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企業の意思決定に必要な会計とは?基本的な会計手法を解説

HUPRO 編集部
企業の意思決定に必要な会計とは?基本的な会計手法を解説

企業での意思決定には根拠が必要になりますが、そのひとつに会計データが挙げられます。会計に基づく意思決定は根拠が数値で示されるため、周囲の理解や振り返りも得やすいです。

今回は、企業が行う意思決定の種類、意思決定に用いるのに適している管理会計の概要、意思決定に用いる会計手法の例を解説していきます。

企業が行う意思決定とは

意思決定とは、複数の選択肢から状況に応じてひとつを選ぶことであり、企業は経営を日々行ううえで、大小レベルの無数の意思決定を連続して行っています。企業における意思決定には、次の3種類があります。

・業務的意思決定
・戦略的意思決定
・管理的意思決定

業務的意思決定

現場の担当者レベルが、日常業務上で行っているのが「業務的意思決定」です。たとえば、パン屋で明日からジャムパンを減らしてカレーパンを増やそうという決定も、これに当たります。関わる金額は小さく短期間で、既存の枠組みに変更を与えない内容であることが多いです。

戦略的意思決定(構造的意思決定)

これに対して、経営者レベルが行う、企業の経営方針に影響する大きな決定が「戦略的意思決定」です。既存の枠組みを変える必要が生じ、関わる金額は大きく長期間な内容となります。たとえば、パン屋なら2店舗目の出店など、新店舗や工場の設置、海外含む新エリアへの進出、合併などがこれに当たります。

管理的意思決定

上記2つのほかに、戦略的意思決定の実現に向けて、中間管理職が行う業務管理についての意思決定が「管理的意思決定」です。業務内容や日程、人員配置などを決定して進行管理を行います。

意思決定には会計データが必要

3つの意思決定、特に戦略的意思決定のように大規模な決定を行うには、会計上のデータが必要です。たとえば、パン屋において2店舗目の出店を決定するには、店舗出店にかかる費用や資金繰りが必要な金額、何より利益が出るかどうかを検討します。

意思決定には、その決定が利益につながるのかを会計・金額上で評価する必要があります。

意思決定に必要な管理会計とは

会計は大きく次の2つに分けられます。

・財務会計
・管理会計

財務会計

企業の財務・経営状況などを、企業の外部(株主・債権者など)に報告するための会計が「財務会計」です。外部への公表が主目的のため、自由な形式で作ることはできず、会社法(上場企業では金融商品取引法も含む)に基づいて財務諸表を作成します。

管理会計

これに対して管理会計は、企業の内部で財務・経営状況が把握できればよいので、各企業ごとに自由な形式で作成・分析することが可能です。たとえば、小売業では在庫回転率などを算出していますが、この数値は特に公表することはなく社内で共有します。

意思決定に必要となるのは、財務会計ではなく管理会計です。財務会計は、決められた書式に金額が記載されているだけなので、意思決定に活用するにはそこから固定費・変動費への分割、損益分岐点の算出など、企業独自の形式や手法で数字の分析が必要です。

管理会計で大切な要素のひとつがスピードです。意思決定に反映できるタイミングで数字を出すことが求められます。また、管理会計は自由な形式で作れるため、数字の信憑性にも注意を払う必要があります。

意思決定に用いる基本的な会計手法:差額原価収益分析

意思決定には様々な手法が使われます。たとえば、戦略的意思決定で使う手法には、フリー・キャッシュフローやDCF法などがありますが、ここでは基本的な手法例として、業務的意思決定で使う「差額原価収益分析」を紹介します。

差額原価収益分析とは、複数の案における差額収益と差額原価を算出し、ふたつの差(差額利益)がより大きい案を選択する方法です。意思決定に会計を用いるためには、次の概念を理解しておく必要があります。

・差額収益
・差額原価
・埋没原価

「差額収益」は、案Aを用いたときの収益と、案Bやその他の案を用いたときの収益とを比較した差額です。「差額原価」は同様に、案Aの原価と、案Bやその他の案の原価とを比較した差額となります。


案A 収益:500円 費用α:100円 費用β:50円
案B 収益:300円 費用α:50円 費用β:50円

案Aを採用したケースでの
差額収益 案Aの収益500円−案Bの収益300円=200円
差額原価 案Aの費用α100円−案Bの費用α50円=50円
差額利益 差額収益200円−差額原価50円=150円

案Aを採用すれば、案Bを採用した場合より150円利益が大きくなるので、案Aを採用しようという比較手法です。

ここで、費用βは案A・Bどちらを選んでもかかる金額は変わりません。このように、どの案を選んでも差が生じない原価を「埋没原価」といいます。

まとめ

企業における意思決定は主に「業務的」「戦略的」「管理的」意思決定の3つに分けられます。根拠をもって意思決定を行うには、管理会計のデータを活用するのが適しています。

管理会計は、形式が決まっている財務会計と異なり、自由な形式で必要な数値の分析が可能です。意思決定には様々な手法が使われますが、差額収益・差額原価・埋没原価の概念はごく基本的なもののため、押さえておくとよいでしょう。

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