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正社員を解雇できる条件とは?判例も交えて詳しく解説

HUPRO 編集部
正社員を解雇できる条件とは?判例も交えて詳しく解説

会社による解雇が不当だとして、元社員が会社を訴える裁判を見ることがありますが、どのような場合だと正社員を適法に解雇することができるのでしょうか。本記事では、人事担当者向けにどのような解雇理由が適法で、どのような解雇理由が不当解雇に当たるのかを判断する基準についてご紹介します。

解雇とは

解雇とは、使用者の意思によって一方的に労働契約を解約することです。いわゆる「クビ」にあたります。よく、海外ドラマなどで「明日から来なくていいよ」と言われその場で荷物を片付けさせられるようなシーンがありますが、あれが解雇です。

日本では民法上は、期間の定めのない雇用契約はいつでも解約通告でき、その後2週間で雇用関係は終了するものと定めています(627条1項)が、労働基準法や労働組合法などによって、労働者の権利を守るために以下のように制限を加えられています。

解雇を行うには以下の要件を満たすことが必要

(1)客観的に合理的で、社会通念上相当とされる正当な理由
(2)少なくとも30日間の予告期間か、30日分以上の平均賃金支払

これが「解雇規制」と呼ばれるものです。
日本ではいったん正規雇用をしてしまうと、解雇はよほどのことがないと認められませんので「試用期間」や「有期雇用」などで、まずは従業員の適性を見極めようとする採用形態をとることも少なくありません。

試用期間については以下の記事で解説しています。併せてご一読ください。
正社員本採用の前にある試用期間って?

労働基準法における解雇の条件

労働基準法には、以下のように明記されています

解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする

つまり、よほどのことがない限り会社側から社員を解雇することは出来ないのです。解雇された社員が処分を不服として裁判を起こし、「不当解雇」として認められた場合は、会社にとっても大ダメージです。

解雇されるというのはよほどのことである日本では、非正規社員に比べると正社員の人材流動性が著しく硬直化しており、結果的に日本経済の停滞を招いているともいわれています。

正社員の解雇の種類について

正社員は解雇されないように守られているため、問題があってもよほどのことがないと解雇できないというのが会社として問題になることがあります。

いわゆる「リストラ」をして人員削減をしたくとも、本人が「辞めたい」と言わなければ解雇することはできないからです。
解雇については、大きく分けると以下の4つの種類があります。

参考:諭旨解雇(ゆしかいこ)とは?詳しく説明します

このうち懲罰に当たる懲戒解雇については、何らかの重大な過失や犯罪などを起こした場合に行われることが多く、「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当である」理由が明確なものです。

普通解雇はとても難しい

悩ましいのが「普通解雇」です。
例えば、遅刻・欠勤が多い、勤務態度が悪い、成績が著しく悪い、取引先からクレーム、周りの社員のモチベーションを著しく下げる、清潔な身だしなみを行わない、会社に借金取りが押し掛けてきた、異性関係のトラブル・・・・・・などの問題がある社員を解雇したくても、法令に違反するような決定的な決め手がない場合は、解雇に持ち込みにくいので会社として困るところでもあります。

普通解雇の場合は、もし不当解雇として裁判になった場合に、企業としての社会的な信用度合いに関わることもあるので慎重に対処する必要があるのです。

普通解雇が認められた判例

普通解雇においては、裁判でも無効事例が多くありますが、有効となる場合がないわけではありません。
例えば、能力不足を理由とした解雇が裁判で有効となったケースには以下のような判例があります。

出典:独立行背法人 労働政策研究・研修機構(89)【解雇】労働者側の事情を理由とする解雇

つまり、いずれも
・会社としては充分な対応を行った
・社員の能力不足が明らかだった
ということを証明しているというのがポイントです。

正社員の解雇を行うためのステップ

社員に明らかに問題があるとしても、いきなり解雇というのはリスクの高い対応です。解雇権の濫用に当たるとされ、解雇は無効とされることが予想されるからです。

そのため、もし解雇したい社員がいるとしたら、社外の人からみても「それは解雇されても仕方がない」と思われるような事実を積み重ねなければなりません。

上司や同僚の評価だけでは、客観的な指標を欠き、職場いじめ、パワハラ・モラハラとみなされるおそれがあります。
会社としてはその社員を異動させたり、研究などの教育訓練を充分に行うなどして社員の能力を発揮できる環境を整えるべく尽力しなければなりません。

裁判での焦点は、
・社員の能力や適性不足についてどれだけ客観的な評価を集められるか
・会社が解雇回避(雇用維持)のために労働者の能力向上を図るための努力をどれだけ行ったか
にかかっています。

人事労務担当となれば、解雇が妥当だと思われるような社内トラブルに直面する日が来ないともいえません。
あらかじめ知識を身につけつつ、日々の業務にあたるようにしましょう。

この記事を書いたライター

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