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試用期間とは?期間中の退職は解雇になるの?

HUPRO 編集部
正社員本採用の前にある試用期間って?

就職・転職の求人を見ると「試用期間あり」とよく書かれています。アルバイトであれ正社員であれ、期間中のお給料や待遇が気になりますよね。「本採用じゃないから簡単なことでクビになる?」と不安に思う方も多いでしょう。今回は、なぜ企業は試用期間を設けるのか、その理由と期間中の退職・解雇について解説します。

試用期間とは?

試用期間とは、企業の採用で自社への適性があるかどうかを判断するための期間です。

試用期間は、正社員、アルバイト・パートなど職種の区分によりません。 実際に仕事を行ってもらい、職務能力などを判断した上で本採用をするかどうかを決めるために設けられます。無期雇用の試用期間期間の長さについては、法令上の定めは設けられていません。1~6ヶ月が一般的で、最長でも1年が限度というのが一般的な考えです。

試用期間を定めている企業は、全体の86.9%。期間は「3 ヵ月程度」が 66.1%ともっとも割合が高く、次いで「6 ヵ月程度」が 18.3%「2 ヵ月程度」が 8.4%などとなっている。一方、中途採用者の場合も、「3 ヵ月程度」が 65.7%ともっとも高く、次いで、「6 ヵ月程度」が 16.5%、「2 ヵ月程度」が 8.3%となっています。

ただし、はじめから有期雇用と決まっている派遣社員は、試用期間は14日以内と労働基準法で定められています。また、紹介予定派遣が正社員として派遣先に直接雇用される場合は、すでに勤務実績があるため試用期間を設けることはできません。

参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 従業員の採用と退職に関する実態調査

試用期間の長さはどうやって確認するの?

試用期間がある場合は、それをどのくらいの期間設けていることが分かるような形で労働条件を締結しなくてなりません。労働契約書を交わす前に、就業規則や雇用契約書の内容を確認したうえでサインするようにしましょう。

また、試用期間を延長する場合は、再度契約が必要になります。会社側からの一方的な通達で試用期間を延長することはできません。あくまで互いの同意が必要です。

試用期間の延長を言われたらこちらのページも確認しましょう。

なぜ試用期間があるの?

ほとんどの会社は筆記試験と面接で入社試験を行っています。しかし、そのわずかな時間だけでは自社に合っているかどうかを判断できません。

例えば、スキルは十分だったとしても、他に従業員とトラブルを起こすようでは企業のパフォーマンスを下げてしまいます。想定していた能力がない場合も同様です。

そこで、試用期間を設け、実際にメンバーと働いてもらうことで見極めを行っているのです。

試用期間中に解雇になる理由って?

試用期間中は、あくまで「お試し期間」。企業は本採用後よりも幅広い理由で従業員を解雇することができます。しかし、企業都合で一方的に解雇できるかというとそうではありません。
「客観的」で「合理的」な理由が存在し、「社会通念上相当」と認められるものでない場合は、不当解雇であり無効
とみなされます。

なお、独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると、試用期間から本採用にしない場合の判断理由を尋ねたところ、「欠勤などの勤務状況」が 86.4%ともっとも多く、次いで、「素行」が 73.7%、「仕事上の知識・能力」が 72.8%、「健康状態」が 68.3%などとなっています。

参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 従業員の採用と退職に関する実態調査

遅刻や欠勤などの勤怠不良

正当な理由がない遅刻や欠勤を繰り返し企業が指導をしているにも関わらず改善しない場合、正当な解雇事由として認められます。

ただし、法律で回数が定められているわけではありません。試用期間中に1度や2度遅刻や早退、欠勤があっただけで解雇ということは常識的に考えてありえないでしょう。遅刻や欠勤の回数については、就業規則に記載している場合がありますので確認しましょう。

素行・協調性不足

業務をするうえで重要なコミュニケーション。しかし解雇事由に該当する「協調性」とは「みんなと仲良くやれない」という類のものではありません。

例えば、上司に反抗的な態度をとる、注意しても一向に改善しない、業務に支障をきたす……など、より深刻なものが該当します。また、企業側のパワハラがあったかどうかなどの対応も問われます。

能力不足

試用期間の目的は、会社に求められる働きができるかどうかを確かめることですから「能力不足」という判断は一見妥当に見えます。

しかし、新しい環境で仕事を始めたばかりの人は、慣れるまで本来のパフォーマンスが発揮できなくて当たり前です。そのため、適切に指導や教育を行っていたかが重視されます。

病気やケガにより復帰できない

病気や事故によるケガを負ってしまい、復帰のめどが立たない場合は、正当な解雇要件とみなされます。

しかし、医師から「復帰の見込みがある」と判断されていたにも関わらず解雇された場合は別。本来であれば、企業は復職のサポートを行うべき立場です。休職期間にもよりますが、不当解雇の可能性が高いといえるでしょう。

経歴詐称

応募時に提出した履歴書や職務経歴書の記載内容に嘘があった場合は、経歴詐称として正当な解雇事由となります。

例えば、仕事をするにあたって必要な学歴や資格を偽っていた場合、試用期間を過ぎ、本採用で何十年たっていても解雇されることも珍しくありません。

試用期間中はすぐに解雇されたりするの?

試用期間中に何らかのトラブルがあり「解雇されるかも?」と不安になる方もいるでしょう。試用期間は、法律では「解約権留保付雇用契約」といいます。ただし、どのような場合であっても解約することができるわけではありません。試用期間を設けるのは、あくまで長期採用の労働契約を締結する前提です。そのため、試用期間中の解雇は「採用前に知ることのできないもの」である必要があります。

例外として、試用期間が始まってから14日以内であれば、企業はいずれの義務も果たさなくて良いという特例がありますが、協調性や能力不足をたった14日で判断できるでしょうか。仮に即時解雇を盾に解雇したとしても「企業側の指導、教育不足」と取られる可能性が高いです。

もし、試用期間が14日以上過ぎた場合は、試用期間中の解雇であっても30日前に「解雇予告通知書」を作成、または解雇手当の支払いをおこなう必要があります。

試用期間中の解雇については、就業規則にその旨が定められていることが多いです。スキル不足については、勉強する姿勢を見せ、遅刻や欠勤についてはよほどのことがない限りしないように心がけましょう。

なお、試用期間中に特に問題なく勤務していたにも関わらず、本採用を見送られた場合も、事実上の解雇に相当するため、正当な理由が必要になります。

試用期間とは?本採用とどう違う?

試用期間の給与や社会保険は?

最近ではインターン制度もありますが、試用期間については正式に雇用契約を結び、給与などが保証されるところがインターンとは異なります
試用期間は、本採用することを前提に労働契約が締結されている状態です。そのため、残業代含む給与の支払いや各種社会保険の加入は会社側の義務となります。

特に社会保険については、これから先の失業保険や老齢年金の受給期間に響いてくるため、加入しているかどうか確実に確認しましょう。

なお、試用期間の賃金については、労働基準法15条の明記事項です。入社時には労働条件を示す必要があります。特に注意したいのが、試用・研修期間だからといって、各都道府県の最低賃金を下回ることは違法になることです。よく確認しましょう。仮に、その会社の就業規則に定められていたとしても、労働基準法は就業規則よりも強い規定です。

まずは、会社に相談し、埒が明かないようであれば労働基準局などに相談してみてください。しかし、現実問題として、そのような会社であれば戦うよりも転職した方が、かかる時間と労力を考えると自分にとっての解決が早いかもしれません。一度就職が決まっても、前職の失業手当の期間内であれば、残りの日数分の失業手当を受給できる場合があります。ハローワークに相談してみましょう。

試用期間中に退職したいと思ったら?

入社してみて、試用期間中に「働いてみたら思っていたのと違った」ということもあります。そのような場合は、正社員と同様退職の申し出を行う必要があります。最低でも退職予定日の2週間前までに申し出を行うようにしましょう。

会社側としても、退職者の欠員補充を行う必要があります。極力早い段階で退職の意思を伝えることがおすすめです。

試用期間中に解雇されたが「不当解雇」と思う場合

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の2014年の資料によると、本採用を取り消したことで、企業ととトラブルになったかどうかについては、「なかった」という企業割合が 90.2%と大多数。トラブルが「あった」とするのは 6.3%となっています。

解雇理由については「その期間が終わる前に余裕をもって伝える」が 59.2%ともっとも割合が高く、次いで、「ケース・バイ・ケースで異なる」が 34.5%となっています。規模が大きい企業ほど文書での通知が多くなるようです。

参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 従業員の採用と退職に関する実態調査

企業の就業規則には、解雇事由を明記義務付けられています。もし、あなたが解雇された自由が就業規則に記載がない場合、もしくは解雇の事由が納得いかない場合は、労働基準局に相談の上、企業に「解雇理由証明書」の発行を要求しましょう。

「解雇理由証明書」は、解雇することが記載された「解雇通知書(解雇予告通知書)」や退職時にもらう「雇用保険の離職票」とは別の書面です。
企業は解雇時に発行する義務がありませんので、退職書類の中に入っていないかもしれません。しかし、労働基準法により、「解雇理由証明書」については「労働者から請求があった場合は速やかに交付しなければならない」とされています。時効は2年です。

まとめ

試用期間といっても、実態は「期間の定めのない労働契約の初期の期間」にあたります。試用期間だからと言って、企業は正当な理由なく従業員を解雇することはできないのです。逆に考えると、雇われる側としても試用期間にどのように扱われるかによって、その会社の労働者の取り扱い方を見ることができるチャンスかもしれません。試用期間だからといって、賃金が払われなかったり、社会保険の未加入など不当な扱いをされたりするような企業であれば、早めに見切りをつけた方が得策といえます。

企業側の視点については、以下の関連記事をご確認ください。

この記事を書いたライター

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