従業員にとっては嬉しい福利厚生ですが、企業にとってはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。本記事では、福利厚生を導入することによって生じる メリットやデメリットについて解説します。
会社の業績が厳しくなると真っ先に見直されがちな福利厚生ですが、福利厚生は従業員にとってだけのメリットではなく会社側にもたくさんのメリットがあるのです。
以下一つずつ説明していきましょう。
給与もそうですが、住宅手当や家族手当単身赴任手当などの各種手当がしっかり支給されるというのは、社員が安心して働ける環境を整えるのに大きく寄与しています。
転職したいと思っても、この待遇を捨てられるか?と考えるとなかなか退職できないということもあり、社員の離職率の改善にも役立っているといえます。
最近では、人間ドックや脳ドック、女性疾病の検診など各種健康に対する取り組みを強化している会社も多く見られます。もし入院したとしても、休業手当や見舞金などの保証がしっかりしているということであれば安心して働くことができるのです。
こうした福利厚生が充実は、社員の働くモチベーションにつながっていることは想像に難くありません。
就職・転職を希望する人は、給与と同時に福利厚生にも重いウェイトを置いています。いざ会社に勤めたとして安心して、快適に働き続けられるかということが非常に重要だからです。
一昔前であれば、それは終身雇用制度でした。入社年次が浅いうちは待遇が低くても、定年までの雇用が確保され、長く務めることによって地位も収入も上がるという保証があったので、優秀な人材も会社に忠誠心を持って働いていたのです。
しかし、終身雇用制が崩れた今、優秀な人材を確保し、定着させるためには、福利厚生の充実が大事だという認識が広まってきています。
有名なのはGoogleにおける、カフェテリアの食事無料や軽食とドリンクサービスなどですが、食事を提供する会社は多く、結果的に栄養バランスの取れた食事を規則的に食べてもらうという健康管理にもつながり、健康診断や人間ドックと相まって、社員のコンディションを整えるのに役立っています。
また、企業によっては昼寝ができたり、設備ではなくオリジナルの休暇を充実させたりといったユニークな福利厚生を取り入れているところもあります。
会社が社員のために福利厚生で支出したものは経費として計上できます。さらに、社員にとっても福利厚生費で賄えるものは出してもらった方が額面給与を減らすことで節税になるのです。
たとえば、福利厚生で良くあるのが家賃補助ですが、例えば家賃補助が5万円あるとして、その金額をそのまま給与に加算すると、税金や社会保険料の算出基準が上がってしまいます。
しかし賃貸先を法人契約にし、給与から家賃-5万円分を差し引いただけ控除したらどうでしょうか。5万円-控除額が少ない分、税金や社会保険料の金額も少なくて済むのです。
「福利厚生よりも給与」と言う人もいますが、福利厚生費はその内容によって大きな節税効果があるのです。
このあたりは日本の大企業はまだまだ手厚いといわれる所以でもあります。
会社によっては、法定の健康診断が年に1度あるほか、福利厚生で人間ドックやがん検診を受けられたり、メンタルヘルスのカウンセリング、フィットネスジムやマッサージといった福利厚生を受けられることもあります。
「会社の補助があるから行ってみよう」ということで、結果的に健康管理に勤しむようになるのです。マメに検診を受けることで、例えばがんなどの重篤な病気も早期発見できます。
福利厚生制度には、様々なメリットがあることがわかりましたが、その反面デメリットはあるのでしょうか。
当たり前ですが、福利厚生制度の利用については費用がかかります。
会社によっては福利厚生費を徴収しているところもありますが、基本的にはほとんど福利厚生制度の費用は会社持ちです。そのためコストの負担が会社の経営を圧迫しており、以前はよく見られた会社の保養所などは、今はほぼないのが現状です。
福利厚生は導入した後は管理が必要になります。例えば、バースデー休暇を導入したら通常の有給休暇とは別に申請の管理や休暇数のカウントなどを人事労務の担当者が行う必要がありますし、社員食堂があるとしたら、社員食堂の運用も別途必要です。仮に、社内サービスを外注したとしても、外注業者の選定や管理が必要になります。
福利厚生は管理コストという意味でも費用が掛かるのです。
福利厚生制度は、それぞれの社員によって利用率が異なってしまいます。よくあるのが本社は福利厚生が充実していても、地方支社では設備や提携先がなく受けられなかったりするパターンです。
また、例えば保育サービスなど家族向けの福利厚生があっても、独身や子どものいない既婚者は受けられないなどといったことがあると、その分を給与としてほしいと思う社員がいても不思議はありません。
先ほどメリットの点において社員のモチベーションアップや優秀な人材の確保と述べましたが、それはあくまで満足できる福利厚生制度を準備できているからこそなのです。
福利厚生制度は、上手くいけばメリットが大きいのですが、この不況のさなか、福利厚生制度をやむなく廃止する会社も増加傾向にあるのが現状です。
しかし、今度は逆に福利厚生が充実している企業がより輝いて見えるという皮肉な状況にもなっています。
より良い人材を確保し、社員のモチベーションを上げるために、本当に従業員が満足する福利厚生制度とはなにかということについて、考える時期に来ているのではないでしょうか。