国家資格の中でも難関として知られる公認会計士試験。難易度も高いため勉強法に悩む方も多いでしょう。今回は、合格に向けて効率的に学習するためにおすすめの勉強法や、必要な勉強時間、また社会人や独学でも合格を目指せるのかなど徹底的に解説していきます!公認会計士試験に挑戦したい方はぜひ参考にしてみてください。
公認会計士になるための勉強法について説明する前に、まず公認会計士になるためのステップについて簡単に説明します。
公認会計士になるためには、まず公認会計士試験に合格する必要があります。そのうえで、実際に公認会計士として登録するためには、2年間の実務経験と実務補習所での単位取得を経て、最終試験(修了考査)に合格する必要があります。
《参照記事》
公認会計士試験は、短答式試験と論文式試験の2つの試験から構成されています。年2回実施される短答式試験では4科目、年1回実施される論文式試験の5科目を勉強する必要があります。なお、よく比較される税理士試験とは違い、受験資格の制限はなく、誰でも受験することが可能です。
それぞれの試験については以下の記事で詳しく解説していますのでぜひご参考にしてみてください。
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では、この公認会計士試験の難易度はどれくらいなのでしょうか?
結論から申し上げますと、弁護士や医師と並ぶ三大国家資格の一つとして、試験の難易度は非常に高いといえます。その理由としては、科目数と勉強時間、合格率が挙げられます。
公認会計士試験は短答式と論文式両方に合格する必要があり、上述の通りそれぞれ科目数も多いです。短答式はマークシート方式ですが、論文式は筆記であるため、単に試験範囲を暗記すればいいというわけでもなく、基礎知識の理解と応用が求められます。
公認会計士試験・司法試験・医師国家試験を含む各資格取得に対する合格率と勉強時間は以下の通りです。
資格の種類 | 合格率 | 勉強時間 |
---|---|---|
公認会計士 | 7.7% | 4000時間 |
医師免許 | 91.7% | 5000時間 |
弁護士 | 45.5% | 6000~8000時間 |
簿記2級 | 20.9% | 300~400時間 |
税理士 | 19.5% | 3000~4000時間 |
合格までの平均勉強時間については、「約4000 時間」となります。
仮に1日10時間勉強しても400日、1年以上かかる計算です。その時間数だけで、いかに公認会計士試験が難関資格であるかわかります。
《参照記事》
上記表より、他の資格と比較しても合格率が非常に低く、また同じ会計の分野にかかわる税理士よりも難関であるといえます。
さらに、直近5年間の公認会計士試験の合格率について、以下でご紹介します。
令和元年 (2019年) |
令和2年 (2020年) |
令和3年 (2021年) |
令和4年 (2022年) |
令和5年 (2023年) |
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願書提出者数 | 12,532人 | 13,231人 | 14,192人 | 18,789人 | 20,317人 |
短答式試験受験者数 | 10,563人 | 11,598人 | 12,260人 | 16,701人 | 18,228人 |
短答式試験合格者数 | 1,806人 | 1,861人 | 2,060人 | 1,979人 | 2,103人 |
論文式試験受験者数 | 3,792人 | 3,719人 | 3,992人 | 4,067人 | 4,192人 |
最終合格者数 | 1,337人 | 1,335人 | 1,360人 | 1,456人 | 1,544人 |
合格率 | 10.7% | 10.1% | 9.6% | 7.7% | 7.6% |
受験者数と最終合格者数は毎年増加傾向にある一方、最終合格率は10%から7%と減少傾向となっています。近年の受験者増加傾向を踏まえて、以前に比べると短答式試験の難易度が高まっており、それに伴い最終合格率が減少傾向にあることが推察されます。
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ここからは、公認会計士試験に合格するための主な勉強法について、それぞれのメリットとデメリットを解説していきます。
公認会計士試験に合格した人のほとんどは受験予備校に通っています。その理由としては、独学での試験合格はかなり難しいからです。できれば予備校に通って勉強することをおすすめします。以下、受験予備校に通うメリットとデメリットを解説しながら理由を説明していきます。
公認会計士試験は、短答式・論文式それぞれ9科目で構成されています。ただ会計知識だけあれば良いという分けではなく、経営全般に対する幅広く深い知識、法律についての知見も必要です。さらに、それぞれの試験科目の専門性は非常に高いため、読んだだけでは理解が難しいという特徴があります。
そのため、公認会計士試験を目指す受験生は、予備校の資格講座に通うことがほとんどです。講師は長年にわたり試験を分析しており、その知見をもとに試験のプロが合格の最適解に近いカリキュラムやテキストを作成しているため、効率的に合格を目指すことができます。
公認会計士試験は問題量に対して試験時間が短いという特徴があります。
短答式試験では、財務会計論は簿記と財務諸表論は2時間、管理会計論、監査論、企業法はそれぞれ1時間です。問題数は16~28問となっており、1問にかけられる時間は3~4分程度。
論文式試験では、3日かけて2~3時間の試験が2科目ずつ繰り返される方式です。問題数は科目によって大きく異なりますが、監査論などは記述があります。
つまり、冒頭から解答していては制限時間に間に合いません。できない問題は潔く捨てるなどの受験テクニックが求められます。受験の感覚を養うためには、実際に試験を受けてみるほか、受験予備校の模試や模擬試験、答案練習(通称:答練)などがおすすめです。本番と同様の受験形式で行われるので、受験の感覚を身につけるのに役立ちます。
公認会計士試験は、受験が年単位でかかる長期戦です。
どの科目から、どれくらいのペースで勉強を進めていくべきか一人ではなかなか決められません。さらに上述の平均勉強時間の4,000時間をはるかに超えて勉強しても、ちゃんと試験で発揮できるのかは別問題で、何度繰り返しても身になっていなければ、勉強していないのと一緒です。
その点、受験予備校が提供する講義を、ペースメーカーとすれば自然と進捗管理ができ、効率よく学習することができます。また答練の結果を確認することで、自分が今どれくらいの順位にいるかも確認可能です。自分の現在の立ち位置・理解度を「見える化」することで、モチベーションや勉強の管理をすることができます。
受験予備校に通うデメリットとしては費用が挙げられます。大手では1年半~2年のコースで、約80万ほどの授業料がかかります。さらに、もしや教科書代、交通費なども含めれば、総額100万円を超えることもあります。
ただ、実際に公認会計士試験に合格された方のほとんどは、こうした受験予備校出身のため、高い費用を払ってでもそれを超えるメリットがあるといえるでしょう。
公認会計士試験の通信教育を利用するのも勉強法の一つです。
通信教育を利用することで、場所や時間にとらわれず、自分のペースで勉強することができることが挙げられます。そのため、働きながら公認会計士を目指す社会人の方などにはおすすめの勉強法であるといえます。
また、費用の面でも平均的に40~60万円と受験予備校よりは抑えることができます。
ただ、カリキュラムや教材が整っていても、受験予備校に通うこととは異なり、受験生の仲間がいる環境に身を置くことができないため、モチベーションや勉強の進捗などを自己管理しなければいけないことがデメリットとして挙げられます。
公認会計士試験の合格は独学では難しいという説明をしてきましたが、どうしても独学で合格を目指したい方、あるいは独学で勉強せざるを得ない方もいると思います。
ここでは独学で合格を目指すことのメリット・デメリット、また独学で目指したい方におすすめしたい方法を紹介します。
まず、受験予備校や通信教育にかかる受講料がかからないということ、さらに自分のペースで勉強を進められることが大きなメリットとして挙げられます。また、公認会計士試験の勉強を続けることができるか不安で、専門学校代を払って契約することに躊躇してしまう方についても、まず独学で目指してみることで公認会計士試験への適性を見極めることができるでしょう。
一方、公認会計士試験は専門性が高く独学では理解が難しい部分があり、平均の勉強時間より多くかかることもあるでしょう。また専門性の高い内容を効率よく勉強する方法を自分で導き出すことは容易ではありません。このように中長期的なスケジュール管理や学習方法は独学で習得が難しい点がデメリットとして挙げられます。また予備校や通信教育のように、試験のプロが分析した独自の教材を使えないため、最新の法改正へのキャッチアップや傾向分析も自分で行う必要があります。
ここからは、独学で公認会計士試験の合格を目指したい方におすすめしたい方法を紹介します。
短答式試験の財務会計論は、簿記と財務諸表論から成り立っているため、簿記検定で自分の適性を判断してから公認会計士試験を本格的に目指すことをおすすめします。合格率10%と簿記1級も難易度が高い資格として知られていますが、簿記1級があまりにも手こずってしまうようであれば、公認会計士試験の独学での合格は非常に困難といえます。仮に公認会計士試験を諦めたとしても、簿記の勉強をして、知識を得たことは社会人生活で役立つことばかりです。就職・転職にも役立ちます。ぜひおすすめしたい方法です。
予備校では、公認会計士試験に向けて短答式試験の模試や模擬試験を実施しています。自分が独学で行けるかどうか、ある程度勉強してみてからこうした模試を受験することで、試験の難しさや、自分の立ち位置、問題に対する理解度がわかるでしょう。
「独学で行けそう」と思ったら、まず独学で短答式試験の合格を目指しましょう。短答式試験ではマークシートでの解答であり、自分自身で採点することが可能なので、自分の理解度や勉強のペースがマッチすれば、独学でも攻略しやすい試験といえます。
しかし、論文式まで独学となると相当に難しいため、短答式試験に合格後、論文式試験のみ専門学校に申し込むことで専門学校にかかる費用を抑えることができます。短答式試験合格者を対象として、論文式試験合格のための講義を用意している専門学校もあります。
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ここからは、科目別のおすすめの勉強法について解説していきます。
最も基礎となる重要な科目で、配点比率が他の科目よりも高いため、勉強時間も多くなります。
計算分野の簿記と理論分野の財務諸表論にわかれますが、どちらも繰り返しテキストの例題と問題集を解き続けることが重要です。問題を見た際に、反射的に解答パターンを出せるくらい、あらゆるパターンの問題を理解し、対応できるようにすることが必要です。
こちらも計算分野の原価計算と理論分野の管理会計から構成されており、テキストの例題と問題集を繰り返し解くことが基本の勉強法となります。短答式試験と論文式試験で範囲が変わらないため、短答式試験のうちから得意科目にしておくことが重要です。
公認会計士の独占業務である監査に関する理論や制度に関する知識を問う科目であり、理論問題のみの出題ですが、暗記が必要な量が非常に多いです。ただ、単純に丸暗記するのではなく、他の科目以上に深く内容の理解が重要な科目のため、他の単元とのつながりを意識しながら、自分が監査業務をしているイメージをしながら勉強することが効果的です。
法律科目のため暗記量が多い科目であり、知識量が重視されるため、他の理論科目より先に始めることが重要です。全体像を把握するまでは大変ですが、知識量を増やすことでなれると点数が安定します。
論文式試験のみで出題される租税法は、計算問題と記述問題が出題されます。この科目では、まず必要な知識を暗記して、その後ある程度知識が定着したら、よく出る論点を繰り返し演習することが効果的な勉強法であるといえます。
論文式試験の選択科目は、経営学・統計学・経済学・民法から構成されており、1つを選んで受験します。特に経営学は他の科目と比べて難易度が低く、必要な勉強時間が少ないことに加えて、実際の業務に知識を活かすことができるため、大半の受験生は経営学を選択しています。数学が得意であったり、法学部出身などの他の科目への適性がない限りは、経営学を選択して勉強することがおすすめです。
公認会計士を目指すのであれば、合格に向けた勉強のポイントを押さえておくことが重要です。ここからは、大学生と社会人を立場別に、合格までの道のりを短縮するためのポイントを紹介します。
大学生活は授業やサークル活動、アルバイトなどで忙しいため、その中で試験勉強を確保するために効率的な時間管理をすることが重要です。1日のスケジュールを見直して、どの時間帯に集中できるかなどを把握し、勉強を習慣化できるよう毎日のスケジュールを管理しましょう。
また大学1,2年生で目指す場合は、2年コースで受験することで在学中に合格・内定を確定させることができます。また3,4年生から目指す場合でも短期コースでの受験や、卒業後の合格を目指すことができるため、自分が勉強を始めたタイミングに合わせて勉強のスケジュールを組むことが重要です。
結果的に、勉強時間を多く費やせる学生の方が合格率は高くなりますが、社会人の方ももちろん合格しています。しかし、働きながら目指すことで一番苦労するのは、勉強時間と勉強する環境の確保です。通勤時間やお昼時間に加えて退勤後の時間にも勉強することで、1日5~6時間ほどは勉強時間を確保するというように、平日は隙間時間で勉強時間を創出することが重要となります。
ただ、職場環境的に残業が多く、勉強時間を確保できない場合は、思い切って勉強しやすい職場に転職なども考えることが大切です。働きながら合格することができるといっても、大前提としては基本的に平日も勉強時間が取れることが必要だからです。
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これまで一般事業会社の経理部門に所属してきたKさん。会計業務の面白さを感じ、公認会計士を目指したいと一念発起し、短答式試験を受けるタイミングで弊社転職支援サイト「ヒュープロ」にご登録され、ご転職活動を始められました。
初回面談時にお伺いしたご希望条件は、公認会計士試験のための勉強に理解を示していただける職場であるということと、監査業務に携われるということでした。キャリアアドバイザーは弊社企業担当と掛け合い、Kさんの希望する条件を伝え、希望条件にあった事務所のみをご提案させて頂きました。
Kさんの転職成功ポイントは、弊社のキャリアアドバイザーとの面談の中で今後のキャリア形成についてじっくりお話をさせていただき、譲れない希望条件を絞れたことにあります。そのため、弊社もKさんの希望に合った監査法人を提案することができ、スムーズに転職活動を成功させることができました。
弊社では現在資格取得に向けて勉強をしている方のキャリアご相談も行っております。将来のキャリアプランに関して疑問や不安をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
上述の通り、公認会計士は相当な努力を要する資格ですが、それでも目指す人が絶えない理由をここからは紹介します。
厚生労働省のHPによると公認会計士の平均年収は約746万円で、日本の平均年収である461万円に比べると、300万円ほど高いです。
これはやはり、公認会計士のニーズの高さの表れといえるでしょう。
出典:参照:職業情報提供サイト(日本版O-NET)
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公認会計士は監査業務を始め、会計監査のスペシャリストとしての知識を習得および証明することができます。資格取得の難易度が高い分、自身の大幅なスキルアップも期待できるのです。
公認会計士は専門的な分、働ける職場が限られていると思われがちですが、幅広い職場からのニーズがあります。なので、自身の希望に合わせて働く場所を選択できるのもメリットといえます。具体的な就業先については、次の章で解説します。
公認会計士としての最大の関門は「公認会計士試験合格」です。合格までには相当な時間とお金もかかります。それでも合格できないかもしれません。じっくりと自分の将来を考えた上で「それでも公認会計士になりたい」という強い意志と実行力が求められます。しかし、合格後のキャリアや、仕事のやりがいを考えると挑戦する価値のある資格です。もし、あなたが少しでも公認会計士という業務に興味を持ったのであれば、今回の記事で解説した勉強法を参考にぜひ合格を目指してみてください。
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