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経理部責任者が知っておくべき&気をつけるべき監査対応業務とは?

HUPRO 編集部
経理部責任者が知っておくべき&気をつけるべき監査対応業務とは?

経理部の取引先「監査法人」

経理部の仕事は外部の取引先とやりとりする機会は少ないかと思います。あったとしても形式的だったり身構える必要があったり、どうもネガティブになりがちかもしれません。代表的なものが「公認会計士」であり、その集団である「監査法人」でしょう。
監査法人の担当者から連絡が来たら、会議室を抑えたり、資料を整理して準備したり、関連部署の打合せ日程を抑えたり・・・大変ですよね。元監査法人勤務の筆者として心から御礼申し上げます。
今回は、なぜ監査が必要なのか、監査とはどう向き合っていけばいいのか、会社側と監査法人側双方を経験した筆者として見解を申し上げたいと思います。

監査の定義と趣旨

1)監査とは何か

端的に申し上げると、会社の作成した財務数値が適切か、作成者以外の立場である監査法人等がチェックすることです。監査法人が行うものは社外の組織が行うので外部監査ですが、それ以外にも社内の内部監査室等が行う内部監査もあります。
監査業務は多種多様であり、取引先や会計基準の動向に応じて柔軟に行われます。よくあるイメージとしては、社内の帳票類(たとえば請求書)や稟議書を査閲したり、皆様のような経理担当者や時には営業担当者にヒアリングしたり、会計処理の考え方を経理部長とディスカッションしたり、といったところです。
なお、似て非なるものとして税務調査があります。これは目的が異なります。会社が正しく財務数値を作成することそのものではなく、正しく納税しているか確かめるものです。主体も監査法人ではなく税務署ですよね。

2)なぜ監査が必要か

基本的には①法律で必要とされている、②それ以外の会社のニーズ、の2パターンです。
まず①は、金融商品取引法や会社法に基づくものです。簡単に言えば、上場しているから正しく財務数値を作成してお墨付きもらった上で公表しなさい、ということです。このお墨付きを与えるのが公認会計士です。この法定監査は公認会計士(監査法人)のみが実施できる独占業務です。
②は様々ですが、たとえば将来的に上場を目指しているから、監査で色々指摘を受けながら徐々に正しく財務数値を作れるようになりたい、といった会社の依頼に基づくものです。極端に言えば、会社のニーズが満たされるのであれば監査法人でなくてもよいわけです。

監査対応のポイント

基本的には一担当者、一管理職が拒んでも監査は避けられません。ではこの監査とどう向き合っていけばよいでしょうか。3つの視点から監査対応の考え方を申し上げます。

1)メリハリをつけて準備する

最初に申し上げたいのが、監査法人は敵ではありません。あら捜しをするために貴社に来ているわけではないですし、会計処理の相談をすればできる限りのアドバイスはするはずです。
ただし、嫌なところをついてくるという感覚は持つかもしれません。監査法人は、基本的に会社が財務数値を間違って作成しそうなところにポイントを絞ってチェックします。新しい会計基準であったり、会計処理が複雑であったりするところです。監査法人も重箱の隅をつつくほど暇ではないです。
このため、監査対応という点からは、財務数値全体におけるウェイトが大きく、かつ処理が難しいところを中心に情報を整理しておくことが必要です。事前に監査法人と協議を重ねて「ネタ」を潰しておくことが効率的です。

2)監査調書を想定した回答を行う

監査調書とは、監査法人が実施した監査手続の内容や結果を記録する資料です。膨大な量のスプレッドシートや文書データをイメージしてもらえばよいです。
監査法人の担当者が様々な監査手続の結果を監査調書として残し、上位者がそれを確認して追加手続を行ったり監査全体の判断を行う上で参考としたりします。また、この監査調書は監査法人が適切に監査業務を行っているか、公認会計士協会等の当局がチェックする際の基礎にもなります。
というわけで、監査法人が監査調書に記載しやすい情報を話してあげると、監査対応もスムーズに進みWIN-WINになるはずです。具体的には、会計処理の考え方や業務プロセスについて、いわゆる5W1Hを明らかにしておき、かつ定量的な情報も織り込んであげると監査法人は喜ぶでしょう。

3)やってはいけないことを理解する

これまでの(1)(2)とつながる点もありますが、監査対応をする上での基本姿勢としてやってはいけないことがいくつかあります。とはいえ、至極当たり前のことです。

① 嘘をついてはいけない
何を当然のことをと思うかもしれませんが、残念ながら嘘をつく方はいます。認識誤りという意味での嘘もありますし、意図的な嘘もあります。
教科書的な発言に聞こえるかもしれませんが、嘘の多くは判明してしまいます。監査法人は財務数値の嘘を見抜くという点ではかなり手練れです。危険な橋を渡るよりも、監査法人には必要な範囲で素直に話して、早い段階から巻き込んでいく姿勢の方が望ましいと考えられます。

② 余計なことは言わない
舌禍を招くことがないようにするためです。監査法人の前で張り切って必要以上にペラペラしゃべると、思わぬ地雷を踏んでしまうことがあります。基本的には質問に対して必要十分に回答するだけでよいです。
なお、応用として、「昔からこうやっていたからこういう処理をしています」という発言もご留意ください。いわゆる継続適用の観点からは問題ないのですが、会計基準や会計処理は時代に応じ見直されるため、十分な回答にはならないこともあります。機械的に過去の処理を踏襲しているだけ、と判断されてしまう可能性があります。

③ 社内用語は使わない
監査法人は会計のことは詳しいですが外部者です。業界の内情は皆様の方が詳しいです。社内会議では当然の前提となって省略されている用語や過去の出来事について、監査法人は意外と知らないことがあります。別の業界に就職した学生時代の友人に話すくらいにかみ砕いて説明してあげると、ヒアリングもスムーズに進むと思います。

逆手にとって、監査法人を利用しよう

上記のように、監査対応は手間がかかるというのが実際のところです。ただし、せっかく外部から会計のプロが来ているのですし利用できる点は利用しましょう。

1)アドバイザーとして

監査法人は会計のプロです。また、貴社に正しい会計処理をしてほしいと思っています。というわけで、上記3.(1)で触れたように、会計処理についてはどんどん質問・相談すればよいです。特に最新の会計基準の他社事例や監査法人としての見解は参考になるはずです。
ただし、幅広い内容を相談し過ぎると監査とは別で契約を提示されるかもしれないのでお気を付け下さい。

2)社内の組織を動かす原動力として

監査法人の講評等を社内の改善活動に利用するということです。コストセンターである経理部門が営業部門等に改善の申し入れをしても、後回しにされることが多いかもしれません。監査法人から要改善事項として申し入れがされたという事実を作ればほぼ確実にフォローアップされるので、「錦の御旗」として利用することができると考えられます。

この記事を書いたライター

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