確定拠出年金と退職金を受け取る際の税金について気になることをご紹介します。退職金には、分離課税方式が取られ、退職所得控除がありますが、確定拠出年金を同じ年にもらった場合の税金について注意が必要です。今回は確定拠出年金と退職金を同年に受け取った場合の税金について解説していきます。
まず、確定拠出年金についてですが、確定拠出年金は公的な年金だけでなく、私的な年金として積み立てることができる年金です。企業が独自で積み立てる「確定給付企業年金、企業型確定拠出年金」と最近では個人でも積み立てられる「個人型確定拠出年金」があります。
積み立てた確定拠出年金は、老齢給付金、障害給付金、死亡一時金としてお金を受け取ることができます。老齢年金は60歳からもらえ、毎年の年金または一時金としてまとめてもらうことが可能です。一時金としてもらう人が多くいますので、税金の問題についてもよく知っておくことが大切です。
60歳から確定拠出年金がもらえますので、60歳で確定拠出年金を一時金としてもらった場合に、退職金を同年でもらってしまうと、税金上の注意が必要ですので解説します。
まず、退職金についての税金をよく知っておくことが必要です。退職金をもらう際には、通常の給与所得とは分離課税となっているため、退職金だけで課税されることを知りましょう。退職所得控除があり、税制上で優遇されます。
###税金の退職所得控除の計算方法
退職所得控除の計算の方法について良く知っておくといいでしょう。
退職所得控除の計算方法については、国税庁の下記の表を参考に計算することができます。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
出典:退職金と税|国税庁
退職金の所得控除額は、勤続年数によって異なり、例えば38年勤続した場合は、退職所得控除は、
800万円+70万円×(38年-20年)=2,060万円
で、2,060万円までは税金がかからないようになっています。
ところが、退職金と一緒に確定拠出年金を同年に受け取った場合には、合算した金額で計算されますので注意が必要です。確定拠出年金も、退職所得控除が受けられますが、その金額については気を付ける必要があります。
例えば退職金が2,000万円の場合2,060万円まで退職所得控除がありますので、退職金だけですと課税されなかったのですが、確定拠出年金と退職金を60歳で同じ年でもらうと、確定拠出年金を300万円もらったとすると、合計2,300万円の所得となり、課税される対象になってしまいます。
個人型確定拠出年金は、個人で掛けた掛金に関しては全額所得控除の対象になり税制上の優遇を受けられますが、一時金の受け取り方によっては税金が多く掛かってしまいます。
退職金と同じ年に個人型確定拠出年金をもらってしまうと合わせた金額で、退職所得控除を受けることになり、オーバーしてしまうと税金がかかります。退職所得控除を超えるのかどうかについてはチェックが必要です。
例えば勤続20年以下は勤続年数に40万円を掛けた金額が退職所得控除額ですので、20年働いて退職金800万円まで非課税です。30年になると800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円、35年で800万円+70万円×(35-20)=1,850万円までの退職金が非課税計算になります。自分の定年までの勤続年数で退職所得控除の金額を試算してみるといいでしょう。
計算した上で退職金と確定拠出年金の合計額が、退職所得控除の金額よりも多くなりそうな場合は、同年にもらうことを控えるのが得策です。また、合計しても控除額を超えない場合は、全部が控除対象になりますので、同年にもらうようにするのがお得です。きちんと計算して確認してみることが大切です。
確定拠出年金と退職金の合計が退職所得控除を超える場合には、同年に受け取らずに、60歳を超えてから翌年に確定拠出年金をもらってずらす方法もおすすめです。
翌年にもらうことで、退職金が退職所得控除の中に納まり、課税されずにそのまま受け取れます。
そして翌年に確定拠出年金を受け取り、こちらには、退職所得控除が使えないため課税がされますが、それでも確定拠出年金の300万円だけに税金がかかりますので、税金上はお得です。退職金と一緒にもらうことで、控除額を超えて大きな金額に課税されないことが大切です。退職所得控除の金額がいくらなのか、勤続年数によって計算し、それをできるだけ超えないようにすることが退職金をもらう際に必要なことです。
確定拠出年金と退職金をもらう時期については、税金を考えて受け取るようにすることが大切なことです。退職金をもらう際の退職所得控除をしっかり計算してそれを超えるかどうかで、確定拠出年金のもらい方も検討するようにしましょう。超える場合は、翌年にするなどし、計画的にもらうことで税制上お得になります。早めに計算して計画を立てておくといいでしょう。