コーポレート・ファイナンス関連の学習や転職に役立つ資格にはどのようなものがあるのでしょうか。今回はコーポレート・ファイナンスを学習できる資格として、CFA(米国証券アナリスト)・証券アナリスト・プロフェッショナルCEO検定を紹介し、資格の特徴や学習内容、転職での評価などについて解説していきます。
広義での「コーポレート・ファイナンス」の定義は、投資や資金調達、企業における配当に関する意思決定や業務全般であり、「企業財務」の意味合いで使われることの多い用語です。
コーポレート・ファイナンス(企業財務)に関連する資格として、次の3つの資格を紹介します。
・CFA(米国証券アナリスト)
・証券アナリスト
・プロフェッショナルCFO検定
CFAとはアメリカのCFA協会が運営・認定している、世界の金融業界に通用する国際資格であり、東京で受験が可能です。世界90か国で試験が実施されるほどグローバルな資格でありながら、日本における資格取得者は1,300人程度と少なく、取得により他の転職者との差別化が図れるのは大きなメリットといえます。
CFAはレベル1〜3に3ステップに分かれており、最も難易度の高いレベル3は金融関連の資格では最難関に位置します。試験範囲は計量分析手法など10分野にわたり、コーポレート・ファイナンスはレベル1においては全体の10%程度を占めています。学習する内容は、資本コスト、投資プロジェクト評価方法、資本構成とレバレッジなどです。
試験は英語のため、語学力も必要となってきます。外資系などグローバルな環境でM&Aなどのコーポレート・ファイナンスに携わりたい方にはおすすめの資格ですが、難易度が高いため、レベル3の取得には数年単位の学習が必要です。
証券アナリスト(CMA)は、日本証券アナリスト協会が実施するCMAプログラムの受講・受験、第2次試験の合格に加え、証券分析における3年以上の実務経験(3年未満の場合は検定会員補に登録可能)があれば取得可能です。民間資格ではありますが、証券投資や企業評価における専門家を名乗れる資格といえるでしょう。
資格保有者の4分の1程度は、事業会社の財務・IR部門や公認会計士など金融業界以外に所属する人であり、事業会社などでM&Aでのコーポレート・ファイナンスに携わる際に役立つ知識を学習できます。
第2次試験は4科目で構成され、そのうちのひとつに「コーポレート・ファイナンスと企業分析」が含まれています。学習する内容は、投資決定理論や資本コスト、企業価値や株式価値に用いられる評価モデルなどです。
コーポレート・ファイナンスに携わりたいのであれば、上記2つが目指すべき資格であり、難易度も金融関連資格では最難関レベルです。そこまでの難易度を求めずにコーポレート・ファイナンスを学習したい場合は「プロフェッショナルCFO検定」があります。
日本CFO協会・金融財政事情研究会が共同で運営・認定している民間資格であり、2レベル中難しい方の「プロフェッショナルCFO」は簿記2級よりやや低い難易度といわれています。CBT方式のため、通年で受験できるのもメリットです。
試験の目的が、コーポレート・ファイナンスの基礎的な理論から始まり、財務戦略上の事例を通して、企業価値の向上につながる提案力の検証とされているため、企業財務の基本的な部分を学習できます。転職の武器にするにはやや難易度が足りませんが、自己啓発として取り組むにはよい資格です。
コーポレート・ファイナンスの仕事に携わるため、企業財務やM&A仲介企業などに就職・転職する場合、資格がどのように評価されるかは、新卒入社と転職とでは異なります。
新卒入社の場合、実務経験は問われないため、CFAのレベル1や証券アナリストの一次試験だけでも通っていれば、職務への意欲を認められて高く評価されます。
一方、転職市場では資格よりも実務経験を問われる傾向があるため、資格をもっているだけで実務未経験では、30代以降の場合はそれほど評価されないケースが大半です。
ですが、CFAについては最難関レベルの難易度に加え、保有者が少ないため希少価値があり、既存の社員が働きながら取得するのが難しい資格であるため、実務にそれほど結びつかない企業でも高く評価され大きな武器になり得ます。
独学で学ぶのが難しいコーポレート・ファイナンスですが、CFA・証券アナリスト・プロフェッショナルCFO検定といった資格勉強のなかで、体系的に学ぶことができます。
企業財務やM&A仲介企業における既卒者の転職では、資格よりも実務経験を重視される傾向があります。例外として、CFAは高難易度の資格なため、実務に結びつかなくても取得を高く評価されますが、数年レベルの学習や英語での受験が必要です。
資格取得に臨む場合は、それぞれの資格を取得した際のメリットと、どれくらい資格勉強に労力を割けるかを天秤にかけながら検討するのがよいでしょう。