公認会計士は三大国家試験の一つとされており、取得難易度は非常に高いとされています。その一方で、公認会計士の行う監査業務は非常に社会的役割が大きいため、合格を目指す人が非常に多い資格となっています。本記事では、そんな公認会計士になる方法および試験制度について、詳しく解説いたします。
公認会計士になるまでの流れは、大きく以下の3つのステップに分けることができます。
これを見て分かるように、公認会計士試験の合格が公認会計士になれることとイコールになるわけではありません。平均的な数字ではありますが、公認会計士になるまでに試験勉強を始めてから6年程度かかると言われています。次の章からはそれぞれのステップについて、各々でかかる期間も含めてご紹介していきます。
ご覧いただいている方の多くが理解しているはずですが、公認会計士になるには公認会計士試験に合格しなければなりません。
試験には短答式試験と論文式試験があり、双方に合格することで初めて「公認会計士試験合格者」となります。
公認会計士試験は受験資格を設定していません。そのため、年齢や学歴、資格の有無などに関係なく、誰でも試験を受験することが可能です。似た試験として比較されることの多い税理士試験には受験資格が設定されていることを踏まえると、比較的受験のハードルは低いといえます。
短答式試験はマークシート方式の試験であり、1年に2回実施されます。なお、論文式試験は短答式試験を合格することで初めて受験することができます。
短答式試験は財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目で構成されており、このうち財務会計論については試験時間も点数配分も2倍の2時間200点と設定されています。
4科目の総点数の70%が合格の基準点といわれています。
なお、短答式試験は合格後2年間は免除期間というものがあります。この2年間は論文式試験を受験することができますが、この期間を超えると失効し、短答式試験から受験しなくてはならなくなります。
公認会計士試験の短答式の詳細について、以下の記事も併せてご参照ください。
一方、論文式試験は記述方式の試験で、1年に1回のみ実施されます。
試験科目は会計学・監査論・企業法・租税法の必須科目のほか、
経営学・経済学・民法・統計学からいずれか一つを選ぶ選択科目も受験する必要があります。点数配分は会計学が300点、その他の科目が100点となっています。
合格基準は総点数の52%の得点比率とされていますが、1科目でも40%を満たない科目だと不合格となる場合があります。
なお、短答式試験は1日で全科目を受験するのに対し、論文式試験は3日間に分けて実施されます。
公認会計士試験の難易度や合格率はどれほどなのでしょうか。
下表の通り、令和4年の公認会計士試験の最終合格率は7.7%と非常に低いことがわかります。昨年の3年に比べて下がっていることもわかるでしょう。
また、短答式試験と論文式試験それぞれで見ても短答式試験が約11%と論文式試験が約35%となります。データで見るとわかるように論文式試験の方が、短答式試験よりも合格率が高くなります。
出典:令和4年公認会計士試験の合格発表の概要について
第Ⅰ回短答式試験
試験期日 2024年12月8日
第Ⅱ回短答式試験
試験期日 2025年5月25日
受験願書受付期間 2025年2月3日~ 2月25日
論文式試験
試験期日 2025年8月22日 ~ 8月24日
出典:日本公認会計士協会|令和7年(2025年)試験について
一般的に公認会計士試験に合格するには、最低でも3,000時間勉強しなければならないと言われています。年数でいうと1.5~2年はかかると言われています。学業との両立や仕事をしながら資格取得を目指す場合は、1日に確保できる勉強時間が限られるため、もう少し年数がかかると考えても良いかもしれません。
また、公認会計士試験を受験する場合は、基本的に予備校に通い勉強を進めます。独学での受験も可能ではありますが、ケースとしては少なく、かなり厳しいものではあるので相当な覚悟が必要です
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先述の通り、公認会計士になるためには試験合格に加えて、実務経験を3年間積む必要があります。実務経験は、業務補助または実務従事によって積むことができ、それぞれ以下のように定められています。
実務経験として認められる業務は、様々な職場で積むことができるものの、ほとんどの試験合格者が監査法人に就職しています。
一般的には論文式試験の合格発表後、2週間程度で監査法人からの内定が出ると言われています。これだけ見ると簡単に就職しやすいと思うかもしれませんが、逆に言えばその時期を逃すと就職先となる監査法人がほとんどなくなってしまうという、短期決戦であることを意味します。
そのため、監査法人への就職はスピードが命ですので、しっかりと情報収集や準備をしておきましょう。合格発表後から行動を始めるのではなく発表前から準備をしておくと、スムーズな就職活動がしやすいでしょう。
また円滑に内定を勝ち取るために、転職エージェントの活用もオススメです。当社ヒュープロは士業・管理部門特化の転職エージェントであり、監査法人への就職・転職をサポートさせていただいた実績が多くございます。よろしければ是非、ご活用ください。
最後に、公認会計士の登録についてです。
公認会計士になるには、最終的に登録の作業を行う必要があります。
公認会計士の登録には、実務経験以外に実務補助の講習受講、および修了考査の合格が必要です。
これらの要件を満たして、やっと公認会計士になれるのです。
出典:公認会計士・監査審査会発行:公認会計士試験パンフレット
最後に、公認会計士になるのを検討する人からよくある質問に関して、回答していきます。
税理士試験では単位取得による受験資格を得ることができるため、学部を気にすることもあるようですが、公認会計士試験には受験資格が無いため、絶対に文系を選ばなくてはならない、などというわけではありません。
ただし簿記や会計の知識が問われるという性質を踏まえると、そのような知識をつけることができる経済学部や商学部、経営学部などがオススメといえます。
また他にも、公認会計士コースを受講したり、会計大学院への通学についても、有効な手段といえます。
サポート体制も踏まえながら、どの大学を選ぶか検討していくとよいでしょう。
こちらも受験資格が無いため、高卒で公認会計士になることは制度上可能です。また、下表は2024年公認会計士試験の論文式試験合格者の学歴別内訳ですが、こちらを見ても実際に高卒で論文式まで合格している方がいらっしゃることがお分かりいただけるでしょう。
出典:令和6年公認会計士試験 合格者調│金融庁
全く試験を受けなくても公認会計士になる方法はありませんが、試験の一部科目の受験を免除されるケースはあります。
具体的な対象者の一例は、以下の通りです。
【短答式試験】
税理士資格を有する者 | 財務会計論 |
税理士試験の簿記論及び財務諸表論の合格者 | 財務会計論 |
司法試験合格者 | 短答式試験免除 |
【論文式試験】
税理士資格を有する者 | 租税法 |
不動産鑑定士試験合格者 | 経済学または民法 |
司法試験合格者 | 企業法及び民法 |
司法試験も難関国家試験に数えられることもある試験ですので、かなりの勉強が必要ではあるものの、免除の範囲がかなり広いため公認会計士とのダブルライセンスも目指しやすいでしょう。
またダブルライセンスという観点では、公認会計士を取得できれば、税理士試験の全科目が免除となるため、税理士とのダブルライセンスもオススメです。
今回は、公認会計士になるまでの流れについてご紹介しました。
難易度の高い公認会計士試験に合格するだけでなく、実務経験や修了考査の合格が必要です。具体的な資格取得までのプランを描いた上で、ぜひ公認会計士にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
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