のれんというのは、「のれん分け」という言葉があるように、会社のブランドのようなものを言います。財務諸表にも「のれん」という勘定科目が計上されている企業を見ることがあるかもしれません。そこで今回は、のれんの会計処理について解説します。
のれんというのは企業のブランドのようなものです。会計用語では「超過収益力」ということもあります。
例えば同じ原材料、同じ形の製品が二つあったとしても、有名ブランドの商品とそうでない商品では価格にかなりの差があると思います。この差がいわゆるのれんということになります。
ちなみに、逆にマイナスに働いてしまうイメージを「負ののれん」と言います。
「負ののれん」について詳しくしりたい方は別の記事で解説しています!
では、どうやってのれんは貸借対照表に計上されるのでしょうか。
「私の企業はブランド力が高いから1億円くらいのれん載せれますか?」と聞かれたら、答えはノーとなります。このようなのれんを自己創出のれんといいますが、自己創出のれんは価値を算定する根拠が会社によってばらばらとなってしまう上に、勝手に計上をさせてしまってはどんどん純資産の額が膨らんでいってしまうからです。
自己創設ののれんに関して詳細を知りたい方はこちらの記事で解説しています!
のれんは通常、企業を買収したり合併したりしたときのみ発生します。例えば買収する企業の時価純資産額が5億円だったとして、購入価額が6億円だったとします。この差額の1億円がのれんとなって、連結貸借対照表の固定資産の部に計上されます。ちなみに、これが逆で企業の時価純資産が6億円で購入価額が5億円だったとすると負ののれんとして営業外収益に1億円計上されることとなります。
のれんの具体的な構成要素に関しては下記記事で解説!
先ほど企業の時価純資産についてお話をしました。この時価がどのようになるかによってのれんの金額は変わります。
例えば、帳簿価額1億円の土地があったとして、正式に土地の評価をしたところ、2億円の価値があったとします。すると、買収側の企業としては2億円の土地を買うこととなるため、その分時価純資産が増えることとなります。買収価額が一定であるなら、この差額の1億円がのれん代として増えることとなります。
日本基準を前提として話をしますが、のれんは20年間の一定の年数で定額償却されます。のれんは先ほどのお話の通りブランドですので価値は下がるどころか上がるものとも考えられます。しかし、日本基準では全く償却をしないというのは保守主義の観点から問題があるということで定額償却が求められます。
ここで、20年以内の一定期間を何年にするかによって毎年の償却費が全く変わります。一般的には買収時に何年でこののれん分を回収するかを計画して取締役会での承認事項となりますので、取締役会で承認された事業計画に基づいて年数が決定されます。
のれんの会計上の処理実務に関して、更に詳しく知りたい方は以下の記事で解説しています。
IFRS(国際財務報告基準)では、のれんの扱いが日本基準とは異なります。日本基準では20年間の一定の期間で償却をするとしましたが、IFRSでは原則償却は行いません。
これは、先ほどのお話の通りIFRSではのれんの価値は上がることはあっても下がることはないという考え方に基づきます。
しかし、日本基準と大きく違うのはのれんの減損に対する考え方です。日本基準では2期連続赤字等の減損の兆候があった場合のみ減損をすべきかどうかが決まりますが、IFRSでは毎期のれんの減損テストというものを行います。
のれんの減損テストでは、毎期将来のキャッシュフローを見積り、少しでものれんの金額を下回る収益力であった場合は即時減損を行います。
のれんの減損テストでは将来のキャッシュフローをどのように見積もるかによって減損をすべきかどうかが大きく変わってくるため、この見積りについては事前に監査法人と協議をしておく必要があります。
IFRSでの「のれん」の詳細に関しては下記の記事で解説しています。
のれんは会計上求められる処理ですが、税務上の扱いはまた異なります。
基本的に連結財務諸表でのれんが計上されることになりますので、税務上のれんの償却費は影響がありません。ただし、株式分割を行った時などは税務上の資産負債と会計上の資産負債の金額に差が出ます。このような時は税務上ものれんを認識することとなります(税務上の科目は資産調整勘定または負債調整勘定)
具体的には、税務上認められない賞与引当金や退職給付引当金について、5年間で税務上償却することとなります。一方会計上は20年以内の一定の期間での償却となるため、そこには差額が出ます。よって、その分加算減算を行い、会計上ののれんの金額と税務上ののれんの金額とに差が出ることとなります。
のれんの会計処理は時価純資産と買収価額の差額を固定資産に計上し、20年間以内の一定の期間で償却することをお話しました。この時価をどうするか、買収金額をどうするか、何年で償却するかによってのれんの金額や償却期間が大きく異なりますので、買収時の調査は入念に行うことが必要でしょう。