技術の高度化、投資規模の増大、市場のグローバル化など、激変する経営環境のなかで、企業はそれに適応するための様々な施策を求められています。そこで、自社以外のパートナーとなるような企業と協力関係を結ぶことで、強力なネットワークを構築し、広く自社が所有している経営資源を活用していくことが求められています。そこで活用されているのがアライアンスです。この記事では、そんなアライアンスの意味についてわかりやすく解説していきます。
アライアンスとは、企業における事業をより成長させることを目的として、他の企業と業務上の提携をしたり、技術上の提携をしたりすること、つまり、ビジネスパートナーになることを意味する言葉です。アライアンスにおいては、どんな形態で協力しあうのか、資本関係をどのようにするかなどについて、具体的な決まりはありません。それはアライアンスが契約関係によって成立するものであるからです。契約によって複数の企業が協力し合うことを約束するものなので、契約に盛り込めるものであれば、特に制約はありません。
アライアンスは、資本の移動を伴わないことが特徴です。M&Aを行なう場合には、基本的に資本の移動が伴いますが、アライアンスは緩やかな協力関係を結ぶことが目的であるので、2つの企業を合併したり、新しく株式を発行したりはしません。その他、M&Aと比較して柔軟かつ機動的に経営環境に対応することが可能となるので、変化が激しく不確実性の高い経営環境のもとでは重要性が増大しています。
アライアンスは、あくまでも契約で2つの企業が協力関係を締結します。契約だけで結びついているので、2つの企業の結びつきは弱くなってしまいます。ただし、アライアンスの場合、協力関係は2社に限らず、3つ以上の企業で提携を結ぶこともあります。アライアンスは契約関係であるので、アライアンスの目的が達成されたり、目的の食い違いなどによって、契約関係が将来的に解消されることもあります。
アライアンスは資本の移動を伴わないので、わかりやすく日本語にすれば、提携という意味に近くなります。提携にも様々な種類があり、他社メーカーで製造された製品に自社ブランドを付して販売するOEM提携、製品開発や販売などの面において、企業同士がお互いに協力し、単独で事業を行う以上の結果を出すことを目指す業務提携などがあります。ただし、資本業務提携という場合には、資本を拠出しつつ、業務の提携を行なうことになるので、アライアンスとは異なることに注意が必要です。
また、アライアンスは、資本の移動を伴わないことから、資本の比率に関して影響を与えません。したがって、M&Aを行なう場合には、株主総会による承認が必要となりますが、アライアンスを結ぶ場合には、株主総会による承認は必要ありません。取締役会の決議によって決定されるのが普通です。もちろん、株主総会において株主からアライアンスに関して質問を受けたり、反対決議がなされることもありますが、基本的にアライアンスは株主総会の決議事項ではありません。
企業がアライアンスを締結する目的は、企業間で経営資源を交換するためです。その結果として、既存の事業の幅を広げたり、事業の利益が向上したり、業界での知識を深めることができるようになります。アライアンスを通じて、企業はパートナー企業が保有している経営資源を活用できるようになります。ただし、それがそのまま企業の競争力の源泉になるわけではありません。自社の競争力の源泉は、自らが保有する経営資源であり、それと一体となることによって、初めてパートナー保有の経営資源は意味を持つようになります。アライアンスを築いた後でも、企業のあり方や経営方針、社風や人事関係においては各企業に委ねられているのです。アライアンスを結んだからといって、他の企業からコントロールされたり、企業方針と異なる指示を受けたりするようなことはありません。したがって、アライアンスにおいては、自社の経営資源とパートナーの経営資源をいかに組み合わせるかが重要な課題となります。
アライアンスは、提携を意味する言葉で、資本の移動を伴わないことが特徴です。企業間での経営資源を交換することがアライアンスの1番の目的となりますが、アライアンスを提携したからといって、企業の競争力が必ず高められるとは限りません。企業の競争力にとって重要であるのは、自社における経営資源です。アライアンスによって、自社の経営資源をアライアンス先企業の経営資源と組み合わせ、今までにない革新的な技術や生産体制が生まれることで、企業の競争力が向上することになります。したがって、アライアンスを結ぶ場合には、きちんとアライアンスを行なう目的を明確にしたうえで、その目的を達成することができそうなアライアンス先を探すことが重要です。