従業員が勤務中にケガなどをした場合、労災保険が適用となります。しかし、そのためには事業所より書類を提出しなければいけません。今回は、労災8号や労災5号、特に従業員の事故にすぐに対応して記入しなければならない労災5号の書き方や手続きの流れ、提出先について詳しく解説していきます。
労災とは「労災保険」のことを指しますが、この労災には3つの種類があります。それぞれを「通勤災害」「業務災害」「第三者行為災害」といいます。それぞれひとつずつ見ていきましょう。
通勤災害の認定を受けるには、まず事業所に申告している通勤経路で通勤をしていることが認定要件です。
例えば、通勤途中でケガをしたとしても、申告していない経路で起こったケガの場合は、労災認定は受けられません。ただし、事業所が緊急のために認めた経路であった場合は通勤災害と認められることがあります。例えば事業所が従業員に緊急で出社してほしいと伝え、従業員がタクシーで事業所に向かう途中で事故に遭ったような場合は、通勤災害です。
業務災害とは、業務を行っている最中に起きた事故などにより、ケガ、病気、志望といった災害が起きた場合を指します。つまり、業務との因果関係がはっきりと認められるような場合に認定されるものです。
第三者行為災害とは、通勤途中や業務中に交通事故が起きたケースなど、第三者の相手方が加害者となる場合の災害のことです。第三者行為災害については、労災保険ではなく、事故を起こした相手方の加害者が損害賠償の義務を負います。
また他にも、業務中の従業員に対し、加害者とされる第三者により暴力を振るわれたような状況が起きた場合も災害の対象であると考えられます。
このような場合は、従業員は「加害者である第三者に対しての損害賠償請求権」と併せて「労災保険の給付請求権」も取得することが可能です。しかしながら、このようにすると従業員は二重の支払いを受けることになるため、労災保険給付と民事損害賠償は同時には受け取ることができないルールが設定されています。
労災5号は、例えば従業員が業務中に事故に遭った場合に必要とされる書類です。労災5号というのは略式の呼び名であり、正式には「療養補償たる療養の給付請求(様式第5号)」といいます。
労災保険を使って治療を受ける際に必要になりますので、労災が認められるような事故などが起こった場合は、すぐに事業所が用意しなければなりません。従業員がこの様式第5号を持参して病院に行くことにより、医療費を負担することなく治療を受けることができるからです。
労災8号が必要となる状況とは、労災5号よりも従業員の状況が悪く、例えば休業せざるを得ないような場合です。休業が4日以上になるようなケースは、労災5号様式のほかに、休業補償の書類となる労災8号様式の提出もしなければいけません。
労災5号の書き方としては、指定の用紙に以下の8項目を記入するかたちです。
労災5号は、厚生労働省のホームページよりすぐにダウンロードして印刷もできるので、常に何枚か常備しておくといいでしょう。この際、手続きがスムーズになるように「労働災害保険指定医療機関」においての治療を従業員に受診してもらうようにしてください。
この指定医療機関以外の医療機関で治療を受けた場合、手続きはとても複雑になります。そして、その労働災害保険指定医療機関を受診した際に、医療機関記入欄に必要事項を記入してもらうようにしましょう。
労災8号の提出先は労働基準監督署ですが、労災5号の提出先は従業員が受診をする労働災害保険指定医療機関、そして薬などを処方してもらう労災指定薬局の両方が対象です。そして、後日、病院と薬局より管轄の労働基準監督署や労働局へ送付され、その事案が労災認定となるかどうかが審査される流れとなるのです。
労災8号について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
従業員が業務中にケガをしたような場合、すぐに事業所が用意すべきものは労災5号です。その労災5号を従業員は持参し、労働災害保険指定医療機関や薬局へ行きます。労働災害保険指定医療機関ではない医療機関で受診をした場合は、従業員が一度、治療費を負担しなければならず、そのうえその後の手続きが非常に複雑になるため、前もって事業所の近くの労働災害保険指定医療機関を調べておくことをおすすめします。労災5号も、何枚か印刷をして事務所に置いておくと、すぐに記入ができるので安心です。