内定を得るカギになります。若さ + 資格 + 謙虚さ でチャンスをつかみましょう。
30代で簿記1級取得・未経験の場合、先述したように、一般的に30代以上では即戦力採用が中心になるため、「これまでのキャリアで何をしてきたか」を重視される傾向が強まります。
30代で異業種から経理職への転職を目指す場合、簿記1級を持っていてもまずは実務経験を積むことが最優先です。具体的には、
●早期に経理実務に触れる
仮に簿記1級の勉強中であっても、転職自体はできるだけ早く行い、未経験OKの経理補助やアシスタントポジションに飛び込むことを検討しましょう。30代は一日でも早く実務経験を積み始めることがキャリア転換を成功させる鍵です。簿記1級の勉強は就職後に続け、合格してからキャリアアップを図る選択肢もあります。
●応募先の選び方が重要
30代未経験で応募を歓迎する求人は、20代に比べると限定的になります。一般的には30代前半までかつ「総務・営業事務などで経理に近い業務経験がある」ような人なら採用可能性が高いでしょう。逆に全く異分野・実務経験ゼロの場合、応募できるのは中小企業の経理見習いや、小規模会計事務所の補助スタッフなどに絞られるかもしれません。簿記1級はそうした求人への応募資格を満たす武器にはなりますが、年齢と職歴でハンデがあることは念頭に置きましょう。
30代未経験の場合、「簿記1級を取ってから転職しよう」と悠長に構えていると年齢だけが上がってしまうリスクがあります。むしろ簿記2級まで取得できた段階で一度転職し実務経験を積む→その後簿記1級に再挑戦という二段構えの方が現実的なキャリア戦略かもしれません。せっかくの簿記1級も実務経験に勝るアピール力はないことを踏まえ、30代は「経験づくり」と「資格の活用」を並行して進める意識が大切です。
40代で簿記1級取得・実務未経験ともなると、転職市場でのハードルは相当高くなります。企業側も「40代なら即戦力であること」が前提となりがちで、未経験分野へのチャレンジを歓迎する求人はぐっと少なくなるのが現実です。
しかし「絶対無理」というわけではありません。以下のような戦略や工夫で道が開ける可能性があります。
●小規模企業やベンチャーを狙う
大企業や上場企業の経理ポジションは40代未経験では難しいですが、中小企業やスタートアップなら年齢よりも「幅広い業務を任せられる人か」「会社の課題を解決してくれる人か」を重視することがあります。簿記1級の知識+前職までの社会人経験(マネジメントや他職種の経験)が評価され、「経理未経験だけど総合力に期待して採用」というケースもゼロではありません。
特に中小企業では経理財務人材が不足しているため、資格保持者を一から育てたいというニーズも存在します。実際、簿記1級 求人 東京 未経験といったキーワードで検索すると、都心部を中心に「未経験可(要簿記1級)」の求人募集が散見されます。売り手市場が続く昨今、40代でもあきらめるのは早計です。
●会計事務所で実務研修を受ける
人手不足の会計事務所であれば、40代でも簿記1級保持者ならパートスタッフや嘱託として受け入れてもらえる可能性があります。給与は下がるかもしれませんが、職業訓練的に1〜2年実務を経験し、その後正社員登用や他社経理への転職を狙うというルートです。40代でゼロから経理スキルを身につけるなら、資格学校に通うより実務の現場でOJTが一番の近道でしょう。簿記1級の知識があれば、仕訳入力や月次決算補助なども吸収は早いはずです。
●プラスアルファの強みを活かす
40代までの職歴で培った強みと簿記1級を掛け合わせ、「異色の経理人材」として売り込む手もあります。例えば英語力(TOEICスコアなど)が高ければ「簿記1級+TOEIC900でグローバル経理に挑戦」、ITスキルがあれば「簿記1級+システム導入経験で経理DX要員に」といったアプローチです。
実際、簿記1級とTOEIC900点を持つ30代の方が転職エージェントに登録したところ、誰もが知る大企業から驚くほど多数のオファーが来たという報告もあります。もちろんその方は経理実務も10年超のプロですが、高い英語力と会計知識の組み合わせは市場価値を飛躍的に高める一例です。40代未経験の方も、自身の他の強みと簿記1級を結びつけてアピールすることで、年齢の壁を乗り越えられる可能性があります。
総じて40代未経験の簿記1級保持者にとって転職は容易ではありません。しかし「需要のある市場を攻める」「下積み覚悟で飛び込む」「自分だけの強みを提示する」といった戦略で成功例も生まれています。
ここでは、ヒュープロを利用して転職を成功させた事例を年代別にご紹介します。それぞれ20代・30代・40代のケースで紹介しています。
年齢/性別: 29歳女性
前職: アパレル業界の販売店長
保有資格: 日商簿記1級、TOEIC820点
年収: 転職前 約350万円 → 転職後 約400万円
転職動機と経緯: Aさんは大学卒業後、アパレル業界で店舗マネジメントを経験していましたが、30歳を前に将来への不安から経理職への転職を決意。独学で簿記2級を取得し、その後簿記1級にも挑戦し合格しました。実務経験はありませんでしたが、資格を活かして経理職への転職活動を開始しました。
転職結果: Aさんは未経験ながらも簿記1級の知識と前職でのマネジメント経験が評価され、大手企業の経理職として内定を獲得しました。転職後の年収は約400万円となり、前職より約50万円の増加となりました。
ケース2: 35歳男性・異業種から経理職への転職成功
年齢/性別:35歳男性
前職:小売業のエリアマネージャー
保有資格:日商簿記1級
年収:転職前 約450万円 → 転職後 約500万円
転職動機と経緯: Bさんは小売業界でエリアマネージャーとして複数店舗の運営を担当していましたが、将来的なキャリアの安定性を考え、経理職への転職を決意。働きながら簿記1級を取得し、転職活動を開始しました。
転職結果: Bさんはマネジメント経験と簿記1級の知識が評価され、製造業の経理職として内定を獲得。転職後の年収は約500万円となり、前職より約50万円の増加となりました。
年齢/性別: 42歳女性
前職:医療事務
保有資格:日商簿記1級
年収:転職前 約380万円 → 転職後 約420万円
転職動機と経緯: Cさんは医療事務として長年勤務していましたが、より専門的なスキルを身につけたいと考え、経理職への転職を志望。簿記1級を取得し、転職活動を行いました。
転職結果: Cさんは医療業界での経験と簿記1級の資格が評価され、医療機器メーカーの経理部門に内定。転職後の年収は約420万円となり、前職より約40万円の増加となりました。
事例からも見えてきたように、簿記1級を持っている未経験者が転職を成功させるには共通するポイントがあります。最後に大切な点を整理しておきましょう。
インターネット等で「簿記1級はやめとけ(やるだけ無駄)」と言われるのを目にした方もいるかもしれません。によれば、その多くは「なんとなく凄そうだから」という動機で安易に目指す人が多いことへの警鐘です。公認会計士の有資格者である筆者も、「経理を本気で目指す人」「将来公認会計士や税理士になりたい人」以外には簿記1級は勧めないと述べています。
言い換えれば、明確な目的・目標がある人にとっては簿記1級は有意義ですが、なんとなく取っても持て余す可能性が高いということです。「資格さえ取れば転職できるだろう」という考えは危険で、資格取得はゴールではなくスタートだと心得ましょう。
この点を理解しておけば、「簿記1級 やめとけ」という意見に必要以上に不安になることはありません。実際に簿記1級を取った方の中には「取ってよかった。公認会計士を目指す適性判断になった」という声もあります。大切なのは、取得後にそれをどう活かすかです。
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前述の通り、資格だけでは実務経験者には及びません。ただ資格を履歴書に書くだけでは、その強みを最大限発揮することは難しいのです。転職活動では資格+αの自分の価値を伝える工夫が必要になります。
●応募先ごとに活かせる知識を示す
単に「簿記1級持ってます」ではなく、「御社の〇〇業務に○○の知識が役立ちます」という形でPRしましょう。例えば製造業の経理なら原価計算の知識を強調、ベンチャーなら財務諸表分析力で経営改善に貢献したい等、相手に刺さるアピールが重要です。
●コミュニケーション力・志望動機も重視
資格があるとついそれを前面に出したくなりますが、面接では人柄や熱意も見られています。むしろ簿記1級を鼻にかけて高圧的な態度だと「現場を知らないのでは?」とマイナス評価になりかねません。謙虚さを持ちつつ、「なぜ簿記1級を取ったのか」「この仕事で何を実現したいのか」をしっかり語れるよう準備しましょう。資格はそのストーリーを裏付ける説得力のある小道具くらいの位置づけでちょうど良いのです。
●面接対策は入念に
書類選考は資格パワーで通っても、面接で失敗する未経験者は少なくありません。その多くは準備不足に起因しています。簿記1級取得者ならではの強みをきちんと伝えきるために、模擬面接や想定問答の練習は念入りに行いましょう。
未経験から簿記1級を活かした転職を目指すなら、転職エージェントの活用をおすすめします。
自社であるヒュープロ(HUPRO)は経理・財務・会計分野に特化した転職支援サービスとして、多くの簿記資格保有者のキャリア支援実績があります。
●ヒュープロの専門性
ヒュープロは士業・管理部門に特化したエージェントで、会計士・税理士や経理財務の求人を豊富に扱っています。簿記1級保持者向けの求人も多数あり、一般には出回らない非公開求人やあなたに合った案件までご希望に応じて紹介できます。例えば「未経験OKだが簿記資格必須」の求人や、「30代後半まで応募可・ポテンシャル重視」など、独自ルートの求人でチャンスを掴んだ例もあります。
●キャリアアドバイザーの手厚いサポート
単に求人紹介するだけでなく、前述した書類添削や面接対策はもちろん、応募先企業への推薦時にあなたの強みを余すところなく伝えることができるのもエージェントの強みです。「資格を取ったのにうまく活かせていない」「自分では適正が分からない」という方でも、ヒュープロのアドバイザーが客観的な視点でアドバイスし、一人ひとりに合った戦略を一緒に考えます。
●転職市場の最新情報提供
経理・会計業界の転職動向や、企業が求めるスキルセットのトレンドなど、最新のマーケット情報も提供しています。「ここ数年は経理人材は売り手市場で、未経験でも採用されやすい傾向にある」といったデータも共有しつつ、活動の後押しをします。自分では掴みきれない情報を得られることで、安心感を持って転職活動に臨めるでしょう。
何より、ヒュープロのサービスは完全無料(求職者側は料金負担なし)です。簿記1級という強みを持つ皆さんが、その力を最大限に発揮できる舞台を探すお手伝いをしてくれます。「未経験だけど簿記1級を活かしてキャリアチェンジしたい」と思ったら、ぜひ一度ヒュープロに相談してみてください。
日商簿記1級は、実務未経験からの転職活動において強力な武器となり得ます。20代はもちろん、30代や40代でも戦略次第でチャンスを広げることが可能です。しかし、資格取得だけでなく、実務経験や他のスキルを組み合わせることで、総合力のある人材を目指すことが重要です。
転職市場では、資格はあなたを輝かせるツールの一つに過ぎません。未経験の場合、まずは一社で経験を積むことも大切です。その際、簿記1級というツールをどう活用するかが鍵となります。もし使い方に迷ったら、プロの手を借りるのも一策です。
ヒュープロでは、簿記1級保持者を含む多くの方々のキャリア相談を受け付けています。「実務経験なしで経理に挑戦したい」「資格を活かせる求人を知りたい」という方は、ぜひ無料相談をご利用ください。あなたの情熱と簿記1級という努力の結晶があれば、きっと納得のいくキャリアチェンジが実現できるはずです。
あなたの簿記1級とこれからの可能性を信じて、一歩踏み出してみてください。ヒュープロはその一歩を全力で応援します。