労働組合より団体交渉の申入れがあった場合、その要求が義務的団交事項に関するものであれば、使用者はその交渉に応じなければなりません。なかには交渉を拒みたいような事態もあるでしょう。しかし、正当な理由なしに拒めば、不当労働行為と見なされてしまいます。では今回は、労働組合対応について解説していきます。
労働組合法とは、使用者と労働者との関係について定めている法律のことをいいます。労働法律法第一条一項の定めの通り、労働者が代表者を選出して労働組合を作ることや、使用者との労働条件における交渉をすることなどを認める内容となっています。つまり、使用者と労働者は対等な関係であるということを述べているのです。そのため、労働組合より団体交渉を求められた場合、使用者は正当な理由もなく交渉を拒否することができないことになっています。基本的には使用者が、団体交渉に誠実な態度で応じなければならないという義務があるとされているのです。
労働組合がもつ3つの権利としては、労働基本権がよく知られています。この労働基本権とは「団体行動権、団体交渉権、団結権」の3つの権利のことを指しており、使用者が1番気をつけておかなくてはならない権利が「団体交渉権」です。先ほどもお伝えした通り、正当な理由もなく交渉を拒むことはできませんし、ただ交渉の場につくだけではなく、誠実に対応をすることまで求められています。労働組合の代表者の意見を聞き入れないといったようなことは、一切認められないのです。
労働組合側から交渉を求められたらきちんと応じ、労働組合側の主張や要求について使用者としての回答をしなければなりません。また、労働者側が要求している改善案を期限を決めて実行するか、もしくは要求の受け入れが困難である場合はその理由を労働者側にきちんと説明をしなければならないとされています。もしも、正当な理由もなく労働組合側からの交渉に応じなかったり、交渉をすることを拒んだりした場合は、交渉に誠実に向き合わなかったとされて不当労働行為として労働委員会より会社に調査が入る場合があります。
ここで、使用者である会社側の権利についても確認をしておきましょう。労働者側に権利があるように、会社側にも権利が認められています。それが「経営三権」です。経営三権とは「人事権、業務命令権、施設管理権」のことを指します。そして、これら経営三権に関しては、労働組合人事介入ができないとされています。もし、この経営三権に触れる交渉を求められた場合は、交渉をする義務も発生しません。なぜなら、使用者である会社側の権利について交渉をしているようでは、経営を行っている者がどちらなのか分からなくなってしまうためです。
労働組合からの要求例として多いものは、賃金、そして休日や休暇、そして労働時間に関することだといえます。つまり、労働者の労働条件に関わるような要求が多数を占めているのです。また、時間内組合活動や労働組合活動に関する要求例も見られます。
事前に予想できていなかったような要求が労働組合より出されたような場合は、その場での返答は保留にしましょう。労働組合の会員は、かなり強気な態度で会社側に要求を言ってきますし、なかには暴言めいたことを発言する人もいるかもしれません。しかし、その組合員は、裁判官ではありませんし、労働基準監督署の監督官でもないのです。法的な権限など何も持たず、ただ自分の要求を通したいためだけに強気に出ているだけなので、冷静に対処することが求められます。間違っても、勢いに飲み込まれて文書での合意を交わしたりしてはいけません。
また、よく心得得ておかなければいけないことは、誠意をもって労働組合の交渉に応じるということと、労働組合員の要求に応じるということは全く異なるということです。まったく交渉に応じないというのは不誠実団体交渉だと判断されてしまいますが、要求に対して早急に返事をする必要はありませんし、はっきりとした返答を返す必要もないのです。誠実に対応することと、要求に簡単に応じることは違うということは、よく心得て交渉に向かうようにしてください。
労働組合と会社側の交渉は難航することが多いです。そこで弁護士を雇う会社も少なくありません。また、長期に渡って交渉を続けた結果、最終的に金銭で解決することも少なくないという事実があります。とにかく会社側としては毅然とした態度で、交渉に応じていくべきです。また、長期に渡って粘り強く交渉に応じ続けた結果、労働組合側より妥協案が出されることもありますので、とにかく冷静に判断をして責任をもった発言をしていきましょう。