これまで経理として働いてきた人が、さまざまな理由により「転職したい」と感じることは自然なことです。ですが、面接で本音をそのまま伝えることが良い場合もあれば、良くない場合もあります。では、どのように転職理由を伝えるのがベストだといえるのでしょうか。今回は、士業・管理部門特化の転職エージェント『最速転職HUPRO(ヒュープロ)』が、経理の人が面接で転職理由を伝えるコツについて解説します。
経理から経理の転職理由は以下の通りです。
・人間関係に不満がある
・年収が上がらない
・残業が多い
・人事評価に満足していない
・スキルアップ・キャリアアップしたい
会社の退職を決意した人の全体のうち、40%ほどは人間関係に不満があるといった本音を抱えています。経理という職業は、他部署との関わりも多く、自分の部署の人間関係だけでは済まない部分が多いのです。その分、人間関係の悩みも多くなりやすいのでしょう。
また、他には作業がルーティーンになりがち、成長が望めない、年収が上がらない、残業時間が多い、会社の評価制度に不満があるなど、経理の転職理由はさまざま挙げられます。今の職場で、このままでいいのだろうかと考える人も少なくありません。
上記のような本音の転職理由をそのまま面接で言うと、あまり良い評価は期待できないでしょう。
会社に対する不満の転職理由は、面接において現在の勤務先の会社の仕組みに原因があるのかが、転職先の面接官には判断することが出来ず、不満を抱く転職者本人に原因があるのではないかとマイナスイメージに捉えられやすいです。
もちろん、本音で話すべき点はしっかり伝えることが大事ですが、根本は同じ理由だとしても、その伝え方によって選考時にプラス評価になる場合とそうでない場合があります。
経理の仕事がルーティンワークになっていて将来が不安に感じた人、今の業務内容に満足ができていない人などには、スキルアップをしたいという転職理由で面接官に伝えるのが良いでしょう。
正直に「同じような仕事内容ばかりで、今後のキャリアが不安です」や「今の仕事内容が物足りないです」というと、ネガティブな印象の転職理由になってしまいます。そこで、これらの理由をポジティブな表現で「スキルアップをしたいから」と伝えると相手の印象が変わってきます。
実際に、本人も同じような仕事でつまらないと思っている根本には、もっとスキルアップをしたいという願望があるケースが多いです。せっかくそのようなことを思っていても、言い方によっては相手にマイナスで捉えられてしまいますので、気をつけるべきでしょう。
スキルアップを望んでいることは一般的にはプラスイメージではありますが、あまりにもその意欲が強すぎると捉えられてしまうと、一度採用をしても、また直ぐに他社への転職をしてしまうのではないかと懸念されるケースもあります。
転職理由にはスキルアップと共に転職先に貢献したいという考えも含めるべきでしょう。
これまで経理として働いてきた人が、スキルアップを図ろうとする場合には、同じ経理職でも様々なポジションがあるため、多くの選択肢があります。
経理職には会社の小口現金や振込を実際に取り扱う人、その取引を伝票に起票する人、伝票を基に会計データを作成する人、会計データを基に個別決算業務を行う人、個別決算を基に連結決算業務を行う人、というようにスキルに応じた様々な役割があります。
例えば、ポジションによるスキルアップを志望動機とした一例として、下記の転職理由ができあがるでしょう。
ただし、この転職理由にもあるように転職理由をエントリーシートや面接で伝える際には、その企業がどのポジションの人材を求めているのかを確認しておくようにしましょう。もしもこれを怠ってしまうと「入社してからこのようなことに携わりたいです」と伝えても、応募会社には「そういうポジションの人材を求めているなんて書いてないけど、しっかり我が社の応募内容を把握できてないのかな」とマイナスイメージを与えかねませんので、注意しましょう。
実際に面接で聞かれる志望動機を例に「答えるべきポイント」を抑えながら紹介していきます。ここで大切にしたいポイントは、自分を採用することで企業にどんなメリットがあるかを伝えることです。
上記の志望動機では、
・自ら学び、他に影響を与えることで全体のコストを削減できた点
・交流がないという「人間関係」や「職場」の問題を「黙々と1人で作業して貢献した」という別の視点で捉えた点
・応募企業を事前に分析し、企業の特徴を志望動機に盛り込んだ点
が良い印象を与えるきっかけになります。
企業は利益を上げ成長することが目的です。企業の視点から見たときに、「売上に貢献できる人材」または「コストを削減できる人材」が利益を上げることができ、経営上評価されます。自らの経験やスキルがいずれかに該当していると伝えることができれば、面接官から良い評価をもらえるでしょう。
そしてこれらの志望動機はあらかじめ準備しておく必要がありますが、丸暗記したものを棒読みするような対応では採用は難しいです。
丸暗記したものをそのまま話すことよりも、面接での雰囲気や話の流れに沿って面接官の意図を汲み取り、その場で文言を変えるような対応力が必要です。
また棒読みでは当然ながら企業への熱意は伝わりません。臨機応変にどこを一番主張すべきか考えながら志望動機を伝えるようにしましょう。
このように自分が持つ強みを上手く面接官に伝え、採用される確固たる理由を作ることができれば、選考を通過することができるでしょう。
志望動機や面接官とのやりとりに不安がある人は、家族等で面接の練習を行うことや、転職エージェントに相談することがおすすめです。
転職面接の事例について詳しくお知りになりたい人は、こちらのコラムも参考にしてみてください。
これまでにも解説してきたように、ネガティブでマイナスな転職理由をそのまま伝えてしまうのは良くありません。必ず、向上心が伝わるようなポジティブでプラスの転職理由を伝えるようにしましょう。
また、転職理由は1つだけではなく、いくつか用意しておくことをおすすめします。1つだけの場合、経理として働き続けたいという意志は伝わっても「その応募企業だからこそ」という部分が伝わりづらいのです。どうしてその応募企業でないといけないのかという部分を自分の中で掘り下げていくようにしましょう。
その企業ではどのような経理の仕事ができ、求められているスキルはどの程度のものなのかということは、しっかりと把握することが重要です。このようなことを曖昧にしておくと、的の外れた転職理由になってしまうことが多いです。
また何より、転職がうまくいったとしても、自分自身が「思っていたような職場じゃなかった」と入社後に転職を後悔してしまうことにもなるのです。
転職を成功させるためにも、自分自身が長く快適に勤めるためにも、採用条件の確認はもちろんのこと、転職先の分析は非常に大切なものになります。
分析の方法はいくつかありますが、まずは企業のホームページ等の世間一般に公表している情報の確認をすることが挙げられます。
ホームページ等には社内の様子やコラムが掲載されていることがあります。採用条件には載らないような企業の方針や従業員の人柄を知る手掛かりになります。企業の方針や人柄を知ることで、面接時の対応をどうような方向性で準備をすれば良いか考える材料となります。
次に時間がとることが出来る人に限られますが、実際に志望企業の付近に赴くことが挙げられます。会社の人の出入りにより休憩時間や退社時間が採用条件と同様のものであるか、会社の電気の点灯時間により残業時間が採用条件と同様のものであるか等、会社付近に赴き観察をすることで分かることがあります。
更に遠方の企業に転職したい場合は、状況によっては引越しが必要となります。引っ越しが考えられる場合には、あらかじめその引越し先になると考えられる企業付近の地域の家賃相場や施設の充実度等の生活のし易さを把握する必要があります。そのためにも志望企業の付近に赴くことは意義があります。
そして最も有効である方法が、経理職に特化した転職エージェントを利用することが挙げられます。一人で入手できる方法には限度があります。これまでに沢山の転職者を輩出してきた転職エージェントであれば、様々な企業の情報をもっているため、アドバイスを得ることが出来ます。
また転職エージェントを利用している企業は、人材採用において一定のコストを支払ってでも良い人材を欲しいと考えています。求人掲載料が無料であるハローワークを利用している企業よりも、資金繰りに余裕があり、人材採用に力を入れていると考えられます。人材採用に力を入れていると考えられる企業ほど、採用後も従業員を大切に扱う傾向にあります。
経理の採用面接で重要なことは、その企業だからこそ働きたい理由を伝えることです。現在の職場の不満をそのまま伝えるのではなく、転職先でどういったことをしたいのかといったポジティブな内容を伝えるようにしましょう。
今の不満にばかり目をむけ向き合っていくと、自分にとって重要としていることは何なのか、何を満たしたくて転職したいのかが見えてきます。それをポジティブに考え直してみることで、あなたらしい転職理由が見つかるはずです。これまでの経理のスキルを活かすために転職して良かったと思えるよう、しっかりと自分の考えに寄り添いながら、答えをみつけていきましょう。
当コラム内では、経理の面接ついての記事を他にも公開しています。併せてぜひご一読ください。
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