ひと昔前は全て手計算で行われていた給与計算。現在は会計ソフトがあるので、簡単になったかと思いきや、相変わらず「難しい」と言われているようです。給与計算の仕事は何が難しいのでしょうか?仕事内容とともに解説します。
給与計算の仕事自体は、基本的にルーティンがはっきりしており、給料振込日がいつかによって、それぞれの工程をいつまでにしなければいけないかというルールが明確に生じます。
ひと昔前は給与計算を全て手計算で行われていましたが、現在は給与計算ソフトがあるので、その面での「難しさ」は緩和されました。
イレギュラーな工程が入ることはあまりないので、単純作業と見なされがちですが、給与計算の仕事が難しいと言われるのには以下の理由があります。
社員の生活を支える源である給与。例えば自分の残業代が間違って少なく振り込まれていたらどうでしょうか?税金の計算を間違ってしまい、最悪の場合追徴課税となってしまったら?
こうしたことを考えると、給与というのは正しく振り込まれるのが当たり前という前提があるため、計算と同様、振込みについても絶対にミスは許されません。
会計ソフトで計算作業がほぼなくなったとはいえ、大元の数字の入力ミスがあったら元も子もありません。もしミスを犯してしまった場合は、そのリカバリーに大きな負担が生じます。給与計算の仕事の一番の難しさは、このプレッシャーの重さとも言えるでしょう。
給与計算の流れや工程自体はルーティンワークですが、例えば所得税として引かれる源泉徴収税や、社会保険料などの金額は頻繁に税制改正などで変更があります。
また、社内における給与自体も改訂が行われることは珍しくありません。常に最新の知識のアップデートが求められます。
給与計算の仕事をしていると、社員の給与を知ることになります。
企業における給与の金額というのは関心の高い情報です。世間にはどうしても悪意のある人がいて、会社の給与や年収を知りたがる人があなたの口を開かせようとすることもあるかもしれません。近年はこれに加えて社員のマイナンバーも加わりましたので、給与計算の仕事に携わる人の守秘義務のハードルが上がっています。
仕事上で得た秘密を漏えいしてしまうことは、解雇要件にも該当します。重要な機密事項を知っている認識を持って業務にあたる必要があるでしょう。
システムへの入力ミスや設定ミスにより、実際の勤務時間と計算結果にズレが生じ、正確な残業手当が支給されない場合があります。
対策:自動計算機能の活用と、定期的な実際の勤務状況との照合を実施することで、早期に誤差を発見・修正します。
役職手当や特別手当など、従業員ごとに設定されるべき手当が最新の情報に基づいて更新されていないと、誤った支給額となる可能性があります。
対策:従業員の契約内容や昇給情報をこまめに更新し、システム上で正しく反映されているかをチェックすることが重要です。
対象となる従業員の条件が正確に設定されていない場合、保険料控除が誤った金額になることがあります。
対策:最新の法令に基づいた設定を常に反映し、変更があれば速やかにシステムに更新します。定期的な内部監査も有効です。
入力作業の際に生じるミスは、全体の計算結果に大きな影響を及ぼします。
対策:自動入力ツールやチェック機能を導入し、入力後にダブルチェックを行う体制を整えます。
給与計算という仕事はその字のごとく、社員のお給料を計算する仕事ですが、その業務は大きく以下の6つの工程から成り立っています。
会社によっては、それぞれの工程を全て同じ部署で行う会社もあれば、給与計算は人事・勤怠データを持っている人事部が行い、支払や振り込みは経理部が行うといったように分業しているパターンもあります。
残業や休日出勤などの勤怠管理データを確認し、それぞれの社員ごとの基本給と、住宅手当や家族手当、通勤手当といった各種手当を加えて総支給額(額面金額)を計算します。
厚生年金や健康保険、雇用保険などの社会保険料、財形貯蓄や会社で加入した生命保険・損害保険の保険料など、
給与から控除するものの金額を計算します。
その課税対象に対して、所得税や住民税を計算します。
総支給金額から社会保険料や税金を引いて、手取りの金額を確定します。
企業が「従業員の賃金、交通手当、税金」などを記入するための帳簿である「賃金台帳」を作成します。賃金台帳は労働基準法によって定められたち法定三帳簿の一つで、以下の内容を記載する必要があります。
①賃金の計算の基礎となる事項
②賃金の額
③氏名
④性別
⑤賃金計算期間
⑥労働日数
⑦労働時間数
⑧延長時間(残業時間)数、休日労働時間数及び深夜労働時間数
⑨基本給、手当その他賃金の種類毎にその額
⑩賃金の一部を控除した場合には、その額
また、社員ごとに渡す給与明細も作成します。
お給料日には、従業員ごとに給与振込指定口座に、手取り金額を振り込み、⑷で作成した給与明細を配布します。
給与から控除したお金をそれぞれの納付先に支払います。
・所得税と住民税 → 翌月10日に税務署に納付
・社会保険 → 年金事務所からの納入通知を元に月末までに振込・小切手、あるいは口座振替などで支払う。金額は毎年4月から6月の3ヶ月間の給与等(通勤手当を含む)の支給額平均に基づいて決定し、その年の「標準報酬月額」を控除
・雇用保険 → 毎年7月に、来年3月までの分を一括で納付
・会社で加入している生命保険や損害保険 → それぞれの保険会社への振込み
近年、企業では給与計算の自動化を目的として、専用ツールやシステムの導入が進んでいます。こうしたツールを利用することで、作業の迅速化やヒューマンエラーの削減が期待でき、さらに法改正や税率の変更にも柔軟に対応できるようになります。また、業務が特定の担当者に偏ることなく、経験や知識が浅いスタッフでも給与計算や振込処理をスムーズに行える体制が整います。
給与計算の作業負担を軽減したい場合、外部の専門業者に委託する方法も有効です。アウトソーシングを活用することで、内部リソースを本来注力すべき業務に再配分でき、時間やコストの面でメリットがあります。ただし、委託先を選定する際は、その専門性や信頼性を十分に確認し、自社のニーズに合致したサービス内容であることが重要です。
給与計算の仕事には明らかに性格による向き不向きがあります。
以下では、性格や特性によって、給与計算を行うことへの向き不向きを解説していきます。
上記のような性格や特性に当てはまっている人は、給与計算の業務に向いていると言えるでしょう。新しいソフトが出てきても、給与計算は依然として需要のある仕事です。一度身につければ他の会社に転職した場合でも、そのまま経験を活かすことができます。ぜひ、自分の性格を判断しながら、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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スキルや知識は後から身につけることができますが、例えば大雑把な人が給与計算業務につくのは、特にトラブルがない状況でもストレスが大きいと思うため、オススメできません。給与計算は会社にとって必要不可欠で重要な業務ではありますが、作業自体は地味で日の目を浴びることが多くはありません。そのため、給与計算を行う上で「会社の役に立っている」という気持ちが大事になってきます。
給与計算の業務を行っていて難しいと感じる方は、社会保険労務士の資格取得にチャレンジすることをオススメします。社会保険労務士では、給与計算で行う業務や、その周りの労務・社会保険関連の知識を身につけることが出来ます。そのため、今行っている事務や給与計算の仕事がスムーズに出来るようになったり、出来る業務の幅が広がり転職してステップアップすることも可能になっています。税理士や公認会計士よりは難易度は易しく、実務経験にも活かせる資格となっていますので、オススメとなっています。
また、現在給与計算を業務として行っていて、どうしても向いてないと感じているなら、事務オンリーな会社に転職することをオススメします。無理に、苦手な業務を行い続けていても、負担がかかり長続きすることはないでしょう。ヒュープロでは、士業・管理・経理部門に特化した転職エージェントであるため、この業界で最大級の求人があります。無料で相談できますので、ぜひ下のリンクから登録してみてください。
Q1. 給与計算で自動化ツールを導入するメリットは何ですか?
A1. 自動化ツールを導入することで、手入力によるエラーが大幅に削減され、計算処理のスピードが向上します。また、法改正や税率変更に伴うシステムアップデートが自動で反映されるため、常に正確な計算が維持でき、業務の効率化に直結します。
Q2. 給与計算業務における定期的なチェックや内部監査の重要性は?
A2. 給与計算は一度のミスが従業員の生活に大きな影響を与えるため、定期的な内部監査やデータチェックが非常に重要です。これにより、入力ミスや計算エラーを早期に発見し、修正する体制が整います。
Q3. 給与計算システムのアップデートが必要なタイミングはどのような場合ですか?
A3. 税制改正や社会保険料率の変更、さらには企業内の給与体系の改訂があった場合、給与計算システムの設定やプログラムのアップデートが必要となります。これにより、最新のルールに基づいた正確な給与計算が可能となります。
Q4. 給与計算の外部委託を検討する際のチェックポイントは何ですか?
A4. 外部委託を選ぶ際は、業者の専門性、信頼性、過去の実績を十分に確認することが重要です。また、委託する業務範囲を明確にし、社内での管理体制との連携を取ることで、外注先とのトラブルを未然に防ぐことができます。
Q5. 給与計算業務における法令遵守で最も注意すべき点は何ですか?
A5. 給与計算に関わる最新の税法や社会保険の法令を常にチェックし、システムや業務フローに正確に反映させることが重要です。定期的な社内研修や外部セミナーへの参加も、法令遵守の意識を高めるために有効です。
Q6. 給与計算事務が未経験でも転職は可能でしょうか?
A6. はい、未経験者でも転職可能です。多くの企業では、初めて給与計算業務に従事する方向けの研修制度やサポート体制が整っています。基本的なPCスキルや、数字に強いという素質があれば、業務を習得しながらキャリアを築くことができます。
Q7. 給与計算の仕事は将来的になくなってしまうのでしょうか?
A7. 給与計算の業務自体は自動化ツールの導入により効率化が進んでいますが、完全になくなることはありません。法改正や個別の企業事情に合わせた対応が必要なため、人の判断が求められる部分も多く、専門知識を持つ人材は今後も需要があります。
Q8. 給与担当の仕事が辛く、辞めたいと感じる場合、どのように対処すればよいでしょうか?
A8. 給与担当の仕事は、正確性や守秘義務などのプレッシャーがあるため、ストレスを感じやすい業務です。まずは、業務の自動化ツールやシステムの導入、社内での業務分担の見直しなど、働く環境の改善策を検討することが有効です。また、転職エージェントに相談して、ストレスの少ない職場環境へのキャリアチェンジを視野に入れることもおすすめです。
Q9. 給与計算の業務は休むことが難しいのでしょうか?
A9. 給与計算は締め切りが厳格に定められており、納期に間に合わせるために休みが取りづらいという側面があります。しかし、システムの自動化やアウトソーシングの活用により、業務負担を軽減し、休息を確保する工夫が進んでいます。業務プロセスの見直しを行うことで、ワークライフバランスを向上させることが可能です。
Q10. 給与担当の仕事はどの点でストレスが多いのでしょうか?
A10. 給与担当の主なストレス要因は、ミスが許されない正確さの要求、厳しい締切り、法改正に伴う頻繁な業務変更、そして社員の個人情報を扱う守秘義務の重さです。これらの要素が組み合わさることで、精神的な負担が増す傾向があります。
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