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未経験から労務への転職は難しい?求人傾向や他職種との比較から見る難易度は?

社会保険労務士 田中かな
未経験から労務への転職は難しい?求人傾向や他職種との比較から見る難易度は?

労務担当としての転職を考えている方にとって、「労務担当への転職は果たして難しいのか」は気になる点ではないでしょうか。労務求人の一般的な傾向や労務業務の内容、労務への転職が難しいといわれる理由を知っておきましょう。今回は労務の転職の難易度について解説していきます。

労務求人の傾向

まずは、労務求人の一般的な傾向をまとめます。

・労務の転職は圧倒的に経験者が有利
・求められる経験年数は最低3年、高年収を狙うなら7年~10年
・未経験の場合は社会保険労務士資格者もしくは試験受験生が優遇傾向
・年収相場は一般社員で350万~450万円、管理職は450万~700万円が目安

傾向と自身のスキル・経験を照らし合わせてみると、自分にとって労務の転職は難しいのかどうかが見えてくるでしょう。年収も重要な要素です。年収相場も踏まえて労務へ転職するメリットがあるのかを考えてみてください。

未経験で労務に転職するのは難しい?

上記の求人傾向を見ていただければ分かるように、経験者に比べれば未経験からの転職は難しいといえます。ただし、未経験から労務へ転職できる可能性はあります

誰でも初めは未経験なので、労務の仕事をすべて覚えておく必要はありません。しかし「給与から何が引かれるのかすぐに答えられない」「保険と税金は同じようなものだと思っている」といったレベルだと労務担当になるのは難しいでしょう。

労務は企業にとって法の番人といわれるほど法律の知識が問われる仕事です。必ずしも資格を取得する必要はありませんが、少なくとも最低限必要な法律の知識や手続の概要などは勉強しておくことが大切です。

また労務は未経験でも事務経験がある、人事や総務など関連業務の経験があるなどの場合は転職できる可能性が上がります。社内外の交渉・調整の経験が豊富な人や、分かりやすい言葉を用いて物事を伝える力のある人なども評価の対象となります。

労務の転職が難しいといわれる理由

労務の転職は次のような理由から難しいといわれることがあります。

事務職が人気だから

労務は事務職ですが、そもそも事務職は非常に人気が高い職種なのでライバルが大勢います。ライバルが多ければ経験豊富な人や能力の高い人がいる確率が高くなるでしょう。

また労務を含めた事務職は間接部門なので、部署内の人数がもとから少ない傾向にあります。加えて営業職のようにノルマがなく、製造や建設のように体力仕事でもないため辞める人が少なく、欠員がなかなかでません。人気が高く募集数も少ないと採用倍率が高くなるため、転職はそう簡単ではないのです。

専門的な知識が求められるから

労務の業務には労働や社会保険に関する法律、税金の知識などが問われます。行政へ提出する書類は書き方や添付書類などが決まっているため、手続きに関する専門知識も必要です。自社の社員から法律や手続面で問い合わせがあった際には、専門的な知識をかみ砕いて伝える必要がありますが、そのためには自身の深い理解が前提となります。

信用性が求められるから

労務担当は社員の極めて重要な個人情報にかかわります。日常的に給与データやマイナンバーを扱うこともあるため、口が軽かったり、ミスが多かったりすると情報漏えいなどといった深刻な問題に発展しかねません。こうした理由から、労務担当の採用には慎重にならざるを得ず、信用性のある人材を求めるわけです。

ただ信用性というのはなかなか見極めるのが難しいため、どうしても個人情報の取り扱い経験がある労務経験者が有利になります。他部署に在籍している自社の信用できる人材を労務担当として異動させるケースも多々あり、この点も募集が少ない理由の一つとなっています。

未経験からの挑戦は20代まで?30代・40代は厳しい?

一般的に未経験の職種へのチャレンジとなると、30代前半までというのが年齢的なボーダーラインと言われています。
労務職においても20代はポテンシャル採用(候補者の潜在的な能力や成長の可能性に焦点を当てる採用アプローチ)を導入している企業においては、それ以上の年齢の方に比べると、未経験でも比較的スムーズに転職活動をできる可能性が高いです。

即戦力が求められる30代や40代ではやはり経験者が有利となるでしょう。そのため、関連業務の経験がある、もしくは社労士資格を有していない限りは、その年代における未経験からの転職は厳しいといえます。

労務の経験と呼べる業務内容

「労務の経験がある」というためには、一般に次のような業務経験があることが求められます。

・勤怠管理、給与計算
・社会保険や労働保険の手続
・年末調整業務
・安全衛生管理
・労働トラブル対応

応募企業によっては人事も兼任させたい場合や、総務として採用し労務以外にも幅広い業務を任せたい場合などがあります。その場合は、人事経験や総務経験があればアピールできます。人事であれば採用活動人事評価に携わった経験、総務であれば福利厚生や社内広報、設備管理などが挙げられます。

労務に向いている人

未経験者は実務ができるという保証がないため、採用側は労務の仕事に適性があるかどうかを定性面で判断することも少なくありません。
労務の仕事には、ある程度の向き不向きがあり、具体的には以下のような人は向いているとされています。

・裏表がなく、コミュニケーション力が高い人
・企業の課題に当事者意識を持って向き合える人
・従業員から感謝されることにやりがいを持つ人
・秘密を守れる人
・コツコツした作業が正確にできる人

労務の仕事への向き不向きについて、以下の記事でも詳しく解説しています。

労務の仕事はつらいのか?

労務の仕事は、「つらい」と感じる人も多少はあるようです。
例えば、「法改正が頻繁に行われるので、ずっと勉強していなければいけない」といった意見も聞かれます。また、「社内での評価がされにくい」・「意外と社内でコミュニケーションする機会が多い」などといったことに対して「つらい」と感じることもあるようです。

しかし、その一方でやりがいの多い仕事であることも事実です。特に労務はその企業の従業員の働く環境や生活を守る役割があるため、従業員に貢献し感謝される仕事であることは、やりがいになります。

労務の仕事のつらさややりがいについては、以下の記事に詳しく解説しています。ご自身の価値観にマッチしているかどうか、確かめておきましょう。

労務の転職を成功させるためのポイント

難しいといわれる労務の転職を成功させるポイントを解説します。

労務を志望する理由を明確にする

採用担当者は、事務職の中でもなぜ労務を志望するのかを知りたいと感じています。ネガティブな志望動機では熱意が伝わりませんので、自身の適性や経験にそったポジティブな志望動機を伝えることが大切です。これまでの経験を通じて応募先にどんな貢献ができるのかという視点をもちましょう。企業研究を通じて労務として何が求められているのかを理解しておくことです。

ミドル層はマネジメント経験があると有利

30代~40代のミドル層はマネジメント経験をアピールしましょう。管理職でも労務業務の基本的な知識は必要ですが、実際に手続や計算を担当するわけではないため、マネジメント経験があれば管理職としての採用に期待できます。
キャリアチェンジでこれから労務の実務を経験していきたいミドル層も、マネジメント経験があると有利です。部下の勤怠管理や労働環境を整えるのは管理職の役割であり、労務業務の根本にかかわっていたといえるからです。

資格や適性をアピールする

未経験の場合は実務経験のアピールができませんので、労務業務を任せられると信頼されるために資格適性でアピールしなければなりません。資格では社会保険労務士が最も活かせる資格ですが、他にも労務管理士給与計算能力実務検定といった資格も労務の転職ではプラスに働きやすいでしょう。

適性については、先述した「向いている人」であることをアピールするのがオススメです。たとえ全く関係の無い仕事をしていたとしても、営業として多くのクライアントとコミュニケーションを取った経験があったり、情報処理など正確性が求められる業務をしていた場合は、どのようにそのような能力を高める工夫をしてきたかも踏まえて、アピールするようにしましょう。

資格による知識の証明と適性のアピールができれば、未経験者の中でも有利になってくる可能性が高いでしょう。

書類添削や面接対策は転職エージェントに任せよう

転職活動は自分ですべてやろうとすると、かなり骨が折れるものです。例えば上述した志望動機については、労務を志望する理由に加えてその企業を選んだ理由についても記載しなければなりません。もちろん面接も各企業で質問される内容や評価ポイントが異なりますので、その傾向をつかんでおく必要があります。

そのような転職活動をサポートしてくれる転職エージェントをうまく活用するのも、成功されるポイントの一つです。士業・管理部門特化の転職エージェントであるヒュープロは業界特化の特徴を活かして、多くの労務求人をご紹介しています。
まずはご相談から、お待ちしております!

【参考】未経験者の転職難易度を関連職種と比較

ここまでで、未経験からの労務職への転職はある程度難しいものの、決して不可能ではないとご紹介しました。本章の最後に、未経験からの労務への転職が具体的にどのくらい難しいのかという部分についてより明確化するために、関連職種との難易度比較をしていきます。

他の管理部門と比較

労務職は管理部門の一部ですが、管理部門には他にも経理法務総務などの職種があります。
経理や法務は労務と同じく業務の専門性が高いため、未経験者に求められるスキルや適性は労務と同程度です。ただし経理については、労務よりも求人数が多い傾向にあります。また、法務は管理部門の中でも特に専門知識が必要な職種のため、未経験者の採用枠は少ないです

総務については、企業によって担当する業務が大きく異なるため、一律に求められる資格やスキルが定まっていません。その分、適性が重視され、マルチタスクに対応できたり、さまざまな従業員とのコミュニケーションが苦でない方などが採用されやすいです。とはいえ他の管理部門のように専門知識が必要な場面は限られていますので、管理部門の中では未経験からの転職難易度は低めといえます。

以上より、管理部門の職種別に未経験からの転職難易度ランキングをつけると、下記のようになります。

1位:法務職
2位:労務職
3位:経理職
4位:総務職

こちらを見て「なるべく転職しやすい職種が良い」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、各職種の仕事内容は大きく異なりますので、ご自身のやりたいことかどうかという点もしっかり確認した上で目指すようにしましょう。

社労士事務所と比較

社労士事務所はクライアントの労務業務を代行しているため、仕事の親和性が高い労務職と比較されることがよくあります。結論から申し上げますと、そんな社労士事務所の方が労務職よりも未経験からの転職難易度は低いです
社労士事務所は、実務経験の有無を問わず社労士取得を目指す受験生を積極的に採用する傾向にあるのが、その要因です。社労士事務所では社労士資格を持っていないと対応できない業務も実施しなければならないため、実務経験に関わらず資格取得を支援する環境があるのです。未経験者は、資格が無くても取得する意思があれば採用されやすい傾向にあるのです。

まとめ

労務の転職は事務職の人気や高い専門性などが理由となり難しいといわれています。20代であればポテンシャル採用への期待もありますが、30代以降は労務や人事、総務などの経験を中心にアピールすることが必要となります。難しいといわれる労務への転職を叶えるために、まずはご自身がもつスキルや経験を整理してみましょう。

この記事を書いたライター

求人関連企業の経理部門に在籍中、社会保険労務士資格を取得。その後、会計事務所や総合病院での労務担当を経験し、現在はフリーランスのライター・校正者として活動中。ジャンルは労働問題を得意とする。
カテゴリ:業務内容

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