業種により従業員数は異なるものの、在籍している従業員数に応じて「総括安全衛生管理者」「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」の選任が義務付けられています。このような立場の人間を配置し、職場環境を安全に管理することを目的としているのです。今回は、会社に求められている安全衛生管理について解説していきます。
労働安全衛生法は4つに分かれています。1つずつ見ていきましょう。
労働安全衛生法の通則は、責任者などの人の役割、そして組織の体制について定められています。このなかに、これからご紹介する安全衛生委員会や総括安全衛生管理者。安全衛生管理者、安全衛生責任者、産業医なども含まれています。また、造船業や建築業といった特殊な業種には、労働安全法によって定められている責任者以外にも、別途の責任者の存在が必要となる場合もあります。
労働安全衛生法の衛生基準には、労働者が安全かつ衛生的に業務に携わることができる環境を整えるべきだとして、次のようなことが定められています。
この他にも、夜間従業員の仮眠設備に関することや、労働者の清潔保持義務、気温や湿度、証明などの調整設備の点検などについても細かく定められています。
労働安全衛生法においては、従業員の安全基準に関しても定められています。例えばその中のひとつに、安全衛生教育があります。これは、新しく従業員を雇用した場合や、従業員の業務内容に変更が生じた場合に、作業で使用する機械についての危険性や有害性、正しい取り扱い方法に関する説明をしっかりと行う必要があるという定めです。
その他にも、事業者に対し、安全基準の一環とし、有害物抑制装置や安全装置、保護具の使い方や性能、点検などについて詳しく従業員に指導をすることが求められています。また、業務中に発生する可能性がある事故や疾病に対する退避の方法、清潔の保持、整理整頓といったような安全基準を満たしている必要もあると考えられています。
労働安全衛生法には特別規制といった規則もあります。これは、事故現場などにおいての標識の統一や、クレーンなどの運転時の合図の統一、危険な場所での作業については危険を防止するための措置が取られることなどの規定がなされています。
安全衛生委員会とは、衛生委員会と安全委員会を統合したもののことを指しています。事業所によっては、衛生員帆と安全委員会の双方を設置しなければならないケースもあります。このような場合は、2つを統合させた安全衛生委員会を設置することで、条件を満たすことができるのです。安全衛生委員会においては、従業員の危険や健康障害となるような状況を防ぐ対策や、労働災害の原因となることや、再発を防止する対策についての調査審議が行われます。
また、総括安全衛生管理者とは、このような安全な職場環境を整えるために配置される安全管理者や衛生管理者の指揮をとる立場のことです。この総括安全衛生管理者が、労働者の健康障害や危険性に関する防止策を統括管理します。
安全衛生委員会についてはこちらのコラムでも詳しく紹介しています。
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安全衛生管理者とは、労働安全衛生法で定められている労働環境や労働条件の改善と予防処置などに努め、従業員の衛生全般に関して管理を行う者のことを指します。一定の規模を超える事業場においては、医師、労働衛生コンサルタント、衛生管理者免許を取得している者から選任を行うことが義務となっています。
そして安全衛生責任者とは、統括安全衛生責任者と連絡をとり、その指示のもと職務を果たす者のことをいいます。統括安全衛生責任者より伝えられた事項を関係者へ伝達したり、請負人によって作成された作業計画に関して統括安全衛生責任者と調整をしたりする役割も果たします。
最後に産業医ですが、産業医とは、従業員が健康を保ち、快適な作業場で業務に携わることができるように、専門的な立場より指導や助言をする医師のことを指します。一般的な医師のように、診察や処方をするようなことはありません。職場を巡視して環境状態を確認することや、健康診断の結果を確認することが主な業務です。産業医は医師の資格をもっていることに加え、労働衛生コンサルタントの合格や、産業医科大学の産業医学基本講座を修了などのある要件を満たしていることが必要です。
厚生労働省により、労働安全衛生法関係の届け出や申請などの帳票の印刷に関する入力支援サービスが令和元年12月2日より開始されました。届け出や申請の帳票を作成する際、入力に誤りがある場合や未入力の項目がある場合にエラーメッセージが出る、または過去のデータを用いて注力できるなど、帳票の入力をスムーズに行うために実施された支援サービスです。事前の申請や登録は不要であり、労働安全衛生法関係の届出・申請等帳簿印刷に係る入力支援サービスのサイトから利用できます。
危険な現場での作業や、夜間の業務を行う従業員などに対し、労働安全衛生法はさまざまな定めをしています。事業者は、これらの定めの通りに必要な人員を配置し、職場環境を整えることが求められます。従業員が安全で健康に業務を行えるよう、事業者もできる限りの努力をしていくことが必要です。